冬将軍来たる

冬将軍が最後の山のもみじにキスをしました。
目覚めると昨日までの綺麗なもみじは絨毯となり
木はちょっと寂しそう・・・

赤い赤い絨毯から朝陽と共にもやが立ち
冬将軍の到来を告げます。

頬に沁みる冷たさが
もうすぐ冬眠の時期を知らせます。

管理人の冬眠まであとわずか
少しでも多くを伝えましょう。

永い眠りに着く前に
伝えたいことがたくさんたくさんありました。

真っ赤な絨毯から
朝もやがそっと天に昇る

冷たい霜に包まれた赤いもみじが
静かに溶け出すときの冬の香り

目には見えないけれど
心で見えるものがある。

身体で感じられないけれど
心で感じられるものがある。

心が大きなあくびを一つ

まだまだ
もう少し
寝てはいけませんよ!管理人さん!!

そうそう
まずはあなたに伝えましょう。

深き深き想いを伝えましょう。

キーンと空気が
引き締まり
なんだかちょっと緊張してしまう冬の朝

指先の冷たさを白い息で暖めながら
キラキラ光る足元を見る。

冬将軍は
真夜中に冷たく優しいキスをして
雑草の息を止めました。

冬将軍は
名もない雑草に魔法をかけたのです。

朝陽が登るその時に
雑草たちが目覚め驚きました。

まるで宝石を散りばめたように
輝かく身体に驚きました。
名も知られない雑草たちは驚きました。
雑草たち喜び笑い歌います。

それから
冬将軍の魔法は毎晩続きました。

雑草たちは
真夜中、冷たく優しいキスの魔法にかかり
朝には宝石を身体にまとう。
朝陽の中で
雑草たちは美しく踊ります。

気がつくと
雑草たちは
日に日に小さくなりました。

そして最後は消えてなくなりました。

冬将軍は
凍てつく大地に
雑草たちを消しました。

冬将軍は
雑草たちに
素敵な覚めぬ魔法をかけました。

雑草たちは
静かに幸せの中眠り続けます。

冬将軍が姿を消すころ
冬将軍の魔法もとけ始めます。

雑草たちは魔法から目覚めます。
幸せな夢の中から目覚めます。

魔法の記憶もないけれど
訳もなく
なんだかとっても元気に目覚めます!
幸せいっぱいで目覚めます!!

冬将軍は
冷たく優しいキスをします。

冬将軍のキスは冷たいけれど
心に暖かな夢を残します。

でも冬将軍は
暖かいのは苦手です。

だから
冬将軍はいつも独り。

冬将軍の立ち去る足跡は
冷たい冷たい足跡は
朝陽を浴びて
零れ落ちた涙のように
美しく美しく輝きましたとさ・・・。



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