紫のオルフェ~何でもかんでも気になる音楽、名曲アルバム独り言

ジャズ、ラテン、クラシックを中心として、名曲、アルバム演奏者を紹介します。&私の独り言を…

このバンド(コンボ)のメンツもすごいぜ!クリフォード・ブラウン・オール・スターズ~キャラヴァン

2007-11-25 16:05:19 | ジャズ・コンボ
一週間さぼった?ので、今日3枚目のアルバム紹介行っちゃおうかな?
演奏曲はわずか2曲(このCDには追加曲1曲有るので、3曲)で、間延びする演奏か?と思うと全く違うんです。
曲の題材は、2曲とも超の付く名曲、「キャラヴァン」と「ニューヨークの秋」で、これを料理するのが、「クリフォード・ブラウン」&「マックス・ローチ」の二人に多くのスター・プレイヤー達が参加して、スーパー・コンボを形成して、圧倒的な迫力の演奏をしてくれるのです。

アルバムタイトル…キャラヴァン

パーソネル…クリフォード・ブラウン・オール・スターズ
      リーダー;クリフォード・ブラウン(tp)
      リーダー;マックス・ローチ(ds)
      ハーブ・ゲラー(as)
      ジョー・マイニ(as)
      ウォルター・ベントン(ts)
      ケニュー・ドリュー(p)
      カーティス・カウンス(b)
     
曲目…1.キャラヴァン、2.ニューヨークの秋、3.キャラヴァン(ザ・ボス・マン)

1954年8月11日 LAにて録音

原盤…EmArcy MG-36102  発売…マーキュリー・ミュージック・エンターテインメント

CD番号…PHCE-3063

演奏について…まず、表題曲であり、オープニング曲でもある「キャラヴァン」だが、「ローチ」のラテン・ドラミングから、管楽器のユニゾンによって序奏がなされる。
先人はアルト・サックスの「ジョー・マイニ」で、この演奏がかなり熱く、素晴らしいアドリブも相成った名演奏なんですよ。
陸上のリレーで言えば、第一走者から見事なスタート・ダッシュ成功と言った所でしょうか?
次いでテナーの「ベントン」が、実直なソロを取り、見事にバトン渡し成功。
その後の「ゲラー」のアルト演奏も中々良いですよ。
そして、真打「ブラウニー」登場!!
相変わらず、唯一無二の正確無比、とにかく輝かしい艶やかな音色のトランペットを高らかに吹き切る。
それから、この軍団を見事にドライヴィングしているのが、名人「ローチ」以上に、実はベースの「カウンス」なのである。
彼のドライブ推進力は「すごい!」の一言で、低音ながら皆を煽り捲る。
とにかくパワフルなエンジンを搭載した重戦車の様なベースに脱帽です。
その後では、お待ちかね「ドリュー」のファンキー&ナロウなピアノ・ソロに身を預けたい。
フィニッシュ前の「ローチ」の駄目押しの超絶ドラム・ソロも決まり物です。
演奏の総括として、「ブラウン」のソロ自体は短いが、各人が素晴らしいチーム・ワークで、名曲の名演を作り上げた、最高のパフォーマンスと言って良いでしょう。
     
2曲目「ニューヨークの秋」では、「ブラウン」がとても正統的で、真面目な曲のテーマをピアノ・トリオをバックに吹き切る。
奇を衒わず、メロディに殆ど忠実なのだが、そこは「ブラウニー」が「ブラウニー」たる所以で、音色や技術の確かさだけで、このスタンダードバラッドの魅力を余す事無く伝えています。
その後では「ドリュー」が、晩年を思い出させる(この時は思いもよらなかったかも知れないが…)ロマンティックなピアノ・アドリブを演奏して、更に曲の魅力を増させるのです。
「マイニ」のソロは、前奏の「キャラヴァン」同様に、素敵なアドリブ・フレーズを紡ぎ出して、職人技の存在感を見せますね。
「ベントン」のテナーは、哀愁が有って曲にすごく雰囲気がマッチしております。
そして演奏から約15分経った所で、「カウンス」のベース・ソロがやって来る。
朴訥として、不器用な雰囲気のタッチだが、逆にスター連中が次々吹いているこの曲では、全員がでしゃばらない方が、センスが有って良いと思う。
まぁわざと、ベース・ソロをガツンガツンと行かなかった様な気がしないでもないなぁ。
終盤のアルト・ソロは「ゲラー」なのかな?
このアルトサックスのソロはかなり行けていて、絶品ですね。
最後に、全体的に見ると、やっぱり「ドリュー」の伴奏の出来が良いと思う。
独特のタッチ(音)から、伴奏しているんだけど、さりげなく自己主張にもなっているブロック・コードの魅力に参った(降参)です。

