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中欧の旅 ~オーストリア、ウィーン編 Pt.3~

2008-12-21 | travelog


★11月3日 : ウィーン(Wien)
ウィーンに着いて3日目。この日はまるごとウィーンの日。朝早く起きてホステルを出ると、まだ外は少し薄暗かった。
西駅から地下鉄でまず向かったのは、フォルクス庭園。早朝のガーデン歩きは本当に気持ちいい。お天気もよくなりそうな空模様。
フォルクス庭園には、シシィの愛称で知られる絶世の美女と言われたオーストリア皇后、エリザベートの像があり、上品に座った姿と真っ白な像からも彼女の華麗さが伝わってくるようだった。
フォルクス庭園の向かいにある国会議事堂と、少し離れてその隣にある市庁舎は、2日前の夜には見えなかった彫像や建物の細かい部分までハッキリ見ることができた。
市庁舎前の広場は、毎年11月中旬からクリスマス・マーケットが盛大に開催され、ウィーンの名物にもなっているが、リースの飾り付けや屋台の設置など、丁度その準備が始まっていた。
 エリザベート像

それからいつも夜しか通っていなかった王宮に入り、カール大公やオイゲン公の騎馬像などを見ながら王宮広場を抜け、オペラ座まで行って地下鉄に乗る前に地下のトイレを見に行った。
ちょっとした名物にもなっているオペラ座地下の公衆トイレの名は、“Opera Toilet”。中からクラシック音楽が聴こえてきて、看板がなかったらトイレだとは思えないほど。女子トイレは大したことないとのことなので、有料だし入らなかったのだが、男子トイレは赤や青・オレンジ色の唇の口を開けた形の便器が歌い出すらしい。
 Opera Toilet

地下鉄でこの日の最大の目的地、シェーンブルン宮殿へと向かった。シェーンブルン(Schönbrunn)駅は工事中で封鎖されていたので、ひとつ先のヒートツィンク(Hietzing)駅で降りて、トラムひと駅で宮殿前近くに着いた。
信号を渡ると、クリーム・イエローの宮殿が目の前に広がった。大きすぎて宮殿全体を写真に入れようとすると、そこからしか撮れなかった。
 最初に目にした宮殿の姿

9時過ぎの宮殿は、まだ人もまばらだった。しかし広い・・・広すぎる。東京ドーム約36個分らしいが、想像できない。
シェーンブルン宮殿は、ハプスブルク家の歴代君主が離宮として使用していたが、中でもマリー・アントワネットの母マリア・テレジアの存在が大きく、彼女が財政の状況に応じて外壁に金を塗ろうとしたのを止め、黄金に近い黄色にしたことで、この色は “マリア・テレジアン・イエロー” と呼ばれている。
しかもこの宮殿は、今では観光客に公開されている2階部分以外は、賃貸住宅として一般に貸し出されているというのだから驚きだ。
宮殿の裏に回ると、遥か彼方に宮殿と向かい合う丘の上に、グロリエッテという建物が見えた。(タイトル写真)
私は宮殿内部の見学よりも、果てしなく広がる宮殿の庭に興味があったので、宮殿内には入らずに、庭を端から端まで隅々を歩きながら、噴水や泉や彫刻を見ながら、丘の上のグロリエッテまでたっぷり時間をかけて往復した。
フランス式庭園の両脇にある広葉樹の並木は、見事に綺麗な黄色に色づき、木漏れ陽を浴びながら歩くのはとても気持ちが良かった。
並木の中にはリスがたくさんいて、これがまた人懐っこく、近寄って行っても全然逃げず、足元でじっとこっちを見つめるリスは、本当に可愛かった。
 庭の並木とリス

庭は市民に開放されているので、ジョギングやウォーキングをする人たちもいた。こんなステキなところを毎朝散歩できるのは、羨ましい限り。
グロリエッテのテラスからは、ウィーンの街全体を見晴らすことができて、自分がいかに広い庭を遠くまで歩いて来たかを実感することができた。
 宮殿からのグロリエッテ  
 グロリエッテからの宮殿とウィーンの街

庭の散策に大満足したあとは、トラムで地下鉄の駅前まで戻り、「Café Wunderer(ワンダラー)」 に入ってひと休みした。
ショーケースの中に、ケーキは一種類しかなかったが、メニューを見るとパラチンタがあったので、マロン・クリームのパラチンタとメランジェをオーダーした。チェコではこのクレープのデザートを “パラチンキ” と言うが、ウィーンでは “パラチンタ” と言う。クリームは甘さ控えめで、生地はオムレツみたいだったので、軽食にもってこいだった。
ウィーンのカフェは煙草吸い放題なのだが、このカフェは珍しく分煙されていた。
 トラムの停留所もマリア・テレジアン・イエロー
 Café Wunderer

