ジャズ・ピアニストの中で屈指のテクニシャンは?と言えば、必ず名前が挙がるのが、今日、紹介するピアニスト、「フィニアス・ニューボーンJr.」です。
まぁ、世間一般的に言って、ジャズ・ピアニストの超絶技巧3人衆は、1に「アート・テイタム」…(この人は別格で、「ヴラジミール・ホロヴィッツ」でさえ、ライヴに聴きに行った事があるんですね)それから、2に「オスカー・ピーターソン」、そして3に、この「フィニアス・ニューボーンJr.」を挙げる人が多い様です。
このアルバムは、そんなテクニシャン「フィニアス」が、コンテンポラリー・レーベルに残した代表的な1枚で、聴き易いスタンダード曲が多いのに加えて、バックの二人もグレートなビッグ・ネームなので、非常に人気が有る盤なんです。
何とベースが「レイ・ブラウン」、そしてドラムスが「エルヴィン・ジョーンズ」なんです。
どうですか?生唾ゴックン物で、今すぐに聴きたくなるでしょう?
それでは紹介して行きましょう。
アルバムタイトル…ハーレム・ブルース
パーソネル…リーダー;フィニアス・ニューボーンJr.(p)
レイ・ブラウン(b)
エルヴィン・ジョーンズ(ds)
曲目…1.ハーレム・ブルース、2.スウィート・アンド・ラヴリー、3.リトル・ガール・ブルー、4.レイズ・アイディア、5.ステラ・バイ・スターライト、6.テンダリー、7.クッキン・アット・ザ・コンチネンタル
1969年2月12日、13日 L.A.にて録音
原盤…CONTEMPORARY S7634 発売…ビクター音楽産業
CD番号…VICJ-23564
演奏について…オープニング曲にしてタイトル曲の「ハーレム・ブルース」…この強烈バック二人をして、いきなりブギウギ調の軽快なブルースで始まる。
「ブラウン」は強固な音色でビンビンにベースを弾くが、「エルヴィン」は、シンバル・ワークをメインにしているものの、余り煽りはやっていない。
まずは「フィニアス」のお手並み拝見と言った所でしょうか?
「フィニアス」は、高速の指捌きで、アドリブを色取り取りに修飾して行って、おかずを着け捲くる。
一方、テーマ・メロディを演る時は、低音を強調して、ブルーズの重みもちょっぴり出したりして、やることが憎いですねぇ。
2曲目「スウィート・アンド・ラヴリー」…スタンダード曲で、ゆったりと大人の時を過ごせる様に、「フィニアス」が華麗な指使いと、知的なスピリットで、リズムにアクセントを付けながらじっくりと仕上げていくナンバーです。
このリズムの変化でも「エルヴィン」は、スゴ・テクでピッタリと「フィニアス」に合わせて、ブラッシュと太鼓のポリリズムを対比させながら、職人芸を披露する。
「ブラウン」は、この演奏ではブルージーに渋く決めて、余り自己主張はしない。
「フィニアス」の技巧もすごいんだけど、とにかく、この曲での「エルヴィン・ジョーンズ」の演奏が、ものすごくて、皆完敗しちゃいますよ。
一押しのトラックです。
3曲目「リトル・ガール・ブルー」…これもスタンダード・ナンバーで、「リチャード・ロジャーズ」の作品ですが、「フィニアス」はアドリブで、かなり繊細に、そしてセンシティヴに演じて行きます。
この演奏では、一寸聴くと地味なんだけど「レイ・ブラウン」のパワフルなベース演奏がすごく良いんですよ。
カラフルな音色で、曲をキラキラ飾る「フィニアス」とは、正に対極に有って、渋く、野太く、縁の下の力持ちに徹していて…このgood jobで、より一層「フィニアス」の煌きが映えるんですねぇ。
「レイ・ブラウン」…流石です。
4曲目「レイズ・アイディア」…「レイ・ブラウン」が、自ら書いたビバップ・ナンバーとのことですが、この演奏は3人のトリオ演奏が高水準で纏まっていて、3人の技術を含んだ力量が合致しているこそのパフォーマンスが形成されています。
テクニシャン「フィニアス」のピアノをメインにフューチャーするのも、ピアノ・トリオとして有りですけど、渾然一体となって、マッシブにバトルを繰り広げて、三位一体となったピアノ・トリオも、また有りな訳で…この演奏は正しく後者なんですよ。
3人のアイ・コンタクトが完璧な1曲です。
5曲目、超名曲「ステラ・バイ・スターライト」…序奏からテーマ演奏に加えて、もはやカデンツァと言うべき、超絶のピアノ・ソロ演奏をする「フィニアス」の演奏から曲が始まります。
このカデンツァだけでも必聴物ですが、その後のトリオ演奏もすごいんです。
