ミャンマーの若者たち

 週末の帰省時、前のミャンマー語の先生の息子さんに会いました。

　彼のお母さんは、３年間の日本留学で博士学位を得たあと、ミャンマーに帰国。彼女が就学ビザで滞日中に家族ビザで息子を呼び寄せました。息子は日本語学校に入学、就学ビザを取得して、今年で日本生活４年目に入ります。

　その後、私が大阪に赴任し、彼に会うチャンスもなかなかありませんでしたが、フェイスブックでつながったのを契機に連絡したのです。

「高田馬場で会いましょう」

「はい。私は今大塚に住んでいます」

　大塚は、高田馬場に次いでミャンマー人の多い町。ミャンマーレストランもたくさんあります。最近も、ヤダナボンというミャンマーレストランに行きました（リンク）。

（そういえば、ヤダナボンがつぶれたと言ってたな）

　ヤダナボンで働いていたミャンマー人の女の子から、どこかいいアルバイトがないかとラインで相談を受けたことがあるのです。連絡してみると、予定はないとのこと。彼女は高田馬場に住んでいます。

「犬鍋さん、お久しぶりです」

「あれっ！　ずいぶん痩せたね」

　２年振りに会った青年（ゾー）は、見紛うほどに頬がこけていました。

ゾ「苦労してるんです」（笑）

　フェイスブックのプロフィールには、福祉系の大学名が書いてありました。

犬「大学に入ったの？」

ゾ「いえ、日本語学校です」

犬「でも、フェイスブックに…」

ゾ「ああ、大学が経営している日本語学校なんです」

犬「そうか。Ｎ１はとった？」

　Ｎ１とは、日本語能力試験１級のこと。

ゾ「いえ、まだＮ２です。今度、Ｎ１を受けますけど、無理です」

犬「やっぱり漢字が難しい？」

ゾ「それより、時間が足りないです。長い文を読むのに時間がかかるから」

　少し遅れて女の子（ミャッノー）がやってきました。

　簡単に紹介したあと、ミャンマー料理よりも日本料理のがいいというので、近くの海鮮の店に入りました。

犬「お酒は飲まないんだよね」

　ゾー君はムスリムなのです。

ゾ「ええ。宗教が理由じゃなくて、一度飲んだらすごく頭が痛くなったので、もう飲まないことにしました」

犬「ミャッノーさんは」

ミャ「私は飲みます。赤ワインが好き」

　魚介類をテーブルにあるガスコンロで焼きます。ゾー君がシシャモを見て、

ゾ「これ、丸ごと食べるんですか」

犬「そうだよ。初めて？」

ゾ「骨がのどに刺さったりしませんか」

犬「大丈夫だよ」

　日本に４年住んでいても、まだ食べたことがないものがたくさんあるようです。

ゾ「これも焼くんですか」

　だし巻き卵を指します。

犬「それはそのまま」

ゾ・ミャ「おいしいですね！」

　ヤダナボンがつぶれてから、ミャッノーさんは、事務所の掃除のアルバイトをしているそうです。掃除は、あまりしゃべる必要がないので、来日まもない外国人留学生の定番のアルバイトなんだとか。

犬「コンビニは？」

ミャ「まだ難しいです」

ゾ「ぼくはやったことありますけど、すぐ辞めました。ぼくは接客はあまり向いていないです。敬語つかわなくちゃならないし」

犬「今も天ぷら屋で働いているの？」

　天ぷら屋で弁当におかずを詰めるアルバイトをしていると聞いていました。

ゾ「はい。今は詰めるだけじゃなくて、天ぷら揚げたり、ホールに出たりもします。とにかく忙しくて」

犬「それでそんなに痩せたんだ」

ゾ「ハハハ、そうです。去年、初めてミャンマーに帰ったとき、お母さんもびっくりしていました」

犬「お母さんは元気？」

ゾ「はい、父も妹も元気です」

犬「たしか、ミャッノーさんもヤンゴンだったよね」

　しばらく二人でミャンマー語で話していました。

ゾ「ミャッノーさんが住んでいるところは、金持ちが多いところです」

犬「すごい立派な家に住んでよね」

　お母さんは華僑で、おばあさんの時代にミャンマーに移民したらしい。お父さんはミャッノーさんが小さいころに亡くなったけれども、おばあさんが金持ちで、立派な邸宅の写真を見せてもらったことがあります。ミャンマーに恋人がいて、いずれは彼も、おばあさんも日本に呼び寄せて、日本に住むのが夢だそうです。

犬「ゾーさんは、日本で大学を卒業したら、ミャンマーに帰るの？」

ゾ「いえ、日本で就職したいです」

犬「どんな仕事？」

ゾ「なんでもいいです。とにかく日本の会社に入りたいです。母もまた日本で住みたいって言っています」

　民主化、自由化されたミャンマーも、必ずしも住みやすい国になっているわけではないようです。