紫のオルフェ~何でもかんでも気になる音楽、名曲アルバム独り言

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長文解説を一瞬で消失!Ah下手こいた…エリック・ドルフィー~アウト・トゥ・ランチ

2007-10-08 23:44:35 | エリック・ドルフィー
「エリック・ドルフィー」のアウト・トゥ・ランチ…今迄、私が解説&紹介して来た、メロディアスなテーマのジャズ・アルバムとは一線を画しています。
一言で言うと、とても難解なアルバムなんですが、実は先ほど迄、この難解な作品の超大作の解説文を書いていたのですが、記事投稿の転送時にミスをして、(Ah-下手こいた)長文が全部パーになったよ!(怒)(大激怒)

少しでも分かり易く言うと、ジャズ版「2001年宇宙の旅」って言う感じです。

映画監督の大巨匠、「スタンリー・キューブリック」の最高傑作であり、難解映画の最高峰が「2001年~」ですが、この「ドルフィー」のアルバムもジャズ界の「2001年~」と言っても良いかもしれません。

但し、それでは一般の(主に初心者的な)ジャズ・ファンの方の(購入)指標になりませんので、少しでも分かり易い説明は無いものか?と思案した所、原盤(LP)の裏解説にヒントが若干載っていましたので、それを少し拝借させて頂き、私の稚拙な解説をプラスして行きたいと思います。

アルバムタイトル…アウト・トゥ・ランチ

パーソネル…リーダー;エリック・ドルフィー(as、fl、b-cl)
      フレディ・ハバード(tp)
      ボビー・ハッチャーソン(vib)
      リチャード・デイヴィス(b)
      トニー・ウィリアムス(ds)

曲目…1.ハット・アンド・ベアード、2.サムシング・スイート・サムシング、3.ガゼロニ、4.アウト・トゥ・ランチ、5.ストレート・アップ・アンド・ダウン

1964年2月25日録音

原盤…BLUE NOTE 84163  発売…東芝EMI
CD番号…CP32-5211

演奏について…LP原盤のA.B.スペルマン氏の解説を参考にしますと、タイトル曲「アウト・トゥ・ランチ」は、酔っ払いが千鳥足であっちへふらふら、こっちへよろよろと、歩く様をテーマにして表現しているらしい。
特にリズム・セクションには、テンポの指示等も皆無にして、各人自由に演って良いとの「ドルフィー」の提案に、取分け「トニー・ウィリアムス」は、自由に羽が生えた様に好き勝手にドラムを敲き捲っているとの事だが。

しかし、私の解釈で言えば、このアルバム自身の最大の肝は、ずばり「ボビー・ハッチャーソン」に有ると言いたい。
「ハバード」は、この曲でもかなりフリーにブロウしているが、やはりメロディアスなフレーをそこここで、吹いているのが分かる演奏です。
「デイヴィス」は骨太で硬派なベーシストらしく、自由であっても決して適当には演っていない。
しっかりと廻りに協調した目配りされたベース・ラインを刻んでいる。
「ウィリアムス」の演奏も良く聴くと、実はそれ程ぶっ飛んではいない。
やはりリズム・セクションを司っているミュージシャンは、自己犠牲できる人がやれるミュージック・パートだと思うので、他人に合わせる性格が出ております。

その中で、この異空間を幻想的に見事に演出しているのが、空間を飛び廻る「ハッチャーソン」のヴァイブであり、又、自由にバスクラリネットで、思い切りアドリブを吹き捲る、リーダーの「ドルフィー」なのです。
千鳥足の酔っ払いが行き着く先は…寝入ってしまって夢の世界…多分それが宇宙旅行なのだろう。

1曲目「ハット・アンド~」…は「ドルフィー」が敬愛する「モンク」の作品をイメージしながら書いた曲との事です。
最初の13小節はテーマに副って楽譜に忠実に演奏し、その後は自由気ままに演るらしいのですが…。
リズムを変調させてはいるが、「トニー」「デイヴィス」共に、バックらしいリズムは確実に刻んでいる。
「トニー」は超絶テクで、時たま遊び心で「おかず」を沢山出してくるが、「デイヴィス」は真面目でガンコ者そのものの演奏です。
ボウイングもちゃんと4ビートで、他のメンバーをドライヴしてますからね。
「ハバード」は、こうして聴くと、やはり生粋のメロディストですね。
半音を吹いていながらも、適当じゃないもんね。
その中で、バスクラ「ドルフィー」とヴァイブ「ハッチャーソン」は、思う存分フリーキーに演奏していて痛快です。

