高橋裕史『イエズス会の世界戦略』講談社選書メチエ,2006年

著者は、1960年生まれ。この本が発行されたとき現在で、苫小牧駒澤大学国際文化学部助教授。専攻は、近世キリスト教史(アジア、日本)。本書は、「科学研究費補助金」の研究成果の産物の一つ(本書p.283)。
この本の要旨は、「エピローグ」(pp.239-246)にまとめられている。急ぐときは、この章だけ読むのもひとつの方法。「エピローグ」内の小見出しは、聖と俗の「共生」、イエズス会の経済・文化・情報戦略、「鉄の意志」による「神の意志」の貫徹、「両刃の剣」としての軍事力、イエスの軍団からの問いかけ。

【若干の引用】
「イエズス会抜きにして日本のキリスト教史を語ることはできまい。」(本書p.280)
「「キリスト教における日本」「日本におけるキリスト教」双方の歴史像とその意義を再構築」(本書p.237)

【管見】
日本史におけるイエズス会と、世界のキリスト教史におけるイエズス会は、非常に異なっている、と認識していることが本書を読むときの前提である。
イエズス会が保有する未刊行史料が研究者に開放されたことにより、日本における16~17世紀のキリスト教史研究が進んだ由(本書p.237)。イエズス会にとって、日本は布教地のひとつに過ぎないこと、イエズス会がアジア、世界に向かってどのように布教を進めていったのかを踏まえて日本のイエズス会の歴史を知るべきという著者の研究趣旨に賛成する。以上
コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )

フィリップ・レクリヴァン著/鈴木宣明監修/垂水洋子訳『イエズス会――世界宣教の旅』創元社,1996年

創元社「知の再発見」双書53。
著者は、イエズス会員フィリップ・レクリヴァン師(パリ・イエズス会神学院教授)。
本書の後半の「資料編 宣教師たちの足跡」が面白い。とくに、「1 イエズス会――創立から現在まで」(創立と霊性 宣教の成果とその反動)。
コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )

中川浪子『聖イグナチオ・デ・ロヨラ――16世紀の偉大な巡礼者』中央出版社,1993年

日本人著者によるイグナチオ・ロヨラの伝記。イグナチオ・デ・ロヨラ(1491-1556)の生きた時代、ヨーロッパの中世封建社会から近代社会への大変換期であった。激動の時代に生き、イエズス会を創設し、同志聖フランシスコ・ザビエルを遠く日本まで派遣し、ローマ教会の援護者として活躍した聖イグナチオ・デ・ロヨラの敬虔な一生を、当時の社会と歴史を背景に記述されている。良書。

世界地図帳、世界史地図帳を手元に置き、本書を読みながら地図帳をめくるといっそう面
白い。文がやや長いのことがあるが、読み慣れれば気にならない。

【ご参照1】
越前喜六編『仕えるために――イエズス会の歩み』サンパウロ,2007年,pp.33-58
ホアン・カトレット著/香田潤志訳「イエズス会創立者 イグナチオ・デ・ロヨラ――神の栄光を求める人」
の記述も簡明でよい。

【ご参照2】
ウィリアム・バンガード著/上智大学中世思想研究所監修『イエズス会の歴史』原書房,2004年,pp.1-51
「第一章 創立者とその遺産」(若きイグナティウス・デ・ロヨラ パリとローマでの日々 初期の発展 学校 海外宣教 晩年のイグナティウス 結論)
の記述も参考になる。

【ご参照3】
イグナチオ・デ・ロヨラ著/門脇佳吉訳・解説『霊操』岩波文庫,1995年pp.27-37
の門脇佳吉氏による「解題」中の「3 『霊操』の著者イグナチオ・ロヨラとはどんな人物だったか」
は、イグナチオが『霊操』を著すまでの生涯を3期に分けて記述している。以上
コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )