紫のオルフェ~何でもかんでも気になる音楽、名曲アルバム独り言

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不世出のプリマドンナ、マリア・カラスの代表作~プッチーニ「トスカ」

2008-03-31 14:19:57 | クラシック室内楽・器楽・オペラ・古楽
20世紀最高の…不世出のソプラノ歌手、「マリア・カラス」の若い頃の代表作であり、またイタリア・オペラを振らせれば、屈指の存在である「ヴィクトール・デ・サバータ」にとっても最高傑作との誉れが高いのが、今日紹介するアルバムです。

原作は、パリ演劇界にその人有りと言われた重鎮、「サルデュー」が書いた、悲劇の戯曲で、それを「ジャコモ・プッチーニ」が、満を持して19世紀の終わりにオペラ化したのです。

このオペラがレコーディングされてから、55年もの時が経過しておりますが、未だ嘗て、この演奏・録音を凌駕したアルバム(実演も?)は出てきておりません。

今日は、イタリア・オペラの最高峰を是非、ご賞味下さい。

アルバムタイトル…プッチーニ歌劇「トスカ」サバータ指揮/ミラノ・スカラ座管弦楽団及び合唱団 カラス、ディ・ステファノ、ゴッビ 他

パーソネル…マリア・カラス(ソプラノ)「フローリア・トスカ」役
      ジュゼッペ・ディ・ステファノ(テノール)「マリア・カヴァラドッシ」
      ティト・ゴッビ(バリトン)「スカルピア」
      フランコ・カラブラーゼ(バス)「チェーザレ・アンジェロッティ」
      メルキオーレ・ルイゼ(バリトン)「堂守」役
      アンジェロ・メルクリアーリ(テノール)「スポレッタ」
      ダリオ・ガゼルリ(バス)「シャルローネ及び牢番」
      アルヴァーロ・コルドヴァ(ボーイ・ソプラノ)「羊飼い」

      ヴィクトール・デ・サバータ(指揮)
      ミラノ・スカラ座管弦楽団及び合唱団
      ヴィットーレ・ヴェネツィアーニ(合唱指揮) 

曲目

DISC1

第1幕…1.ああ!やっとの思いで!、2.いつも洗ってばかりだ、3.なんということ!あの人の絵姿じゃ、4.絵の具をくれ、妙なる調和、5.誰だ、そこにいるのは!、6.マリオ!マリオ!マリオ!/ここだよ!、7.さあ、聞いて頂戴な、8.さあ、仕事をさせてくれ、9.ああ、あの眼が/君の黒く、燃える瞳に、10.やきもち屋さん!、11.トスカは気のいい女だ、12.この上もなく嬉しい知らせじゃ、閣下!、13.教会でこのような馬鹿騒ぎとは!、14.トスカだな?儂を見つけなかったろうな、15.それに私はほんとの悲しい気持ちで…、16.警官を3人と馬車を一台…急いで

DISC2

第2幕…1.トスカは素晴らしい鷹だ!、2.儂としては、狂暴な征服の方が、3.おお、君、狩猟はどうだったね?、4.まずまずだ!、5.アンジェロッティは、どこにいるんだね?、6.さあ、私達だけで、親友のようにお話を、7.シャルローネ、カヴァリエーレは、何といわれた?、8.さあ、トスカ、言いなさい、9.フローリア!/あなた…、10.あの人をお助けください!/儂が?…それは、むしろあなただ、11.若しも、役目に対して誓った忠節を…儂は、以前からプリマドンナのあなた、12.あなたは、どれ程儂を憎んでいるのか!、13.私は歌に生き、愛に生き…“歌に生き、愛に生き”、14.さあ、御覧になって、私は手を合わせて、15.儂は約束を果たしたぞ…、16.トスカ、とうとう儂のものとなったぞ!、17.今は許してやるわ!