地下鉄で次の目的地に向かう途中、壁面をアール・ヌーヴォー風の花模様で美しく飾られた、オットー・ワーグナー作のマジョリカ・ハウスを見るために途中下車したあと、トラムに乗り換えてベルヴェデーレ宮殿に行った。
ベルヴェデーレ宮殿は庭園を挟んで上宮と下宮に分かれていて、上宮は現在美術館になってる。そしてそこには、クリムトの最高傑作 『接吻』 が展示されているが、以前日本で見たことがある私は、美術館には入らず、ここでも庭を散策。上宮前の池には、真っ青な青空が映り、シンメトリーに宮殿が映る姿がとても美しかった。
残念なことにものすごく風が強かったので、池の水が波立ち、完璧なシンメトリーは見れなかった。それでも、その青さは眩しいくらいに輝き、うっとりとするほどだった。
同じようにひとり旅をしていたポーランド人の女性とお互いの写真を撮り合って、このあとシェーンブルン宮殿に行くと言った彼女に、私が撮ってきた写真を少し見せて、おすすめスポットを教えてあげたりした。
 ベルヴェデーレ宮殿上宮

ベルヴェデーレ宮殿のあとは、再びトラムでカールスプラッツ(Karlsplatz)まで行って、カールス教会とオットー・ワーグナーが設計したカールスプラッツの旧駅舎を見に行った。
カールス教会には見事な天井画があるのだが、ウィーンの教会では珍しく有料で、観光客目当てとしか思えなかったので、中には入らなかった。
カールスプラッツの旧駅舎は、前述のマジョリカ・ハウス同様、花模様の装飾が綺麗だった。
そのまま歩いてブルク庭園に行くと、入口のすぐそばにガイドブックやいろんなところで何度も見たことのある風景、ト音記号の花壇の奥に立つモーツァルト像が見えた。
前夜通った美術史博物館と自然史博物館がすぐそばだったので、昼間の姿を見に行くと、夜はハッキリ見えなかった建物の装飾や、暗くてよく見えなかったマリア・テレジアの像もちゃんと見ることが出来た。
再びブルク庭園の前を通った時に目にした、日本人観光客がモーツァルト像の真下に雛壇の形になって団体記念写真を撮っている姿を見た時は、ちょっとぞっとした。
 ブルク庭園のモーツァルト像

王宮広場を抜けて、途中いろんな教会を見学したあと、シュテファン大聖堂に入ってじっくり見学した。主祭壇のフレスコ画や、立派なパイプオルガン、歴代のローマ教皇の胸像が付いた説教壇など、見どころたくさんで、広い聖堂内は多くの訪問者で結構混んでいた。
歴代皇帝の儀式が行なわれ、地下にはハプスブルク家の内臓を納めたカタコンベがあり、モーツァルトの結婚式も行なわれた場所に自分が居るということに、感慨深くなった。
シュテファン大聖堂には、北塔と南塔というふたつの塔があり、どちらも上ることができる。北塔の方が低いがエレベーターで行けて(有料)、南塔は階段で上る(無料)。内部見学を終えた私は、北塔を選んだ。それは、下からは見えない屋根のモザイクが見たかったからだ。
 右が修復中の南塔、左奥が北塔

エレベーターの前に並んでいたが、エレベーターはとても狭く、大人3~4人で満員。私は次の便になり、後ろに誰も並んでいなかったので、結局ひとりで乗った。とっても陽気なおじさんが運行していて、料金は中でそのおじさんに払う。ドイツ語で挨拶すると、「コンニチワ~!ニホンカラデスカ?」 と日本語で返され、鼻歌を歌いながら上まで連れて行ってくれた。別れ際にも日本語で、「タノシンデキテネ~」 と言ってドアを開けてくれた。
外に出ると、ハプスブルク家の紋章 “双頭の鷲” のモザイクが大迫力で迎えてくれ、そこだけ見ていると、大聖堂の屋根だとはとても思えないくらいカラフルでモダンだった。側面の精巧で細かな装飾は素晴らしく、間近で見ないと味わうことのできない驚きがたくさんあった。
下を見ると人は小さく、ウィーンの街を見渡すと、遠くにはプラター遊園地の観覧車も見えた。
 双頭の鷲のモザイク屋根
 精巧な装飾、道行く人は豆粒
 左端に見えるのがプラター遊園地の観覧車

