「美女はつらいよ」の項で,
「美女は名品,普通の女は真品,ブスは返品」
というセリフを紹介しました。
「名品」とはブランド品のこと,真品(チンプム)は本物のこと。真品の反対語として,よく新聞などに使われるのが「カプム 가품」(にせもの)なのですが,辞書に載っていないので漢字表記がよくわからない。たぶん「仮品」でしょう。その他,「ウィジョプム(偽造品)」という言葉もある。口語ではチンチャ(本物),カッチャ(偽物)のほうをよく使います。
韓国は言わずと知れたコピー天国。
音楽なども,新譜の発売とほぼ時を同じくして,繁華街の道端にコピーが並びます。10年前はカセットテープでしたが,今はそれがCDやDVDになっただけの話。減っているようには思えません。
名品(ブランド品)のカッチャも横行しています。
梨泰院はカッチャのメッカ。それを目当ての観光客(主に日本人)も多い。ピキのお兄さんも,日本語で
「偽物ありますよ~。完璧ですよ~」
あげくは,
「偽物専門。偽物しかありません」
などと叫ぶのもいる。
駐在員夫人の中にはお得意さんになっている不逞な輩もいる。あーゆーものを買う人の気が知れません。旦那の顔が見てみたいもんだ。
自慢じゃないけど,私の腕時計はスイスの名品ロンジンのチンチャ,結婚10周年記念の品です。もっとも,ラブラブだったか,アダム&イブだったか,そんな名前の激安ショップの閉店セールで,流行遅れのものを,夢か幻か,8割引,19,800円で買ったものですが。
ひょっとしてカッチャ?という一抹の不安があったので,電池交換のときそれとなく確認すると本物でした。
先日,一時帰国したとき,妻が
「ちょっと,これソウルで直してきてくれない」
と腕時計をさしだす。
「えっ? 日本でやればいいじゃない」
「断られたのよ,偽物はだめだって」
(おいおい,ブルータス,お前もか?)見ると,カルチェの偽物でした。百年の恋もさめつつ,
「チッ,使い捨てだと思えよ」
「だめよ,10万ウォンもしたんだから。A級品なのよ」
(そんな高いもの,いつのまに…。)
カッチャにも等級があるようです。
「しょーがねえなあ。空港でひっかかったら諦めるんだぞ」
しかたなくソウルに持ち帰りました。
いつも昼食をとっているあたりで「時計修理」の看板をみたような気がしたので探してみると,ありました。
ん? 粉食チプだ。なんでこんなところで……。
粉食(プンシク)チプとは,いってみればインスタントラーメン屋さんですね。ラーメン以外にキムパプ(韓国式のり巻き)とか,トッポッキとか,マンドゥー(水餃子)などの軽食もあり,昼御飯時に賑わいます。私はその店には今まで一度も入ったことはありませんでした。
ドアをあけるとレジの隣に小振りのショーケースがあって,たしかに時計が並んでいる。
ラーメンと時計。
こういうアンバランスな兼業が多いんですね,韓国は。ここのアジョシ(親父),食堂をやりながら時計の修理もしちゃうマルチ職人のようです。
「すいません。この時計のバンドなんですけど」
アジョシ,業務用の巨大な炊飯器からシャモジでごはんをよそう手を休め,時計を手にとる。
「ああ,こりゃスプリングじゃなくて○○(聞き取れない)だから,ちょっと時間かかるよ。作んないといけないからね」
「いいですよ。別に急がないから。で,いくら?」
「7000ウォン」
(うっ,意外に高い…)
「あさって,取りにきて」
「……。引換証かなんかないんですか」(一応カルチェなんだからね)
ご主人,面倒くさそうにそのへんの紙切れに書いてくれたのは,ハングルでくっきり「カルテ 카르테」の文字。チンチャかカッチャかなんて,まるで関心がないようでした。しかし,カルチェの時計をラーメン屋で直すなんて,世界初ではあるまいか(偽物だけど)。
「美女は名品,普通の女は真品,ブスは返品」
というセリフを紹介しました。
