ライヴまであと一週間。ようやく聴きこなせるようになってきた、The Enemy(エナミー)の2ndアルバム 『Music For The People』。
初めて聴いた時は、なんだか少し取っつきにくかったのだが、何度か聴いている内に、だんだんしっくりしてきた。
このアルバム・タイトルは、これまで語っていた彼らのスタンスとは真逆のようだ。1st 『We'll live and die in these towns』 と比べると、サウンド面にかなりの変化があり、そこには成長している様が垣間見える。
1stにあった、非常に優れたとてもチャーミングだったメロディが、今作ではちょっとなりを潜めてしまったのが、残念なところ。
それとアルバムの構成。私は、M-1 「Elephant Song」 やM-10 「Silver Spoon」 のような、なかなか歌に入らなかったり、曲が終ってから数分のブランクが空いてからまた曲が始まるというのはあまり好きではない。
本人たちには意図するものがあるのだろうが、聴き手側にはそういうのは不要に思う場合も時にある。
「Elephant Song」 はまだ音があるので、これから始まる曲への導入と言った感じで受け入れられるが、「Silver Spoon」 の空白部分はどうしても飛ばしてしまう。
最後に流れてくる曲がなかなかいいので、ひとつの短い曲としてエンディングにしても良かったのにな・・・と思う。
1stシングルのM-2 「No Time For Tears」 の重圧な音とスケールの大きい曲構成に、最初は戸惑いを感じずにいられなかった。
M-4 「Sing When You're In Love」 で、ようやく(私の求めている)彼らが持つメロディ・ラインを感じることができた。アコースティック調で哀愁感があり、同世代の若者に向けてメッセージしている内容の歌詞にも共感。
続くM-5 「Last Goodbye」 への流れは心地良く、ストリングスを入れて情感たっぷりに歌い上げるバラードで、彼らの新しい一面が見られる。
クールなギターのストロークと弾むようなドラミングがカッコいい、M-6 「Nation Of Checkout Girls」 や、パワフルなM-7 「Be Somebody」 では、彼らが本来持っているスピード感が心地良く表れていてカッコいい。
厚みのあるグルーヴが感じられるM-8 「Don't Break The Red Tape」 や、壮大なバラードM-9 「Keep Losing」 では、確実にバンドの成長が伺える。
アレンジではピアノを前面に出し、ストリングスや女性コーラスを取り入れているところに、サウンド面の変化が感じ取れる。
巷ではThe Clash(クラッシュ)やPulp(パルプ)、The Jam(ジャム)、The Verve(ヴァーヴ)などの焼き直しなどと言われているようで、確かに彼らが影響を受けてきたであろう様々なUKバンドの音が、あちこちに顔を出している。
それはある意味仕方のないことかも知れない。でもそれが単なる真似で終らず、The Enemyとしてのバンドのサウンドとして多様化させ、向上していると感じる。
自国を思いっきり批判している歌詞は、若者たちの代弁者としてメッセージを伝えているかのようだし、ロック・バンドとしてのサウンドを確立させた、とてもスケールの大きい作品に仕上がっている。
Vo.のTom Clarke(トム・クラーク)は、元々いいメロディの曲を書く才能があるので、その素晴らしい才能を無駄にしないで、どんどん成長して行ってほしいと思う。