『子育てのツボ』夜回り先生50のアドバイス
水谷 修著 日本評論社発行 1,200円
はじめに
私は教員としてたくさんのお父さんやお母さんと触れ合ってきました。親としてわが子の子育ても経験しました。また、「夜回り先生」として多くの夜の世界で暴れ回る子どもたちや悲しみにつぶされる子どもたち、死に向かう子どもたちの親御さんともかかわってきました。
なかでも、問題を起こした子どもたちのお父さんやお母さんにお会いすると、いつも痛感していたことがあります。それは「子育てが下手だなぁ」ということです。とくにまじめな親御さんたちは、ボタンの掛け違いのような些細なことでわが子の心を深く傷つけてしまいます。その一つひとつを見ていて、反面教師として、親にとって本当に必要な子育ての知恵を学びました。優しいいい子に育でるために、親がわが子にしであげるべきことの数々を知ったのです。
親は誰もわが子をかわいいと思っています。幸せになってほしいと願っています。でも、その想いが空回りして、子どもを追いこんでしまっているのです。
わが子が不登校になったとき、そのお母さんは「いいよ、今日は休んで。でも明日から学校に行こうね」といって、優しかった。次の日も学校に行かない子どもに、「今日は気分転換にドライブに行こう」と誘ってくれました。次の週も子どもは相変わらず学校に行けません。すると、試験の前日にお母さんがいったのです、「なんで、あなたは学校に行かないの。進級できないでしょう」と。
じつは、こんな残酷な子育てはありません。「優しいお母さんを鬼のように変えたのは私だ」と考え、この子は自分を責めました。そして、本当に心を病んでしまったのです。
こんなときに、お父さんが子育てに参加してくれて、家族みんなで待つゆとりと勇気があったら、子どもは案外簡単に元気になります。子どもたちを変えたいのなら、まず、親であるあなたが、そして、これから親になる人と、われわれ大人たちが問題に気づいて変わることです。
この本には、子育てのツボともいえる具体的なアドバイスを刻みました。
子育ては子どもの成長段階を追うごとに、いちばん効果のある方法が変わってきます。そこで本書では、子どもが幼いとき、小学生になったら、中学生になったら、高校生になったら、問題を起こしたときの五部構成としました。
でももし、あなたの子どもが今中学生で、小学生の項を読んで実行しでいないことがあったとしでも、「うちはもう手遅れ」とあきらめないでください。気づいたら今から始めればいいのです。子育でに手遅れということはありません。
また、お父さんやお母さんにはたくさんのお願いをし、厳しいこともいっています。なぜなら、子育ては失敗することが許されない、命を育むという大人としての大切な仕事だと考えるからです。
ぜひ、あなたの子育でにこの本を役立ててください。そして、この本を通して多くの子どもたちの笑顔が生まれることを願っています。
2010年10月 水谷 修
(以上まえがき)
○「うちはもう手遅れ」とあきらめないでください。
☆「もう手遅れ」とあきらめたらその子どもはどうなるのか。子育てにあきらめはないのか、でも妥協してしまうときはあるでしょう。それとも妥協の連続か?
○子育ては失敗することが許されない、命を育むという大人としての大切な仕事だと考えるからです。
☆「子育てに失敗は許されない」これは厳しい。一昨年の冬、親父最後の病床で「子育ての失敗!」と言われた。私と姉が不仲だった。親父最後の頼みで仲直りせよ、ということだったが、私が強情を張り通した。その時の我々姉弟に対しての言葉だった。80過ぎの爺が子育て真っ最中の私に言った。この数日後親父は逝った。
長女来月成人式、彼女は今、アイデンティティを確立させることで悩み、私たちと対立した。寮から帰ってこなかった。
次女は再来年成人式、以前不登校だった。今は自分の学ぶべき道を見つけて楽しそうには見える。昨夜も歌舞伎勧進帳のレポート作りを一緒にやった。楽しそうには見えるのだが……。
末っ子長男、中一バスケ部。サッカーには進まなかった。ここでも私は失敗したのか。たとえポリシーが合わなくても地元の少年団に預けるべきだったのか。清水に連れて行きたかった。
手遅れはない。あきらめちゃいけない。失敗は許されない。これじゃキビシイ。
この冬休みは子どもたちに自分の姿を映して眺めてみようか。長女も今帰ってきた。何も無かったような顔をして、相変わらずのキツネ頭が気に入らないが。