★11月4日 : ブダペスト(Budapest)&センテンドレ(Szentendre)
ウィーンからハンガリーのブダペストまでは、列車で約3時間で行けるので、日帰り旅行に出かけた。しかし、この日の旅が今回の滞在でいちばん苦い一日になるとは思ってもいなかった。
ブダペスト行きのきっぷは、ウィーンに着いた日に購入していた。オーストリア連邦鉄道では、座席数限定で各方面片道10ユーロという格安の “Spar Schiene” というきっぷがある。しかし、当初計画していた6:25発の列車はEN(ユーロナイト)なので、その対象ではないとのことだった。一本前のは5時台で早すぎるし、ENは35ユーロとのことなので、結局7:52発の列車にし、ブダペスト到着は10:53。計画していたのより、1時間半遅い到着となった。
ブダペスト東駅(Budapest Keleti)に降り立ってまず感じたのが、駅がとても汚くて埃っぽかったということ。造りは立派で駅舎の外観も伝統的なのだが、鳩がバタバタ飛び交い、ゴミゴミしていた。


オーストリアと比べると、ハンガリーの方が物価が安いので、帰りのきっぷはブダペストで買うつもりにしていた。ところが、どこを探してもきっぷ売場らしきところや案内板がない。あちこち歩いてやっときっぷ売場を表す、小さなピクトサインを見つけたので地下に行くと、窓口のおばさんに 「インターナショナルは上だ」 と言われた。上って、上のどこよ!って感じだ。聞いてみたが、おばさんは英語が分からず、とにかく上だとゼスチャーで示すだけ。仕方ないので再び上に行ってみたものの、端にそんなものはなく、飲食店や怪し気な露店が並んでいるだけ。とりあえずその近くに行ってみると、飲食店の奥に埋もれるように窓口がふたつだけの小さなきっぷ売場があり、クレジットカード会社のステッカーが貼ってあったので、“ここだ” と思い並んでいた。順番がきたので、乗りたい列車をプリント・アウトしていたものを見せると、ここでもまた 「インターナショナル?」 と言って反対側を指す。あっちってどこよ!って感じだ。その女性も英語が分からず、それ以上詳しく聞けなかったので、反対側に行ってみた。でも、どこをどう見ても、きっぷ売場なんぞない。汚い露店が並び、ピザ・スタンドがあるだけ。
駅員に聞いてみたら、やはりその辺りだと指す。何度聞き返しても、そっちへ行けというようなゼスチャーしか返ってこなかった。
ゴミゴミした店の間に通路があったので、そっちに行ってみると、外に出てしまった。とりあえず駅舎の周りを歩いてみると、奥にきっぷ売場があった。しかし、ここまで来る途中に、一切の案内板がなかった。
チェコでウィーン行きのきっぷを買った時は、ちゃんと国際列車のきっぷ売場はどこかとわかる案内標識があり、迷うことなどなかった。ブダペスト東駅も国際列車の発着駅なのに、なんて不親切なんだろう。
その売場はレトロな雰囲気だったが、ちゃっかり番号札があった。そして、驚いたことに、きっぷは手書きだった。でも、ウィーンでの発売額35ユーロよりうんと安く、6095HUF(ハンガリーフォリント:約3000円)だったのは有難かった。
ガイドブックを持っていたら、きっと書いてあったのかも知れないが、そんなこんなで帰りのきっぷを買うまでに40分もかかってしまった。それでなくても当初の計画より遅い列車で来たから、このあとの時間がなくなって行く一方。
次に両替。観光局のサイトでも、行ったことがある人の体験記でも駅の両替はレートが悪いので、駅前の銀行で両替するのがいいとの情報だったので、駅の近くに2件銀行を見つけ、近い方に行った。その日のレートが表示されていて、チェコの紙幣が余っていたので、両替に使うつもりだった。
列の前のおじいさんがなかなか終らず、15分ほど待たされた後に返ってきた言葉が、「今日は出来ない」。 はぁ~??だ! 何故だと聞いても、「私、英語わからない」 とカタコトの英語で言って、駅で出来ると言う。そんなこと知ってるし、出来ないのならどうしてレートを表示しているんだ!と腹が立つだけ。その内私の前を離れて、同僚と私語を始めた。あきれた私はその銀行を出て、もう1件の銀行に行き、そこではすんなりと無事両替が出来た。
これで、更にタイム・ロス。まず、ブダペストから郊外電車で、センテンドレという街に行く予定だったので、その電車の駅まで地下鉄で行かなければならなかった。しかし、今度は地下鉄の乗り場がわからない。プラハでもウィーンでも、ローマでもロンドンでも東京でも、地下鉄の駅に向かう入口のところには、必ずそのマークの付いたポールなどが立ってあるものだが、その標識がないのだ。“ブダペストはドナウの真珠です” なんていうコピーで、観光を大々的に宣伝しているわりには、観光客にとっても不親切なところだ。これはあくまでも個人的主観だが、まだまだ社会主義の名残がある国なんだなとつくづく思った。
結局駅の外でビラ配りをしていた人に聞いて、地下鉄駅の階段に行くと、階段天井の側面に地下鉄のマークがあった。こんなとこにあったって外から見えやしない。
そんなこんなでHÉV(ヘーフ)という郊外電車のBatthyány tér(バッチャーニ広場)駅まで行ったら、電車が出たばかり。
次の電車まで20分あったので、往復のきっぷを買ってから外に出てみると、ドナウ河越しに国会議事堂が見えて、遠くにはくさり橋も見えた。
そして、バッチャーニ広場の駅の入口には、東駅にはなかった地下鉄のマークがちゃんとあった。