「コルトレーン・カルテット」時代を思わせる「エルヴィン」の硬派で、火傷しそうに熱いドラミングもえぐいし、「ブラウン」は抑え目な物の、やはり硬派なサウンドで「フィニアス」をバック・サポートします。
この二人の(スゴテク)演奏にも耳を奪われつつ、やはりこの演奏では「フィニアス・ニューボーンjr.」が、半端じゃない出色の出来で、4曲目とは全く逆の仕上げで…あくまでもスーパー・ピアニストを全面に押し立てたトリオ演奏で、終始進行します。
「フィニアス」を聴くと言うのであれば、この演奏の出来が最も素晴らしいですし、この演奏&曲こそ、正しく「フィニアス」のためのピアノ・トリオ演奏と言って良いベストトラックでしょう。
6曲目「テンダリー」…この曲では、今度は「レイ・ブラウン」の締まっていて、重厚なベース・ソロから曲が始まる。
非常にパワフルで、それでいて(ベースの)歌心十分に、かなり長めのアドリブを決めてくれます。
中盤から華麗に「フィニアス」が加わり、曲は劇的になってくる。
渋く、ピラミッドの様に安定した重厚な「レイ・ブラウン」のベース音を、「フィニアス」は、上から見下ろす猛禽類(大鷲)の様に舞う姿の対比がとても美しい。
ラスト7曲目「クッキン・アット・ザ・コンチネンタル」…ラストを飾るに相応しい疾走系のナンバーで、「エルヴィン」が、シャンシャン、バリバリ、ガンガンとドラムを敲き、「ブラウン」はすばやく堅実に(それに)ベースを合わせる。
「フィニアス」は、高速で運指して、ラスト・スパートで直線を捲くります。
兵たちが、まとめてゴール・インします。
「フィニアス」は、その力量からすると、(日本では)かなり過小評価されている様に思います。
って、言うか、日本人はテクニシャンのジャズ・ピアニストは、正直言ってあまり好きじゃないよね。
前述の3人とも「テータム」「ピーターソン」そして「ニューボンjr.」ファン投票をやったら、好きなジャズ・ピアニスト10人には多分入らないでしょうから。
※「ピーターソン」は、もしかしたら入る可能性が有るけど…。
日本人はシングル・トーンの哀愁系が、とにかく好きなんです。(私もしかり)
もしも好きなジャズ・ピアニスト、ベスト10をやったら、「ビル・エヴァンス」「キース・ジャレット」「ソニー・クラーク」「トミー・フラナガン」「ウィントン・ケリー」「ホレス・シルヴァー」「デューク・ジョーダン」「チック・コリア」「ハービー・ハンコック」なんかの哀愁系と知的系が上位独占すると思います。
でも、この「フィニアス」…とっても良いと思うよ!!!
まぁ、世間一般的に言って、ジャズ・ピアニストの超絶技巧3人衆は、1に「アート・テイタム」…(この人は別格で、「ヴラジミール・ホロヴィッツ」でさえ、ライヴに聴きに行った事があるんですね)それから、2に「オスカー・ピーターソン」、そして3に、この「フィニアス・ニューボーンJr.」を挙げる人が多い様です。
このアルバムは、そんなテクニシャン「フィニアス」が、コンテンポラリー・レーベルに残した代表的な1枚で、聴き易いスタンダード曲が多いのに加えて、バックの二人もグレートなビッグ・ネームなので、非常に人気が有る盤なんです。
何とベースが「レイ・ブラウン」、そしてドラムスが「エルヴィン・ジョーンズ」なんです。
どうですか?生唾ゴックン物で、今すぐに聴きたくなるでしょう?
それでは紹介して行きましょう。
アルバムタイトル…ハーレム・ブルース
パーソネル…リーダー;フィニアス・ニューボーンJr.(p)
レイ・ブラウン(b)
エルヴィン・ジョーンズ(ds)
曲目…1.ハーレム・ブルース、2.スウィート・アンド・ラヴリー、3.リトル・ガール・ブルー、4.レイズ・アイディア、5.ステラ・バイ・スターライト、6.テンダリー、7.クッキン・アット・ザ・コンチネンタル
1969年2月12日、13日 L.A.にて録音
原盤…CONTEMPORARY S7634 発売…ビクター音楽産業
CD番号…VICJ-23564
演奏について…オープニング曲にしてタイトル曲の「ハーレム・ブルース」…この強烈バック二人をして、いきなりブギウギ調の軽快なブルースで始まる。
「ブラウン」は強固な音色でビンビンにベースを弾くが、「エルヴィン」は、シンバル・ワークをメインにしているものの、余り煽りはやっていない。
まずは「フィニアス」のお手並み拝見と言った所でしょうか?