2曲目「サムシング・スイート~」は、頭の数小節だけ、「ドルフィー」と「デイヴィス」が掛け合いをしてテーマを示した後は、このリリカルなテーマを活かして全員が演奏しているとの事。
「デイヴィス」が渋くリズムを刻んで、「ドルフィー」はここではナイーブなテーマを活かしたバスクラで応戦する。
「ハバード」…すごく優しいトランペットの音色で、この幻想的な世界を見事に色付けしてくれます。
静寂を表現した「デイヴィス」のボウイング演奏…これは最高ですね。
このアルバム随一の水墨画的な「わびさび」空間が正に粋な演奏だね。
アルバムの中で一押しのトラックであり、一番聴き易い曲だと思います。

3曲目「ガゼロニ」…これは解説が載っていない。
しかし、「ガゼロニ」(ガッゼローニ)は、クラシック界随一のフルート奏者の名前であり、もしかすると「ドルフィー」がここでは、この「ガゼロニ」をリスペクトして曲名を付けたか?どうか…定かじゃないが、とにかくフルートを演奏しているのは事実だ。
「トニー」「デイヴィス」のリズム・セクションの間を「ハッチャーソン」のヴァイブが、縦横無尽に行き来する。
この3人の演奏的な対話は何なのか?
そして又、「ドルフィー」のフルートが、幻想的な宇宙空間を彷徨い歩くんです。

5曲目「ストレート~」も、タイトル曲と同コンセプトの演奏です。
この曲の詳細な解説はLPにも出ていませんが、決して聴き難い演奏では無く、いや良く聴くと聴き易いかもしれません。
「トニー」は繊細なシンバル・ワークと、効果的なバス・ドラを駆使して皆を引っ張って行きます。
「デイヴィス」は、とても真面目な演奏で、実直にベース・ラインを刻み続ける、
正に職人の鑑の様な演奏ですよ。
ここでも「ハバード」はブリリアントで、且つメロディアスなフレーズを吹いてくれますが、「ドルフィー」は逆にぶっ飛びアドリブをかまします。
「ハッチャーソン」…時々思い出した様にヴァイブを敲き、幻想世界へと連れて行きやがるんです。

一言で言うと、このアルバムはメロディを聴くアルバムでは無いんですよ。
私が言った2曲目の「わびさび」、」「水墨画」を見て頭の中で色々と想像して下さい。
見ている内に、身も心もその水墨画の世界へトリップしそうになるでしょう?
多分このアルバムはそう言うコンセプトで出来ているんです。
只、表現している媒体が、絵画では無く「音楽」(音)なんですよ。

2001年宇宙の旅は、宇宙に有るのでは無く、実は音の世界に有るんです。
折しも「2001年~」が、世界に出たのは1968年だったかな?
「ドルフィー」は、それよりも前にこう言うテーゼの曲を演っていたんだよね。
改めて彼の才能の素晴らしさに感銘を受けると同時に、夭逝が悔やまれます。

PS…このアルバムの難解さから、実は10年以上も(このアルバム)を聴いていなかったんですが、今日良く聴いてみて、完全とは言わないまでも、「ドルフィー」がやろうとしていた事が少しばかり分かってきました。
私も成長したのかな?
このアルバムを聴く機会を与えてくれた、加持さん、garjyuさんに、改めて感謝します。

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2 コメント

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ぶきゃ、ぷけっ、くるててってるぃいぃいいぶぴ~ (木曽のあばら屋)
2007-10-09 19:20:42
こんにちは。
私もドルフィー好きです。
いろいろ(といっても7~8枚)聴きましたが、
結局"Out To Lunch"と"Last Date"が一番好きかな。
とはいえ、これほど分析的に聴いたことはないので、
参考になります。
じっくり聴いてみます。
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木曽さん、お久しぶり。 (えりっく$Φ)
2007-10-10 00:08:20
コメント有難うございます。
分析的と言う「お褒めの言葉」頂き嬉しいです。
これからも、頑張りますので、宜しくです。!
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