韓国便り～初日

　二泊三日の韓国出張です。

　出張が直前に決まったため、チケットをとるのに苦労しました。ようやくとったのがＡＮＡ便で、往路は関空→仁川、帰路は金浦→羽田→関空。（なんで羽田に寄らないとなんないんだよ）と思いましたが仕方がない。

　早朝に関空を出発し、機内で簡単な軽食が出ます。

　日本のソース焼きそばの上に半熟のオムレツと鶏のから揚げが載っている。そしてチューブのコチュジャン（唐辛子味噌）も提供されます。オムソバはふつうケチャップをかけると思うのですが、ここではコチュジャン。韓国人客の嗜好に合わせたのでしょう。私もせっかくだからコチュジャンをたっぷりかけていただきました。韓国風のフュージョンＢ級グルメです。

　仁川からＫＡＬのリムジンバス。市内のいくつかのホテルを回るバスですが、私が泊まるホテルには行きません。それで、最初に止まるコリアナホテルでおり、そこからタクシーに乗ることにしました。

　仁川空港は晴れていたのに、途中から土砂降りに。雷雨のようです。幸いコリアナホテルについたころは小雨になっていましたが、タクシーが拾いにくい。ひさしぶりに模範タクシーに乗りました。初乗りは５０００円ウォン。以前はもっと安かったと思いますが、値上げされたようです。

　事務所で、一日早く来ていたメンバーと合流。夜は、現地の職員もいっしょに食事をしました。

「何が食べたいですか」

「実は昨日、日本で焼肉を食べたので、焼肉はちょっと」

　先に来ていたメンバーは、前日の夜にカンジャンケジャンを食べたとのこと。そのうちの一人の希望により、この日の夜はサムゲタン（参鶏湯）ということになりました。

「サムゲタンならトソクチョン（土俗村）がいいですよ」

　土俗村というのは、キョンボックン（景福宮）のそばにある参鶏湯の老舗。私も駐在中に何回か行ったことがあります。
外出しているメンバーは、出先から直接店に来てもらうことにして、私たちは仁寺洞の事務所から徒歩で店に向かいました。

　途中、景福宮の正門であるクァンファムン（光化門）の前を通りました。光化門は、植民地時代に総督府の建物を作るときに取り壊されそうになったのですが、民芸運動の柳宗悦の尽力で取り壊しを免れ、移築されました。最近になって、門を元の位置に戻すための工事が行われ、数年前に完成しました。

　門の上には「光化門」という漢字表記の扁額があります。移動前の扁額はハングルで、朴正煕大統領が書いたものでした。

「この字、あまりうまくないね」

　ほとんどくずしていない楷書体で、小学生が書いたような幼稚な感じがします。

「誰が書いたんだろう」

「たぶん有名な書家だと思うけど」

「朴槿恵だったりして…」

　いっしょにいた韓国人がスマホで調べると、１９００年に撮影した写真をもとに、当時の文字をデジタル技術で復元したとのこと。書いた人は、その門を作ったときの造営責任者で、別に書家というわけではないようでした。

　土俗村は伝統的な韓屋（ハンオク）の作りで、観光客もよく訪れる店。メニューは普通の参鶏湯以外にオッ鶏湯、オゴル参鶏湯なんていうのもあります。「オッ」というのは漆（うるし）のこと。私が駐在していたとき、「オッオリ湯」（うるしアヒル鍋）を食べたことがありますが、うるしアレルギーの人もいるので、食前にまず薬を飲まされた。味はあまりおいしくなかったと記憶しています。

　オゴル参鶏湯というのは、ふつうのニワトリではなくオゴルゲ（烏骨鶏、ウコッケイ）を使った参鶏湯。烏骨鶏は皮も烏のように黒くて不気味。一度食べてみましたが、肉付きが鶏に劣る上、肉もぼそぼそしていた。私がその話をしたにもかかわらず、駐在員が「ものは試しだから」といって注文していました。

　普通、参鶏湯は昼食べることが多い。ミッパンチャン（無料のおかず）もあまり出ません。それで、パジョン（ネギ海鮮チジミ）も頼み、酒はビール、焼酎、百歳酒（ペクセジュ）など。

　それでもなお、やや物足りなかったため、二次会には近くの「モクチャコルモク」（飲食街）で、コムチャンオ（ヌタウナギ）の店に入りました。私がよくいく新村の専門店には及びませんが、それなりに楽しむことができました。

　私と駐在員と韓国人男性社員は、カフェ（韓国式バー）で三次会。ホテルに戻ったのは１２時近くでした。