「フィニアス」は、高速の指捌きで、アドリブを色取り取りに修飾して行って、おかずを着け捲くる。
一方、テーマ・メロディを演る時は、低音を強調して、ブルーズの重みもちょっぴり出したりして、やることが憎いですねぇ。
2曲目「スウィート・アンド・ラヴリー」…スタンダード曲で、ゆったりと大人の時を過ごせる様に、「フィニアス」が華麗な指使いと、知的なスピリットで、リズムにアクセントを付けながらじっくりと仕上げていくナンバーです。
このリズムの変化でも「エルヴィン」は、スゴ・テクでピッタリと「フィニアス」に合わせて、ブラッシュと太鼓のポリリズムを対比させながら、職人芸を披露する。
「ブラウン」は、この演奏ではブルージーに渋く決めて、余り自己主張はしない。
「フィニアス」の技巧もすごいんだけど、とにかく、この曲での「エルヴィン・ジョーンズ」の演奏が、ものすごくて、皆完敗しちゃいますよ。
一押しのトラックです。
3曲目「リトル・ガール・ブルー」…これもスタンダード・ナンバーで、「リチャード・ロジャーズ」の作品ですが、「フィニアス」はアドリブで、かなり繊細に、そしてセンシティヴに演じて行きます。
この演奏では、一寸聴くと地味なんだけど「レイ・ブラウン」のパワフルなベース演奏がすごく良いんですよ。
カラフルな音色で、曲をキラキラ飾る「フィニアス」とは、正に対極に有って、渋く、野太く、縁の下の力持ちに徹していて…このgood jobで、より一層「フィニアス」の煌きが映えるんですねぇ。
「レイ・ブラウン」…流石です。
4曲目「レイズ・アイディア」…「レイ・ブラウン」が、自ら書いたビバップ・ナンバーとのことですが、この演奏は3人のトリオ演奏が高水準で纏まっていて、3人の技術を含んだ力量が合致しているこそのパフォーマンスが形成されています。
テクニシャン「フィニアス」のピアノをメインにフューチャーするのも、ピアノ・トリオとして有りですけど、渾然一体となって、マッシブにバトルを繰り広げて、三位一体となったピアノ・トリオも、また有りな訳で…この演奏は正しく後者なんですよ。
3人のアイ・コンタクトが完璧な1曲です。
5曲目、超名曲「ステラ・バイ・スターライト」…序奏からテーマ演奏に加えて、もはやカデンツァと言うべき、超絶のピアノ・ソロ演奏をする「フィニアス」の演奏から曲が始まります。
このカデンツァだけでも必聴物ですが、その後のトリオ演奏もすごいんです。
「コルトレーン・カルテット」時代を思わせる「エルヴィン」の硬派で、火傷しそうに熱いドラミングもえぐいし、「ブラウン」は抑え目な物の、やはり硬派なサウンドで「フィニアス」をバック・サポートします。
この二人の(スゴテク)演奏にも耳を奪われつつ、やはりこの演奏では「フィニアス・ニューボーンjr.」が、半端じゃない出色の出来で、4曲目とは全く逆の仕上げで…あくまでもスーパー・ピアニストを全面に押し立てたトリオ演奏で、終始進行します。
「フィニアス」を聴くと言うのであれば、この演奏の出来が最も素晴らしいですし、この演奏&曲こそ、正しく「フィニアス」のためのピアノ・トリオ演奏と言って良いベストトラックでしょう。
6曲目「テンダリー」…この曲では、今度は「レイ・ブラウン」の締まっていて、重厚なベース・ソロから曲が始まる。
非常にパワフルで、それでいて(ベースの)歌心十分に、かなり長めのアドリブを決めてくれます。
中盤から華麗に「フィニアス」が加わり、曲は劇的になってくる。
渋く、ピラミッドの様に安定した重厚な「レイ・ブラウン」のベース音を、「フィニアス」は、上から見下ろす猛禽類(大鷲)の様に舞う姿の対比がとても美しい。
ラスト7曲目「クッキン・アット・ザ・コンチネンタル」…ラストを飾るに相応しい疾走系のナンバーで、「エルヴィン」が、シャンシャン、バリバリ、ガンガンとドラムを敲き、「ブラウン」はすばやく堅実に(それに)ベースを合わせる。
「フィニアス」は、高速で運指して、ラスト・スパートで直線を捲くります。
兵たちが、まとめてゴール・インします。
「フィニアス」は、その力量からすると、(日本では)かなり過小評価されている様に思います。
って、言うか、日本人はテクニシャンのジャズ・ピアニストは、正直言ってあまり好きじゃないよね。
前述の3人とも「テータム」「ピーターソン」そして「ニューボンjr.」ファン投票をやったら、好きなジャズ・ピアニスト10人には多分入らないでしょうから。
※「ピーターソン」は、もしかしたら入る可能性が有るけど…。
日本人はシングル・トーンの哀愁系が、とにかく好きなんです。(私もしかり)
もしも好きなジャズ・ピアニスト、ベスト10をやったら、「ビル・エヴァンス」「キース・ジャレット」「ソニー・クラーク」「トミー・フラナガン」「ウィントン・ケリー」「ホレス・シルヴァー」「デューク・ジョーダン」「チック・コリア」「ハービー・ハンコック」なんかの哀愁系と知的系が上位独占すると思います。
でも、この「フィニアス」…とっても良いと思うよ!!!
「セロニアス・モンク」と「バド・パウエル」…それから「デューク・エリントン」この大御所3人(2人)は、確実でしょうね。