HÉVで約40分、センテンドレに着いたのは午後2時前で、当初計画していた時間を遥かに過ぎていたが、小さな街なのでゆっくりと散策することができた。
街はもの凄く細い路地が迷路のようにたくさんあって、あちこちの路地を探検するように歩くのが楽しかった。

ハンガリーはユーゴスラビアと隣国ということもあり、中でもここセンテンドレは、かつてオスマン・トルコ支配から逃れて来たセルビア人が多く住んでいて、セルビア教会がたくさんある。唯一見学ができるセルビア正司教教会に行くと、庭にいたおじさんに、セルビア博物館と共通のチケットで見学できると案内され、離れにある博物館にチケットを買いに行った私を待っていてくれたおじさんは、ヴァイオリンくらいの大きさの重そうな鍵で、教会の扉を開けてくれた。
中には煌びやかな黄金のイコン(神や天使や聖人を象徴とした模写絵や像)の祭壇があり、これまでいろいろ見てきたカトリック教会にはない豪華さが眩しいくらいだった。


セルビア正司教教会とイコンの祭壇
じっくり見学したあと博物館に立ち寄り、再び街を散策したり、ドナウ河べりを歩いたりしておいしい空気をたっぷり吸って歩いた。
可愛い家や、オシャレな看板がたくさんあり、歩いているだけで楽しかった。
ハンガリーはパプリカの産地として有名で、可愛い袋に入ったパプリカ・パウダーがたくさん売られていて、お店の外にはシシトウのような形のパプリカが、たくさん吊り下げられていた。


中央広場のすぐ横の観光客用レストランのテラスには、日本人のツアー客が固まって食事やお茶をしていたが、もちろんそういうお店には入らない。中心部を少し離れたところにあった、「Kedves Kavezo」 というカフェで休憩。そこは、地元の人しかいなかった。
とっても感じのいい綺麗なお姉さんの手作りだというチョコレート・ケーキと、ラテ・マキアートを戴いた。ケーキは丁度いい甘さでほろ苦く、しっとりとした口当たりで美味しかった。

もうひとつ、ここセンテンドレで盛んに作られているのが、マルチパン(マジパン)と言うお菓子。
最後に、そのマルチパンで作った作品を展示している、マルチパン博物館に行ったのだが、これらが全部お菓子で出来ているなんて!と驚くばかりの作品だった。
日本のレストランの店頭にある、メニューの蝋細工も凄いと思うが、マルチパンの作品も素晴らしかった。何と言っても、その作品の全部が食べられるというのが凄い。そして、実演風景も見ることができた。


マルチパンの作品、マイケルは等身大!

2時間ほどセンテンドレで過ごし、再びHÉVでブダペストに戻った頃には、もうとっくに日が暮れてしまっていた。
とりあえず王宮の丘に行くためのバス乗り場があるMoszkva tér(モスクワ広場)に行ったが、バス乗り場がたくさんあって、どれが王宮の丘行きのバス乗り場なのか全くわからない。案内板や見取図なんていうものはなく、何番のバスかはわかっていたが、乗り場が見つからなかった。
事務所のようなところから出てきた制服を着たおじさんに聞いてみたのだが、なんせ英語が通じないので、地図を見せて紙に書いたバスの番号を示しながら、身振り手振りでやっとのことで王宮の丘に行くバスのことだということが通じ、駅の反対側だと教えてくれて、途中まで一緒に行ってくれた。しかし、反対側もまたたくさんの乗り場があって、どれだか検討も付かなかった。
既に東駅で痛感していたが、ここでも私の頭の中は、“なんなのよ!ブダペストって!” というマイナスな気持ちが大きくなっていた。
待ち合わせをしているみたいな女性がいたので、英語がわかるかと尋ねると、少しならとのことだったのでバス乗り場を聞いてみたところ、たぶんその広場の後側の上だと思うという曖昧な答えだったが、上に行ってみた。しかし、またもやそこもたくさんの乗り場・・・はぁ・・・。
バス停ではないところに停車していたバスが目的の番号のバスだったので、ホットドッグを食べていた運転手さんに聞いてやっとのことで乗り場がわかり、ようやく王宮の丘に向かうことができた。
漁夫の砦のところでバスを降り、もう時間外だったので無料で入れて、そこからドナウ河越しのペスト側の夜景を鑑賞し、王宮の方に歩いて行く途中からも、綺麗な夜景を楽しむことができた。
“ドナウの真珠” と言われる夜景は、確かに宝石のように輝いていて、特にくさり橋が綺麗だった。


