What A Wonderful World

毎日の暮らしの中で、心惹かれたことを語ります。

P・D・ジェイムズ 女には向かない職業

2006年06月22日 10時41分37秒 | 
 「面白い」には、人それぞれの受け取り方があるので、微妙な表現だと思うのですが、私としては「女には向かない職業」を心うきうきとか青い春のばかやろーとかいう面白さでは、一切ないと申し上げます。もっと人の持つ醜さとか、自分らしくあろうともがく切なさとか、女が抱える普遍の業を書いたお話なので、R・レンデル同様に、体調の悪い時に読む本ではないかも(笑)

 P・D・ジェイムスは、クリスティーの後継者と呼ばれる(つまり女性です)イギリスの作家さんで「ダルグリッシュ警部シリーズ」が人気です。私が持っているハヤカワ文庫では、この作品が既刊の一作目に置かれているので、その意味で「女には~」がこの作家さんの作風や持ち味を知るのに、ベストなお話だと思います。

 主人公は22歳のコーデリアで、探偵事務所を共同経営していた男性に自殺されます。その後も一人で仕事を続けるのですが、最初の依頼は、突然大学を中退し自殺した青年の自殺の理由を調べて欲しいという物でした。調べて行くうちに、名家の父との軋轢や学友たちの不穏な行動、出生の秘密が暴かれて行きます、そして・・・という大筋ですが、その脇役として登場する人々の一言や生き様が、ただの背景としてではなく、このお話を実に重厚なものへと形作って行きます。最後には、ダルグリッシュ警部が登場して、主人公自身の苦しみにも決着が着きますが、この事で伏線が見事に繋がって、えも言えぬ喜びに満たされます。あー、本を読むのって好いよねー!と本を閉じる満足感は、毎回味わえるものではないですが、これがあるから止められないです。

 巻末説明に、主人公の「コーデリア」と言う名前は、シェークスピアの「リア王」に登場する、心優しく気高い三番目の姫の名前とあって、なるほど!と思いました。


 話はもどって「少女には向かない職業」は、書評を読む限り、さくさく読めるライトノベルだそうですが、この作品の影響は題名だけのようですね。この作家さんは題名をつけるのが上手い方なんだそうで、興味のある方はこちらのお話もチャレンジしてみては如何でしょうか。私?私は偏屈者で、ライトノベルは耐えられないという偏見があるので読みません(爆)

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