「名品」とはブランド品のこと,真品(チンプム)は本物のこと。真品の反対語として,よく新聞などに使われるのが「カプム 가품」(にせもの)なのですが,辞書に載っていないので漢字表記がよくわからない。たぶん「仮品」でしょう。その他,「ウィジョプム(偽造品)」という言葉もある。口語ではチンチャ(本物),カッチャ(偽物)のほうをよく使います。
韓国は言わずと知れたコピー天国。
音楽なども,新譜の発売とほぼ時を同じくして,繁華街の道端にコピーが並びます。10年前はカセットテープでしたが,今はそれがCDやDVDになっただけの話。減っているようには思えません。
名品(ブランド品)のカッチャも横行しています。
梨泰院はカッチャのメッカ。それを目当ての観光客(主に日本人)も多い。ピキのお兄さんも,日本語で
「偽物ありますよ~。完璧ですよ~」
あげくは,
「偽物専門。偽物しかありません」
などと叫ぶのもいる。
駐在員夫人の中にはお得意さんになっている不逞な輩もいる。あーゆーものを買う人の気が知れません。旦那の顔が見てみたいもんだ。
自慢じゃないけど,私の腕時計はスイスの名品ロンジンのチンチャ,結婚10周年記念の品です。もっとも,ラブラブだったか,アダム&イブだったか,そんな名前の激安ショップの閉店セールで,流行遅れのものを,夢か幻か,8割引,19,800円で買ったものですが。
ひょっとしてカッチャ?という一抹の不安があったので,電池交換のときそれとなく確認すると本物でした。
先日,一時帰国したとき,妻が
「ちょっと,これソウルで直してきてくれない」
と腕時計をさしだす。
「えっ? 日本でやればいいじゃない」
「断られたのよ,偽物はだめだって」
(おいおい,ブルータス,お前もか?)見ると,カルチェの偽物でした。百年の恋もさめつつ,
「チッ,使い捨てだと思えよ」
「だめよ,10万ウォンもしたんだから。A級品なのよ」
(そんな高いもの,いつのまに…。)
カッチャにも等級があるようです。
「しょーがねえなあ。空港でひっかかったら諦めるんだぞ」
しかたなくソウルに持ち帰りました。
いつも昼食をとっているあたりで「時計修理」の看板をみたような気がしたので探してみると,ありました。
ん? 粉食チプだ。なんでこんなところで……。
粉食(プンシク)チプとは,いってみればインスタントラーメン屋さんですね。ラーメン以外にキムパプ(韓国式のり巻き)とか,トッポッキとか,マンドゥー(水餃子)などの軽食もあり,昼御飯時に賑わいます。私はその店には今まで一度も入ったことはありませんでした。
ドアをあけるとレジの隣に小振りのショーケースがあって,たしかに時計が並んでいる。
ラーメンと時計。
こういうアンバランスな兼業が多いんですね,韓国は。ここのアジョシ(親父),食堂をやりながら時計の修理もしちゃうマルチ職人のようです。
「すいません。この時計のバンドなんですけど」
アジョシ,業務用の巨大な炊飯器からシャモジでごはんをよそう手を休め,時計を手にとる。
「ああ,こりゃスプリングじゃなくて○○(聞き取れない)だから,ちょっと時間かかるよ。作んないといけないからね」
「いいですよ。別に急がないから。で,いくら?」
「7000ウォン」
(うっ,意外に高い…)
「あさって,取りにきて」
「……。引換証かなんかないんですか」(一応カルチェなんだからね)
ご主人,面倒くさそうにそのへんの紙切れに書いてくれたのは,ハングルでくっきり「カルテ 카르테」の文字。チンチャかカッチャかなんて,まるで関心がないようでした。しかし,カルチェの時計をラーメン屋で直すなんて,世界初ではあるまいか(偽物だけど)。
偽ブランドに整形サイボーグ、一体どこに「まこと」があるのやら。
私の時計もチンチャです。買ったのは「さくらや」ですが。でもラブラブなんて懐かしい名前をみました。もしかして多摩ですか?
たしか大きな街道沿いでした。
青梅か新青梅。