ポエトリー・デザイン

インハウスデザイナーが思う、日々の機微。

デザインコンセプト。

2007年11月25日 | blog

デザインコンセプトってものがあるのです。
カイシャなりで「どのような意図でこのデザインなのか」を共有するためとか、
複数人でデザインする場合は、その意思統一と共通認識のため、だったりします。
デザインするにあたってのテーマというか、指標みたいなもんですね。

たいがいは、イメージボード(イメージ写真のコラージュみたいなもんかな)とセットで作成されます。

あ、そこのひと!
「シンプル・スマート・スタイリッシュの3Sで行きましょう!」みたいなハナシは、あらゆるところで使い古されていますから、念のため。

それはともかく。

商品概要が決まり、商品コンセプトみたいなものがあって、ターゲットユーザーが設定され、
それらをふまえて、デザイナーによって、デザインコンセプトが作成されます。
前段のところは通常、商品企画者によって決められます。

まぁそれなりに大事なもので、まして私は詩人ですから(まじ)言葉遊びはお手のもの。
「向かうべき方向にしっくり」来つつも「皆がうまく共有」することができて、
なおかつ「絵的に成立させ得る」コトバをうまく選んだりするのは得意です。

でも、モノは「そのモノとしてのあるべき姿」があって、その範疇を超えてはいけません。
よろしくないのは、デザインコンセプトというのは往々にして、そのモノの領分を超えようとするんですね。

「ルーチンワーク」で毎年モデルチェンジを繰り返していると、どうしても「去年となにが違うのか」ばかりに焦点があたりがちで、そういうことを繰り返していると、「本来あるべき立ち位置」すら見失ってしまう。

ありがちなのはですね、ビミョーな新機能があって、そこしか今年の商品の売りはないんですよ。というばあいに、その「ビミョーな新機能」を最大限表現するような、デザインコンセプトとかスタイリングとかにしちゃうんですね。

でもよくよくかんがえると、そういう細かい機能の違いは、接客上のフックにはなるけど全てじゃないというか、それよりもフツーの、ふだんよく使う機能のほうが大事なわけです。
そんな、「差別化のための差別化」みたいなところに寄りかかってデザインコンセプトを作るとロクなことがない。そういうのって、お客さんにはバレるし、フツーに使いにくい。

そんなところでしか価値を表現できないような新製品は、そもそもいらないんでないの?

デザインコンセプトは、必要ですよ。なくてはならない。
でも、それをふまえたうえで、けれどデザインコンセプトなんてものは、もしかして、なくてもいいんじゃないですか?モノのあるべき姿が表現されていたら、それで大丈夫なんじゃないの?

…という気持ちもまた、必要なんだとおもいます。