徒然なるままに、一旅客の戯言(たわごと)
*** reminiscences ***
PAXのひとりごと
since 17 JAN 2005


(since 17 AUG 2005)

BOMBARDIER CRJ200 に緊急勧告 - NTSBより

 またまた NTSB: National Transportation Safety Board (米国国家運輸安全委員会)からのメールに目が止まってしまいました。

今回も緊急勧告( URGENT RECOMMENDATIONS )で、その対象となった機種は、カナダの BOMBARDIER 社の REGIONAL JETS、CRJ-200 です。

当該機種は、日本でもJALグループの J-AIR および ANA Connection でも知られている IBEXエアラインズ で導入、運航しています。

今回の勧告の背景は、この半年に起きた6件を含む7件の火災です(いずれの火災でも負傷者はゼロ)。幸いにも負傷者が出ることはありませんでしたが、これらの火災のうち4件においては、一時的ではあるにせよ電源が全て失われる事態に陥り、ハイテク機の象徴でもある EFIS: Electronic Flight Information System のディスプレイ表示が真っ暗になり、運航乗務員は飛行に重要な主要計器の情報を得ることが出来ず、緊急時に更なるワークロードの増加をもたらしました。

火災原因を詳細に調査した結果、ジェットエンジンに装備された発電機から供給される三相交流のスイッチ素子「1K4XD contactors」に用いられている絶縁体“ Ultem 2200 ”に問題があることをつきとめました。

※「contactor」が水に濡れると、絶縁体である Ultem 2200 は電圧が印加されている間にその特性が徐々に変化、回路短絡( short circuit )で水が蒸発した後も、特性変化した Ultem 2200 は絶縁性が失われ、回路短絡をさらに促進させることを確認した。ショートによるアークは高さ1フィートにも達し(タイトル画像)、炎は約100秒間続いた。

※ CRJ-200 「1K4XD contactor」は絶縁体が異なる二種類存在し、初期バージョンの絶縁体は、NP509 グラス・ファイバーをメラミン樹脂ラミネートした G-9。
Ultem 2200 は2000年3月、新たに使用を承認されたもの。

また、この「1K4XD contactors」が設置されている場所が、酸素供給配管に近いため、重大事故につながる危険性があることも指摘しています。

Burned area beneath the left forward cabin floor

以下のメール原文の一部からも、NTSB が事を重視していることがうかがわれます。
"The problems identified in the Board's letter must be corrected as soon as possible," NTSB Acting Chairman Mark V. Rosenker said. "The potential consequences of these fires can be catastrophic."


今回の勧告も FAA: Federal Aviation Administration (米国連邦航空局)に対するものです。

下手くそな訳よりも、原文の方が確実ですし、下手なりにも訳す時間の節約にもなるので、勧告した事項は原文で以下に引用します。
ちょっと長いですが、勘弁して下さい。
The texts of the recommendations to the FAA are:
o    Immediately require operators to provide separation of electrical power sources in CRJ-200 airplanes to prevent the potential loss of electronic flight instrument system displays that may result from contractor failures. (A-06-29) Urgent

o    Require Bombardier to develop a means of protecting electrical terminals on Tyco Hartman 1K4XD contractors fitted with Ultem 2200(polyetherimide) terminal bases from moisture-induced short circuits. (A-06-30) Urgent

o    Once Bombardier has developed a means to protect electrical terminas on Tyco Hartman 1K4XD contractors fitted with Ultem 2200 (polyetherimide) terminal bases a recommended in Safety Recommendation (2), require operators to install the protection as soon as possible. (A-06-31) Urgent

o    Require Bombardier to expedite the replacement of 1K4XD contactors on CRJ-200s with contactors that are not susceptible to short circuit. (A-06-32)

o    Require Bombardier to demonstrate the capability of electrical components to safely tolerate exposure to moisture or conductive fluids under full electrical load when such components may be inadvertently exposed to such conditions. (A-06-33)

o    Require all airplane manufactures to determine whether any electrical components on their aircraft are manufactured with Ultem 2200 (polyetherimide) or similar material with arc-tracking characteristics and require removal or protection of these components to prevent potential fires. (A-06-34)

o    Require Bombardier to immediately evaluate existing abnormal and emergency procedures for the CRJ-200 airplane to determine whether they adequately address the fire hazard presented by the failure of the 1K4XD contractor and provide flight crew with additional guidance as needed. (A-06-35) Urgent

今回の勧告内容も立派なものです。
単に問題の発端となった「 CRJ-200 を点検せよ」に止まらず、“ Ultem 2200 ”と類似材料に関する注意喚起を全ての航空機メーカーに行なっていること、現在の CRJ-200 の運航マニュアル中の非常時の手続き( abnormal and emergency procedures )が適切かどうか直ちに評価することまで言及しているのですから....。

この勧告を受けて、FAA ならびにボンバルディア社は何らかのアクションをとることでしょう。
当然、当該機種のオペレータに宛てた通知が日本にも届く筈です。

日本のオペレータの機材に、問題の絶縁体を用いた 1K4XD contactor が搭載されているかはオペレータでないので定かでありませんが、何らかの対応整備のため、機材繰りによる欠航または機種変更があるかもしれません。
ご利用のお客様にはご理解の程を。
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財源は?