大聖堂を出たあと、旧市街をいろいろ散策していた時、絵葉書を出していないことに気付いた。しかし、地図を見ても郵便局の印はないし、ここ何日間か街を歩いていても、郵便局は見かけなかった。
日本のようにあちこちにはないというのは確かだが、それでもアメリカやイギリスでは、探さなくてもどこかに必ずある。チェコもそうだったが、郵便局の数が少ないのだろうか・・・。それでも、前日ハイリゲンシュタットから戻る途中、1ヶ所だけトラムの中から見た記憶があった。ちょうどその近くに居たので、同じ路線のトラムに乗ったら、ひと駅で郵便局を見つけた。
そこは中央郵便局で、無事に母親と友達に絵葉書を出すことができた。日本以外にロンドンとカナダにも出したのだが、ヨーロッパ内は均一料金で、日本とカナダは同料金だった。
 
ウィーンの郵便局は黄色で統一、CDや文具も売られていた
 
郵便局の入口にあった可愛い標識、直訳すると “我々を入れてはならぬ”(笑)

郵便局探しで思わぬ時間のロスがあり、外に出るとすっかり暗くなってしまっていた。
夕飯にはまだ少し早かったが、バイスル(大衆食堂)でウィーン名物ウィンナー・シュニッツェルを食べようと思い、予め下調べしていたところに行ったのだが、別の店に変わってしまっていて、ひとりでは入りにくそうだったので、グラーベン(Graben)辺りまで戻り、とりあえずカフェに入った。
「Café Hawelka(ハヴェルカ)」 というカフェは、かつてウィーン幻想派の画家達とその周辺の人達の溜まり場だったところで、今でもその名残りがあり、芸術家や学生の溜まり場という雰囲気で、これまで入ったカフェとは違い、狭くて雑然としていて壁には演劇や映画のポスターが隙間なく貼られていた。
ここには、食べものはサンドウィッチくらいしかなかったので、メランジェだけ頼んだ。
 Café Hawelka

やっぱりウィンナー・シュニッツェルは食べなくちゃと思ったのだが、レストランの外に出ているメニューのシュニッツェルは大き過ぎて私にはムリ。調べてあったファースト・フード感覚で食べられる店に行くには、少し遠かった。でも偶然、シュテファン大聖堂の近くに、セルフ・サービスの 「Duran」 という店を見つけたので、迷わずそこに入った。
ウィンナー・シュニッツェルとは、豚肉の薄いカツのこと。大きさも丁度よく、注文してから揚げるので熱々で、お肉も柔らかくて美味しかった。それに、付け合せのポテトがフライドポテトのところが多く、揚げ物だらけになってしまうのだが、その店のポテトは、酸味のある味付けだったのが嬉しかった。
安くて美味しくて大満足!
 「Duran」 のウィンナー・シュニッツェル

まだ8時過ぎ。再び旧市街散策に繰り出した。ウィーンの街は、街灯が少なくてほのかにオレンジ色に照らされているだけの、かなり暗い路地が多く、大通りを外れると人通りもなく静かだが、怖いという感覚は全くなかった。逆に風情ある石畳の路地を楽しんで歩いた。
途中訪れたウィーン最古のルプレヒト教会の中は、とてもシンプルだった。そして、街中にあるのに “岸辺のマリア教会” という名前がずっと気になっていた教会まで行ってみた。
何故岸辺なのか? 言語での名はMaria am Gestadeで、直訳すると “岸の上にあるマリア” となるが、これはこの教会が昔ドナウ河の岸壁に位置していたために付けられたそうだ。そして、教会の前にはマリア階段(Marienstiege)と呼ばれる階段があるのだが、その階段が、長い年月の果てに切り立った、ドナウ河の岸壁の名残らしい。 
 岸辺のマリア教会

トラムでホステルに戻るために地下鉄のシュトゥーベントーア(Stubentor)駅に行ったのだが、そこでデザートのケーキを食べたくなり(←懲りない・笑)、「Café Prückel(プリュッケル)」 に寄り道した。
このカフェは、時々ライヴなども行なわれたりしている、明るくて活気のあるカフェ。ウィーンのカフェには必ず新聞が置かれていて、今は無線LANの設備も充実しているので、ゆっくりと長居する人が多い。ここも長居するのに快適そうな、感じの良いカフェだった。
もうすっかり私も定番化したメランジェと一緒に、ショーケースから直感でオーダーしたケーキの名前は忘れたが、期待通りでとっても美味しかった。
閉店時間の10時ギリギリまでカフェでゆっくりしたあと、歩きまくった一日を終えた。
 Café Prückel


★この日の万歩計の成果 : 歩数53.287歩、消費カロリー971.8Kcal、歩いた距離23.9km(旅行中最高値)


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