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毎日の暮らしの中で、心惹かれたことを語ります。

ポール・グリーヴ 『清掃魔』 (柏書房) 感想

2009年11月19日 09時09分01秒 | 
 雑誌「ダ・ヴィンチ」の書評か「このミス」で見かけて以来、文庫か古本になるまで待とうと思って、はや一年。ブックオフで900円もしたけれども、読みたくてたまらず買ってしまいました。

主人公の”上から目線”が、徹底して行動の基準になっているので、極悪非道な犯罪者である主人公に、いっさい親近感がわかないというのが、まずこの作品の大成功だと思います(笑)最後まで他人の上に居たいと、悲愴感すら漂わせて叫び続ける姿が、全て滑稽で哀れに見えるのは、細かい日常のエピソードが重ねられていくからで、スプラッタよりも何よりもそこが面白かったです。(だから”次世代のS・キング”って書かれているのね)

父親の死の顛末と主人公をかまい倒した母親からの抑圧感が、主人公の歪みまくっている元凶だと、だんだん判ってくるのだけれども、主人公がまったく普通の生活をおくっている(おくれている)と勘違いしているのに、一番寒気がしました。主人公目線で書かれている事が、実は”普通”のラインから、まったくもって外れているという二重の面白さ(面白いと書いて良いんだろうか?)に、何度も読み返してしまう作品でした。

謎の女からの拷問シーンは触れないの?!と男性諸氏から突っ込まれそうだけど、うん、その苦痛や酷さの描写よりも、犯人の歪みっぷりが読みどころだと思うので、スルーします。





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