 ICAO Annex 13 に違反して民事・刑事訴訟に事故調査報告書を平気で用いている国は、突如として“すっとんきょん”な事をしますね。

この記事を見るに、当該事故で怪我をされたお客様やCAに当該機を運航していた日本航空と日航が加入していたであろう東京海上火災は、額が相応かどうかは不明ですが、治療費などを負担していたようです。

で、『悪者は誰だ』を徹底追求しなければ気が済まない本邦では、日航と東京海上火災は、『悪いのはJCABだ』として国に損害賠償を求めていたのですね。

そもそも(今回の件で)損害保険会社が、国に損害賠償を求める根拠はどこにあるのでしょう。

それも不思議ですが、国土交通省が会計年度末ぎりぎりの31日に8千万強を支払うと決めたことも、なんとも“然もありなん”といった感じが拭えません。

意味も無く道路を掘りかえして予算消化しているのと同じノリですか?

だとしたら、怪我をされたお客様、CAを馬鹿にしてますよ。

何のために事故調査を行ったのか、事故調が国土交通省の内部部局である骨抜き状態では、それに異議を唱える委員もおらんでしょうし....。

現場の血の滲むような努力とは裏腹に、航空後進国街道驀進中ですな。

さらに血圧を上げるのは引用記事の書き方。

「管制官の誤った指示の後、」余計ですよ!!!!
事実だけれど、それをあえて記したのは、それなりの考えあってのことでしょう。

それならば、有名人が来日した際の記事でも、
 「○○氏は、本日夕方、3回にわたる管制官とパイロットとの交信ミスの後、△□空港着の飛行機で来日した。」
とでも書いたら如何でしょうか。


<日航機ニアミス事故>国が賠償金支払いへ (毎日新聞) - Yahoo! ニュース
 静岡県上空で01年、管制官の誤った指示の後、日本航空機同士がニアミスして機内で計100人が重軽傷を負った事故を巡り、国交省は31日、日航と東京海上火災に計約8250万円を支払うと発表した。乗客への賠償費用を負担した両社が国に損害賠償を求めて東京地裁に調停を申し立てており、国が地裁の調停案に応じた。

(毎日新聞) - 3月31日12時50分更新



【追記:15:37】 引用記事を追加しました。

普段は鼻息が荒い某社も、冒頭ではシンプルに“日本航空機2機が異常接近(ニアミス)し”とか“日本航空の2機が異常接近(ニアミス)し”と表現したことは、真摯に受け止めましょう。

言いたいことは多々あれど、そう単純な問題では無いだけに、きょうのところはJCABトップの談話を真摯に受け止めておきましょう。


焼津上空の日航ニアミス、国が和解金8246万円 (読売新聞) - goo ニュース
 静岡県焼津市上空で2001年1月、日本航空機2機が異常接近(ニアミス)し、乗客100人が重軽傷を負った事故で、国土交通省は31日、日航などに対して計約8246万円の和解金を支払う民事調停が東京地裁で成立したと発表した。
 同事故では今月20日、日航機側に誤った指示を出したとして業務上過失傷害罪に問われた管制官2人が無罪判決を受けたが、民事調停では、国側が「当時の管制のシステムなどに不十分な点があった」と過失を認めた。

 日航と、航空保険契約を日航と結んでいる東京海上日動火災保険が04年7月、国に損害賠償を求めて民事調停を申し立て、調停委員会が30日、和解案を提示して双方が合意した。

 国交省は賠償金の内訳は公表できないとしているが、けがをした乗客に対する賠償金の補てんのほか、機体の修理費用なども含まれているという。

 この事故で同地裁は、衝突防止装置(TCAS)の指示に従わなかった日航機の機長の判断ミスも事故原因の一つと指摘。便名言い間違えで誤った指示を出した管制官については、「事故を予見できなかった」と述べ、過失を認めなかった。

 岩崎貞二・国交省航空局長の話「事故で100人が負傷されたことは事実で、これを真摯(しんし)に受け止めて賠償に応じた」

2006年 3月31日 (金) 13:28
国が日航に8千万円賠償 静岡沖のニアミス事故で (朝日新聞) - goo ニュース
 静岡県焼津市の上空で01年1月、日本航空の2機が異常接近(ニアミス)し、乗客・乗員100人がけがをした事故を巡り、国土交通省は31日、国が日航側に約8246万円を支払う調停が成立したと発表した。業務上過失傷害罪で起訴された管制官は無罪判決を受けたが、判決では管制システムの不備などが指摘されており、国交省は「一定の責任を負うべきだと判断した」という。

 この事故では羽田発那覇行きの日航907便と韓国・釜山発成田行きの日航958便がニアミスし、回避で急降下した907便の乗客らがけがをした。日航は、乗客への補償交渉が終わった04年7月、保険金を支払った東京海上日動火災保険とともに、治療費や慰謝料、機体修理費などの賠償を求めて調停を申し立てており、東京地裁の調停委員会が昨年8月に調停案を提示していた。

 「便名を取り違えて指示をした」などとして起訴された東京航空交通管制部の管制官2人に東京地裁は20日、無罪判決を言い渡した。一方、航空機の空中衝突防止装置の指示が管制官に把握できないなどの問題点も指摘していた。

 国交省の岩崎貞二・航空局長は「本件事故で100人の方々が負傷された事実を真摯(しんし)に受け止め賠償に応じました」との談話を出した。

2006年 3月31日 (金) 14:05
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