3曲目は「キャラヴァン」(別テイク)の「ブラウニー」のソロ部分だけを取り上げた演奏なんですが、曲の断片だけでも彼のすごさは良く分かります。
長生きしていたら、やはりトランペット界の頂点に立つべくアーティストだったのでしょう。
※「マイルス」は音楽界の総合アーティストとして、「ブラウン」は、あくまでもジャズ・トランペッターとしてですが…。。。

「コルトレーン」の遺作…「ジョン・コルトレーン」~「エクスプレッション」

2007-11-25 13:43:31 | ジョン・コルトレーン
ハードに真摯に命を削ってサックスを吹き続けた稀代のアーティスト、「ジョン・コルトレーン」の最期の作品…それがこの「エクスプレッション」です。

史上最強のオリジナル・カルテットから、「アリス・コルトレーン」の夫人を含むフリー系のクインテットにチェンジしてから、過激な?演奏内容と長大な演奏時間に変貌して行った「コルトレーン」ですが、ここでの演奏は、正しく悟り、窮め、「グル」になったと言える、静寂の演奏がなされています。

アルバムタイトル…エクスプレッション

パーソネル…リーダー;ジョン・コルトレーン(ts、fl)
      アリス・コルトレーン(p)
      ジミー・ギャリソン(b)
      ラシッド・アリ(ds)
      ファラオ・サンダース(piccolo)

曲目…1.オグンデ、2.トゥ・ビー、3.オファリング、4.エクスプレッション

1967年2月15日、3月7日 録音

原盤…Impulse A-9120  発売…ワーナー・パイオニア
CD番号…32XD-597

演奏について…最も興味深い演奏として、2曲目「トゥ・ビー」の「コルトレーン」のフルート演奏が挙げられよう。
実は、ここで演奏に使われている楽器(フルート)は、無二の親友「エリック・ドルフィー」の遺品なのである。
「ドルフィー」は、このフルートにより、「ラスト・デイト」の「ユー・ドント・ノウ・ホワット・ラヴ・イズ」での白鳥の歌、絶唱を描ききった(演じきった)が、これは志半ばで命が尽きた「ドルフィー」の無念さが、美しさの中に、介錯された血が、垣間見える様な痛みを伴っている演奏から理解できると思う。
しかし、「コルトレーン」は同じフルート演奏だが、「ドルフィー」の様な、血の匂いがしない。
とてもクリヤーで、無我の境地にいる演奏である。
と言うのも、「コルトレーン」は、遣り残した事が余り無かったからだと思う。
確かに、41歳と言う若さであったが、ジャズと言う音楽形態の中で、死後40年以上経った今でも、未だ誰も到達出来ない高み(極み)へと昇った、稀有のアーティストだけに、彼が存命だったとしても、これ以上にやれた事(演奏)は、もはや殆ど無かったと言っても良いと思うからです。
とにかく、虚飾を廃し、ピュアに音楽(ジャズ)を演じきった演奏は、とめどなく美しいのです。
「サンダース」のピッコロ演奏も、彼に似合わず?静寂の美学伴奏を貫き通しているし、「アリ」の空間的なブラッシュ・ワークも影でいながら、存在感を見せる。
但し、中間で「サンダース」が小鳥が飛翔する様な、自由奔放の見事なカデンツァを奏でています。
「アリス」は「偉人」である夫に対して、恐れを抱かぬのか?唯一自由に、終始アドリブを演奏しているのがアクセントになっている。
いずれにせよ、「コルトレーン」が最終的になろうとしていた、賢者(グル)に近づいた、最も東洋的(インド哲学的)な趣を感じ得る、演奏&曲に仕上がっています。

タイトル曲「エクスプレッション」も、激しさの中に垣間見れる、落ち着きと静寂が、聴いている者を浄化させる。
「アリス」はモードに副って、自由にアドリブを演奏する。
妻で無ければ、出来ないアドリブです。
「ギャリソン」は徹頭徹尾、リズム・キーピングに終始していて、大将を援護射撃している。
終盤では、「コルトレーン」が最後の力を振り絞って、シャウトしまくるのは、大将の務めとして当然なのだろう。
因みに、1曲目以外は「ファラオ」レスなのは、アルバム上、どう言った意図があったのだろうか?
やはり、「トレーン芸術」は、ワンホーン・カルテットが最高のパフォーマンスを形成するのに相応しいと、出た答なのか?