第3幕…1.ああ、私の限りないため息よ、2.管弦楽、3.マリオ・カヴァラドッシですね?、4.星は輝き…“星も光ぬ”、4.フローリア・トスカと…、5.おお、柔らかく、けがれ知らぬ、快い手!、6.さあ、時刻は迫ってます、7.私にとっての心がかりはただ君のこと、8.あの人達は来ないわね、9.待つということは、なんて長いことでしょう!、10.マリオ、さあ早く!

原盤…EMI  発売…東芝EMI
CD番号…TOCE-59401~2

演奏について…まず、特筆すべきは、「デ・サバータ」の指揮であろう。
ベリズモ・オペラにジャスト・マッチの、濃密で劇的な表現力は、他に比肩する者がいないだろう。
ミラノ・スカラ座管弦楽団も、「デ・サバータ」の棒に、一糸乱れぬ適応を見せて、きら星のスター歌手軍団のアシストを完璧に果たす。
とても濃い音色で、極彩色のこのオペラを美しくカラフルに彩り、管楽器のブリリアントな響きと、弦楽器のロマンティックな味付けが素晴らしい。
取分け、第2幕での劇的な演奏は、他では一寸経験出来ないぐらいに良いですね。
しかし、極彩色の表現・演奏だけでなく、繊細で微音での表現が多いパートでの演奏もすごいです。
また、合唱団の出来も良く、同様に第2幕では幻想的な世界へと誘います。

さて、歌手の出来ですが、「マリア・カラス」については、後述するとして、バリトンの「ティト・ゴッピ」は、相当名唱だと思う。
輝かしくも迫力十分の歌いっぷりに、イタリア・オペラの醍醐味を味わえる。
悪者、「スカルビア」の身の毛も弥立つ恐ろしさを、完璧な歌唱と、魂で歌い上げる様は、正に適役と言えよう。
第2幕終幕での、「トスカ:カラス」との掛け合い(愛憎劇?)は、必聴物です。

また、「ディ・ステファノ」のテノールも、このオペラの数多ある録音、ディスクの中でも間違いなく最高峰でしょう。
声の良さは勿論のこと、「カヴァラドッシ」と言う、ナイーヴな役の性格を見事に歌っており、この男の弱さや優しい感情を描き切っています。
彼の歌の代表的なパートですが、これも代表的なアリア、第3幕、4曲「星は輝き…星も光ぬ」について書くと…死を覚悟した「カヴァラドッシ」が、「トスカ」に対する思いの全てを伝える歌だが、男の憂いが伝わる名唱です。

さて、いよいよ「マリア・カラス」についてですが、このオペラで最も有名なアリア、第2幕、13番「私は歌に生き、愛に生き…」から、申しましょう。
ここでの「カラス」は、まだまだ歌声も若々しいし、声の張りも十分です。
しかしながら、感情移入と表現は(若いとは言え)非常に豊かで、愛の切なさ、苦しさを神に願って…見事に歌い切っています。
また、「トスカ」の第2幕は、このオペラ劇中で、歌手にとっての一番の魅せ所であり、特に「トスカ」を我が物にしようとして、最終的に「スカルビア」が「トスカ」の手にかけられるパートは、聴き所でしょう。
ここでの「カラス」の憂い、失意、悲しさを纏った、歌唱も素晴らしいです。
そして、「ディ・ステファノ」との愛の絶唱、第3幕の「トスカ」「カヴァラロッシ」との掛け合い、繊細な二人の心情を伝える最重要パートですが、「カラス」の正に真骨頂で、驚異の歌声から、妖艶さと清らかさの両面を見て取れます。

最後に…指揮、歌手、オーケストラ、合唱の全てが、正しくパーフェクトな演奏のオペラ(アルバム)は中々無いのですが、この盤は、そう言った意味では、正に稀有な存在のアルバムです。
唯一の難点は、録音が古い(MONAURAL)事だけでしょう。
クラシックを主に聴く方々にとっては、ここだけが残念ですね。

★ジャズが好きで、クラシックも聴く人は、(ジャズは、名盤に音源が古いMONO録音が多いので)そんなに、不満は感じないと思います。
いずれにせよ、昨今のクラシック・ブームで、(クラシック)を聴く様になった初心者の方にもお薦めしたい1枚です。


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