夢酔(糸・・2)

わたしは凧
風に乗って悠々と
大空を舞い続ける凧

風が教えてくれた。
『わたしが君を飛ばしてあげてるんだよ。』

青い空が教えてくた。
『わたしが君を輝かせてあげてるんだよ。』

凧は地上の少年を見ながら言った。
『彼がその手を決して離さないと知っているから飛べるのよ!
わたしは彼に全てを委ね自由に大空を飛び回るわ!』

凧は知っている
少年の夢を乗せ一緒に飛んでいること。

凧は大きな大きな空を悠々と
風に身をまかせ飛び続ける。

ある時
凧はいきなり
風に見放され・・・
美しい青空に見放され・・・
あっという間に
クルクルと舞い落ち
地上に叩きつけられた。

地上に叩き付けらたボロボロの凧。
少年は小さな上着を脱ぐと
凧の痛みもろとも
大事に包み抱きしめて
雨の中を涙をこらえて走り出し
小さな自分の部屋に凧を持ち帰った。

そして数日後
再び凧は青く大きな空に舞った。

少年は悠々と飛ぶ凧を
嬉しそうに眺める。
少年の夢を乗せた凧を
嬉しそうに眺める。

凧は風に乗り
青く高き空まで舞い上がり
少年と共に風をあやつる。

彼は決してその手を離さない。
凧は繋がれた糸を見ながら幸せに笑った。

凧は少年の夢を乗せるために生まれた。
凧は少年によって生かされる。

少年は知っていた。
夢を共に生きてる凧を知っていた。

凧の喜びは
少年の喜び

凧の痛みは
少年の痛み

一本の糸で結ばれたものしかわからない・・・

たった一本で十分な糸

でも、
もしも切れたなら・・・

少年も凧も知っている
それが凧と少年の運命

凧は思う。
運命の痛みさえも彼と共にあるのなら
恐れることなぞこの世になにもない。

少年と繋がれた一本の糸を見ながら
凧は満足そうに笑ながら
いつものように青空を悠々と舞い続けた。



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