3曲目「オファリング」…このアルバムの中では最もアグレッシブな「コルトレーン」の演奏が見て取れる。
病んでいるとは思えない程、張りのあるトーンで、シーツ・オブサウンドを止め処なく繰り出す。
中間部のカデンツァで、「コルトレーン」とのバトルを受けるのは、タイム感覚が優れた「アリ」で、この二人のデュオは手に汗を握る。
「コルトレーン」は、「アリ」のドラミング・スピードに挑むかの様に、演奏スピードをグングン上げて、シンバルの音が咲き乱れ、テナーの絶叫が乱舞する。
美しく、切ない、そしてとても激しいバトルだ。
最後には、いたたまらなくなったのか、「アリス」がさりげなく助け舟を出す。
これは余計な事なのか?それとも内助の功なのか?

オープニングの1曲目「オグンデ」は、中期の傑作バラードアルバム、「クレッセント」を彷彿させる、抑え目のトーンと紡ぎだす「シーツ・オブ・サウンド」のアドリブが真に美しい、短いが素晴らしい演奏である。
雨だれの様な連弾で旦那をサポートする「アリス」、サポーターとして申し分無い、「アリ」と「ギャリソン」の演奏も良いですね。

私の稚拙紹介文なんて全く不必要な歴史的名盤…ジャズ・アット・マッセイ・ホール

2007-11-25 11:26:00 | ジャズ・コンボ
皆様、お早うございます…いや、お久しぶりです。
先週は、とにかく多忙な一週間で、ブログ更新どころかブログの閲覧すらしていない状況で、大変ご迷惑をおかけしました。
今週から、気合を入れ直して書きますぞ!って言いたい所ですが、仕事の疲れで体調も崩しており、今日も床に臥せながら、やっとブログを書いている次第でして…

まぁ、言い訳はさておき、このアルバムについて説明すると…ジャズの大巨人5人「クインテット」が、カナダ、トロントのマッセイ・ホールにて、一期一会でセッションをした伝説の一夜の事である。

セッション参加のメンバーと言うと、アルト・サックスが「チャーリー・チャン」こと「チャーリー・パーカー」、トランペット…「ディジー・ガレスピー」、ピアノ「バド・パウエル」、ベースが「チャールス・ミンガス」そしてドラムが「マックス・ローチ」。

正にモダン・ジャズの創世紀、バップの大巨人が一同に会した、奇跡の演奏(レコーディング)なのである。

尚、今回は当初発売された「ミンガス」が企画したアルバムでは無く、オリジナル・レコーディングのマスター・テープでの演奏(アルバム)を紹介させて頂きます。

アルバムタイトル…ジャズ・アット・マッセイ・ホール~フロム・オリジナル・レコーディング

パーソネル…チャーリー・パーカー(as)
      ディジー・ガレスピー(tp)
      バド・パウエル(p)
      チャールス・ミンガス(b)
      マックス・ローチ(ds)

曲目…1.ウィー、2.ホット・ハウス、3.チュニジアの夜、4.パーディド、5.ソルト・ピーナッツ、6.オール・ザ・シングス・ユー・アー~52丁目のテーマ

1953年5月15日 トロント、マッセイ・ホールにて録音

原盤…debut  発売…ビクター音楽産業
CD番号…VICJ-23061

演奏について…1曲目「ウィー」…ノッケから「パーカー」、「ガレスピー」が、素晴らしいアドリブ連発で、いきなりトップ・ギアで疾走する。
特に「ディズ」の出来が抜群で、ブリリアントな音色で、快活なフレーズを次々に繰り出して聴衆をこの「スーパー・コンボ」の世界へと引き込む。
続く「パウエル」も絶好調…病院から出てきたばかりとは思えない程、感性が冴えている。
「ローチ」も大巨人のソロイスト達に負けてはいられないと、超絶技巧のドラミング・ソロをかまして存在感を見せ付ける。

