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時事問題を中心にブログを書く日々です。
イタリアオペラのソプラノで趣味は読書(歴女のハシクレ)です。日本が大好き。

奥山篤信氏の映画批評『ロスト・キング 500 年越しの運命』/勝者が歴史をつくる

2023年09月21日 | 政治・文化
今、評判の映画批評です。
勝者によって歴史は作られる、ブログ主もそう思っていました。日本や中国にも「歴史」がどのように正確に伝わっているのか・・・と。
Richard III (1956)
上記の写真は1955年、ローレンス・オリヴィエ主演の「リチャード3世」

奥山篤信の映画批評199
イギリス映画 『ロスト・キング 500 年越しの運命』

原題 The Lost King 2022“More interesting than the historical aspects of it is a woman's struggle”――Richard Coogan
「歴史的側面よりもっと興味深いのは、ある女性の闘争だ」
――リチャード・クーガン 


 本作は、歴史の真実をめぐる実話に基づく物語である。あらすじはこうだ。 
職場でも私生活でも不運な出口の見通せない閉塞感のある生活をしていた主人公フィリッパ、
彼女は息子の付き添いでシェイクスピアの劇「リチャード3世」を鑑賞する。
フィリッパは劇を鑑賞するうち、主人公の悪名高き英国王リチャード3世が本当に世間一般に言われているような冷酷非情な王だったのか、実際は自分と同じように不当に扱われてきたのではないかとの疑問を抱き、
リチャード3世の研究にのめり込むようになる……。 

 映画の題名通り、リチャード3世はヨーク朝最後の王である。
兄のエドワード4世に忠誠を誓って仕えたが、その死後は王妃エリザベス(義姉)と対立。
王妃一派を粛清してエドワード5世(甥)を幽閉し、自ら王位に就いたが、ボズワーズの戦いで敗死した。
これにより、ヨーク朝は滅んで新たにテューダー朝が開かれた。 
リチャード3世はシェイクスピアの同名作品で醜悪な肉体を備えた怪物、狡猾・残忍・豪胆な陰謀家として描かれている。

リチャード3世はシェイクスピアによってテューダー朝の敵役として稀代の奸物に描かれ、
その人物像が後世に広く伝わり、悪名を歴史に長く残した。 
しかし、リチャード3世の悪名はテューダー朝によって着せられたものだとして、その汚名を雪ぎ名誉を回復しようとする「リカーディアン」(Ricardian)と呼ばれる歴史愛好家たちやその交流団体も存在する。 
そうした歴史愛好家の一人だったフィリッパは、歴史の真実を求めてリチャード3世の遺骨探しを始める。
そして2012年9月5日、ついにレスター市の中心地にある記録上の埋葬場と一致する場所(駐車場の地下!)から古い時代の遺骨を発見、その後の調査でリチャード3世本人のものであることが判明した。 
しかし、現地にあるレスター大学の教授たちは無名の主婦にすぎないフィリッパの功績を横取りしようと画策する。
まさにシェイクスピア悲喜劇に出てくるような人間社会の醜い諍いが演じられたわけだ。 

 最終的にフィリッパの功績は無事に認められ、リチャード3世の遺骨はレスター大聖堂に改めて埋葬された。
その墓にはヨーク家の紋章と共に、「忠誠が我を縛る」(Loyaulté me Lie)というリチャード3世の言葉が刻まれている。 
一人の平凡な主婦の正義感が500年にわたるシェイクスピアの解釈さえ覆すことになったのだ。


まさに人間に特有の真実を追求するという執念が、俗説に対する疑念を実証的に晴らした感動の実話だ! 
監督のスティーヴン・フリアーズは知る人ぞ知る英国の実力派だが、国際コンペでの受賞を期待されながら、
いつも大賞を逃している。
この不遇な監督が本作を作ったのも、歴史の汚名を着せられたリチャード3世や、
公私ともに不運だったフィリッパに共感するところが多かったからではないだろうか? 