王宮の丘から下のくさり橋まで丘の道を下り、くさり橋を渡ってペスト側に行った。橋の途中から王宮を見ると、黄金に輝く王宮の横に半月がくっきりと見え、真っ黒な空に映えていた。(タイトル写真)
夕方6時半くらいだったのだが、道路の車の渋滞が東京以上のもの凄い渋滞だったのにびっくり。
帰りの列車は20:10、もうあまりいろんなところに行く時間はなかったので、歩いて行ける聖イシュトヴァーン大聖堂に行ったが、教会コンサートのため、中を見学することができなかったのが残念。
もう一ヶ所、作曲家リストの音楽院があるところに行こうと思ったが、ここまでことごとくいろいろ惑わされてきたので、帰りの列車は最終列車で翌日は帰国だったし、乗り遅れては大変なので、冒険はせずに、東駅に行く地下鉄のDeák Ferenc tér(デアーク広場) 駅近くのカフェ 「ENTO」 に入って、チョコレート・ソースがたっぷりかかったパラチンタとラテ・マキアートで時間を潰した。パラチンタは、甘いソースにオレンジの酸味がマッチして、なかなか美味しかった。

ブダペストの地下鉄の駅はとても深く、長いエスカレーターを下りて行かなければならないので、その分の時間も移動時間に入れなくてはならないくらい。車両もとても古く、プラハやウィーンの地下鉄とは違い、日本の電車のように窓に沿った横長の座席だった。
驚いたことに、これだけ深いところを走っているのに、車内で携帯電話が繋がっていた。こんなところだけ進歩しているのか?とつい毒を吐いてしまう私・・・。

結局東駅で予定外のタイム・ロスをしてしまったため、行きたかった殆んどの所に行けず、センテンドレは大満足だったが、ブダペストでは王宮の丘とくさり橋と聖イシュトヴァーン大聖堂だけ。しかも夜景のみ。
しかし、トラブルはまだ終っていなかった・・・。東駅には列車の発車時刻の20分ほど前に着いたのだが、ホームの案内表示に30分遅れという表示があった。こんなことなら、まだ他の所に行けたのに・・・と思ったが、こればかりは予測できない。
最終のEN(ユーロナイト)を逃す訳には行かないので、念の為列車の横にいた駅員にきっぷを見せて、この列車でいいかと聞くと、“Next Train” と言う。えっ?!Next Trainって・・・である。案内板にはこの列車がウィーン行ENだと表示されているし、そんなはずはない。よく考えてみたら、ENはいわゆる寝台車だが、私が持っているきっぷは椅子席の車両のきっぷなので、きっとNext TrainではなくNext Carのことを言っているんだと判断し、いちばん前の車両の中にいた男性にウィーンに行くかどうかを確かめ、乗り込んだ。
しかし、遅れの30分経っても、全く動く気配はなく、アナウンスもない。だんだん心配になってきた。帰ってから荷物をパキングしなければならない。飛行機の時間は午後なので、万が一このまま運休になってもサイアクは翌朝戻れればいいのだが、やはり気が気でなかった。おまけに、iPodが突然動かなくなって、音楽で気を紛らすこともできなかった。(帰国後に復活)
それでも、車内にいた人たちは平気な様子。海外の列車が遅れるのは当たり前のことなのだが、幸いにもこれまで私はさほど大きな遅れに遭遇したことがなかった。
デッキまで行って時々外を見ても、先頭の動力車すら連結されていない。暫くすると車内の電気が消えた。夜行列車だから、電気を消すのか?これで発車か?と思ったが、やはり全く気配なし。そしてまた電気が点き、さすがに他の人も心配になってきたようで、外に行って様子を見に行ったりし出した。
やがて、作業服を着た人が数人線路沿いに歩いて行く姿が見えて、ガチャンという大きな音と振動がした。どうやら動力車が連結されたっぽい。
結局、予定時刻を1時間50分遅れてようやく発車した。当然のように車内アナウンスなどなく、検札に来た車掌も何も言わなかった。
プラハからウィーンに行った時の列車では、たった10分の遅れでも3ヶ国語でお詫びのアナウンスがあったから、チェコ鉄道と比べると、ハンガリー国鉄はまったく・・・と思うばかり。
ウィーン西駅に着いたのは、深夜1時を過ぎていた。列車を降りると、おばさんが怒り口調で話しかけてきた。ドイツ語は話せないと片言のドイツ語で言うと、申し訳なさそうな表情になったが、おばさんの口調で列車の遅れのことを言っているのだというのがわかったので、私は英語でおばさんはドイツ語でという奇妙な会話で文句を言い合った。遅れに慣れている人たちも、さすがに堪忍袋の尾が切れたようだった。
足早にホステルに戻り、急いでシャワーを浴び、パッキングが終った頃にはもう3時を過ぎていた。
殆んど観光らしい観光ができなかったブダペストだが、こういうことがあり、今は “また行けばいいし・・・” という気持ちはない。
★この日の万歩計の成果 : 歩数24.953歩、消費カロリー449.3Kcal、歩いた距離11.2km