2曲目「ホット・ハウス」…ここでもテーマは、巨人2管のユニゾンから始まる。
すぐに「バード」が煌くソロを吹くのだが、何がすごいかと言うと、ここで演奏している楽器(アルト・サックス)がプラスチック製のおもちゃ同様の品物だと言う事で、そのおもちゃでもすごいアドリブを次々に繰り出す所なのです。
余談ですが、勿論、この曲に限らず、この日の演奏(録音)の全曲が、このおもちゃアルトにて演奏されているんですよ。
詳細はCDの解説書や、「マッセイ・ホール」についてのジャズ記事などを読んで頂ければ幸いです。
この後、「ディズ」「パウエル」は1曲目同様、冴えてますし、「ミンガス」もソロパートが用意されており、「しかめっ面」で不気味に演奏している様が眼に浮かびます。
残念なのは、ベース音がしっかりと録られていない事なんですが、これにより当初発売のこのアルバムでは、「ミンガス」が録音・発売の権利を持った事もあって、ベースのパートだけ「オーヴァー・ダビング」しての発売がなされたのです。

3曲目「チュニジアの夜」…とにかく「バード」の出来が最高潮で、汲めど尽きぬアドリブ・フレーズが洪水の様に繰り出されるんです。
「ガレスピー」は、この曲では音のうねりを重視したソロを取って、クレシェンドとデクレシェンドの演奏対比が見事で、流石チュニジア(アフリカ)の夜は激しいと言うのを伝えてくれます。
「パウエル」はいかにも「パウエル」らしく、思うがまま天才の煌きに従って演奏している。
このスーパー・コンボのアクセント役は、ハッキリ言って「パウエル」でしょう。

4曲目「パーディド」…今までの3曲がかなりハードな演奏だったのか?ここらで一休み的に、ラテン・リズムの寛ぎ系のテーマから始まる。
「バード」もラテン好きなアーティストなので、この演奏では余裕を見せながら、気楽に吹いているのが良いですねぇ。
しかし時々、高速のアドリブ・フレーズを織り交ぜて、自身のスキルをチラ見せするのが、乙と見るか?いやらしい(笑)と思うか?どっちかなぁ。
「ガレスピー」は、終始、大真面目に曲に取り組んでいて、好感が持てます。
「パウエル」…本当に彼は自由人そのもので、これだけのメンバーがいても臆する事無く、我が道を突き進む。
と言って、勝手気ままに演っている訳ではなくて、独自スタイルで演っても天賦の才によって、他のミュージシャンにピタッとマッチしちゃうんです。

5曲目「ソルト・ピーナッツ」…一番リラックスした名演で、「ディズ」が曲目「ソルト・ピーナッツ」を地声で言うのが、面白おかしくて…goodです。
しかし演奏に入ると「ガレスピー」のエネルギー爆発で猛演ですぞ。
「パウエル」は軽やかにしかしスピーディにアドリブを注ぎ、スポーツカー的な演奏が聴き所です。
彼等を強烈にドライヴィングする「ミンガス」と、ここが最後の見せ所とばかり、ガツン、バキン、ドカンとドラムをぶっ敲く「ローチ」の劇演は更に良いです。

ラスト「オール・ザ・シングス~」…解説書によると、どうやらこの日の演奏では無いらしく、ピアニストが「パウエル」では無く、「ビリー・テイラー」らしい。
そう言われると、今までの演奏とピアノは随分違う感じがする。
有る意味コンボとしては、「テイラー」の演奏の方がしっくりくるし、統制が取れているかもしれません。
だが、毒が無いのはつまらないとも言えますよね。
これだけのメンバーが集まったら、全員毒ガスでもミサイルでも何でもありだと思うし、統制なんか全く考えずに、ゴーイング・マイ・ウェイの「パウエル」だからこそ、やはり「マッセイ・ホール」なんだと思います。
ただし、演奏は悪くは無いですよ、いやむしろ名演奏と言った方が良く、私個人的には大好きなんです。
「ローチ」、「ミンガス」とも「テイラー」?の意図を理解しているのか、この曲ではバック・ミュージシャンとして、2管の二人をきっちりサポートしています。
この演奏がオリジナル・バンドだったなら、実はこの演奏が一番の名演だったかも知れません。
しかし、「マッセイ・ホール」と言う事を考慮すると…アルバムに収めなくても良かったかも…。。。