本作で主人公のフィリッパを演じるのは、サリー・ホーキンス。
舞台から映画界に進出し、ゴールデングローブ賞、ベルリン国際映画祭での銀熊賞(主演女優賞)をはじめ
数々の賞を受賞している。
それほど美人でもなく、輝くような魅力もないが、それでいて〈何か気になる演技力〉を持つイギリスの女優だ。 
作中では、道を真っ直ぐ歩くフィリッパに寄り添うように、リチャード3世の幻が登場する。
シェイクスピアの劇では敵役として亡霊がよく登場するが、その演出をなぞらえながらも、
味方として幻を登場させる逆説手法であり、とてもイギリス人らしいトリックだ。(以上、奥山篤信氏)

『ロスト・キング 500年越しの運命』インタビュー映像

『ロスト・キング500年越しの運命』インタビュー映像、本編映像&新場⾯写真解禁! | カルチュア・パブリッシャーズ|CULTURE PUBLISHERS


・・・500年信じられてきたシェイクスピアの解釈・・・
シェイクスピアの書いた「リチャード3世」リチャード三世 (シェイクスピア) - Wikipedia
WIKIによると

『リチャード三世』(リチャードさんせい、King Richard III)は、イングランド劇作家ウィリアム・シェイクスピア作の史劇。正式なタイトルは『リチャード三世の悲劇』(The Tragedy of King Richard the Third)。初演は1591年

タイトルロールリチャード三世は狡猾、残忍、豪胆な詭弁家であり、シェイクスピア作品の中ではハムレットと並んで演じ甲斐のある役とされている。

前作にあたる『ヘンリー六世 第3部』において、父のヨーク公と兄のエドワード四世を支えたリチャード。醜悪不具の肉体を備えた怪物はヘンリー六世一派と血みどろの戦いを続ける一方で機知と皮肉に満ちた言葉を吐き、内心は王座に就く野心を持っていた。(WIKI)

 

★ ブログ主の私見であるが隋を滅ぼし、唐を建国した李世民、一方その兄の李建成について、どうも疑問が湧いてきて・・・李世民は本当に名君だったのか?特に晩年の李世民のしたことだ。
>唐の太宗(李世民)は王羲之の書を愛し、真行290紙・草書2000紙を収集した 。死去に当たって『蘭亭序』を自らの陵墓である昭陵に副葬させたと言われている。その後の戦乱を経て王羲之の真筆は全て失われたと考えられている。世界の宝であった王義之の書はすべて失われた。下記の写真は模写されたものである。
王義之「蘭亭序」は究極の行書!長年お手本にされる魅力と特徴、その歴史とは? | 書道、やっています

その他に女帝称徳天皇に仕えた道鏡である。当時、中国風になった寺院や都を日本風に直そうと尽力し、
サンスクリットも読める秀才の道鏡に相談、それが追い詰められていって、いやらしい性的な侮辱をこれでもか、と以降今までずっと受けてきた。これについては私が支持していた三宅博先生も疑問に思っておられた。

現代の政治でも男性の有名ジャーナリストに被害を受けた女性が訴えると、「枕営業」その他、聞くに堪えない暴言がどこかの必死な政治評論家やその妄信の独特の連中が卑しく囃し立てる。
これは見苦しかった。こんな連中は「好き嫌い」で騒ぐ。またプロパガンダはこれに拍車をかける。
自分で考えることをしない人たちがプロパガンダにかかると、誰も止められなくなり、彼らは正義と思って少しでも異論を述べると「死者に鞭打つのか」「日本国籍を返上してから言え」などとわめきたてるのだ。
やがて疲れて反論を述べるのをやめてしまう。これ、今も「喧騒の中でわめきたてるどうにもならない」連中で、ファッショの芽でもある。「熱狂」は恐ろしい。(ブログ主)


ブログのティールーム
【新作】カフェドクリエで秋の新作ケーキ「かぼちゃタルト」「紅茶シフォン」が発売開始! – Cafe Release ~カフェリリース~

戦前の名ソプラノ、エリザベト・シューマンが1937年に歌った録音です。
銀鈴のような美声、と絶賛されました。
フランツ・リスト作曲、ユゴー作詞
「夢に来ませ」
歌詞は「ペトラルカにラウラが現れたように、私の夢にも来てください」リストとユゴーの素敵な歌曲です。

Elisabeth SCHUMANN ~ Oh! quand je dors (1937)




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