例えそれがフィクションであろうが、ノン・フィクションであろうが、観たかった。そして、観て良かったと思っている。
The Rolling Stonesの創始者であり、27歳という若さでこの世を去ったギタリスト、Brian Jonesのことを描いた映画、『Stoned』 (邦題:ブライアン・ジョーンズ ストーンズから消えた男)。
94年に公開された 『Back Beat』 というThe Beatles結成時のメンバーで、5人目Beatlesと言われているStuart Sutcliffeの生涯を描いた映画をプロデュースした、スティーヴン・ウーリーの初監督作品である。
自殺か他殺か事故死か???と、今もなお “謎の死” を遂げたと言われているBrianの、死の真相に迫るという内容とのこと。
監督のインタビューでは、彼自身10年以上の年月を費やしてリサーチしたが、結局肝心な証言は得られなかったと言う。
しかし、その後映画にも登場する二人の女性を見つけ出し、その間に脚本が何度も変わり、予定していた監督も降りてしまい、結局彼自身が監督を務めることとなったと話している。
Brian役は、『フーリガン』 という映画に出演していたが、主役はこれが初のレオ・グレゴリー。
頑張ってBrianを演じている。Brianのファッションや髪型を真似て、Brianに成りきろうとしている一生懸命さが伝わってくる・・・が、果たして彼はBrianを演じる前はBrianのことをどこまで知っていたのだろうか・・・。
Ray Charlesを演じたジェイミー・フォックスは、まるでRay Charlesが乗り移ったかのようだったが、どうしても無理さを感じざるを得ない場面がいくつかあった。
ただ、エンディングのアップの笑顔は、とても良かった。
これがBrian本人の笑顔!
さて、内容についてだが(ネタバレもあるのでご注意!)、エンターテインメント作品としてはなかなか面白く、十分楽しめた。
時代を遡ってStonesの歩んできた様々なことを知るために、一気にいろんな本を読みまくり、Stonesにどっぷりハマった頃の記憶が甦った。
Stonesの曲は一切使用せず、「Little Red Rooster」 や 「Stop Breaking Down」 など、Stonesのルーツであるブルーズ・ナンバーを、The Counterfeit Stones、The Beesらがプレイし、Robert Johnson、The Small Faces、Traffic、Jefferson AirplaneからKula Shaker、22-20'sと言った新旧様々なバンドがプレイしている曲を起用している。
そしてそれらは、初期Stonesの空気や雰囲気を十分伝えていて、全く違和感がなかった。
サントラ 『Premium Tribute To Stoned』
何でもアリな60年代のサイケな時代背景が、忠実に描かれているのも面白かった。
MickやKeith、Bill、Charlieも本人に似た俳優を起用しているのだが、そっくり度ではMickがいちばん似ていたかな・・・。
あくまでも中心がBrianなので、MickとKeithふたりは少しのセリフで、Bill、Charlieに至っては、全くない。
「くまのプーさん」 の作者ミルンが住んでいた屋敷を、Brianが買い取って住んでいたので、撮影も実際にその場所が使われている。
映画の殆んどのシーンはこのお屋敷
Brianという男は、計り知れないくらい孤独で淋しがり屋で、繊細な神経の持ち主だと思う。
そういうところは、とても忠実に丁寧に描かれていたのが良かった。
成功に溺れ、麻薬に浸かり、最愛の女性AnitaをKeith奪われ、モロッコでみんなから置いてけぼりにされ、そしてMickとKeithからクビを言い渡される。
その、それぞれの切ないBrianの表情、特にStonesの創始者本人がクピにされるシーン。
これにはぐっとくるものがあり、Brianのとてつもなく淋しそうな目にジーンとした。
映画のいちばん最後に最高の笑顔で言うセリフ、“Happiness is Boring!”。
このエンディングが良かった。
もちろん、MickやKeithはこの作品を認めていない。
しかしドキュメンタリーではないので、あくまでもひとつの娯楽作品として、そしてこの時代の音楽が好きな人であれば、なかなか楽しめると思う。