教団「二次元愛」

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ホントは恐ろしい理想OPアンプ

2009-05-24 00:02:33 | 科学
OPアンプ(演算増幅器)という電子部品がある。
(それをある程度は理解していないと今回の記事は意味がわからんので、これの説明からはじめるのは割愛する。)

で、これの説明には理想OPアンプがよく用いられる。
ようは細かいことは考えなくてもいいように理想的に動作すると仮定したOPアンプのことである。
電子回路の教科書は理想OPアンプが大好きだ。

ところがどっこい、理想OPアンプというものが現実に存在したとしたら恐ろしいことになるのは御存知だろうか?



理想OPアンプは周波数帯域が無限大であり、また入出力で位相回転が全く発生しない。
世のなかには光の速さを超えて伝播するものは存在できないので、位相回転が全く発生しないものは作ることができない。
もし作れるとしたら、理想OPアンプのサイズは無限小でなければならない。

OPアンプは外付けの部品によりクローズドゲインを設定して使うのが一般的である。
しかし有限の大きさで帰還回路を組むと、光の速さが無限大ではないことに起因する伝播遅延が発生し、位相が回って発振する。
たとえば帰還回路を含むループが1cmだとすると少なくとも15GHzで180度回るので、その周波数以下で発振するのを食い止めることはできない。
これを食い止めるには、理想OPアンプの外付けの部品も無限小でなければならない。

理想OPアンプはプラスマイナスの電源電圧いっぱいまで出力できる特性を備えている。
しかし、プラスかマイナスの電源電圧以外の電圧を出した場合、電源電圧と出力電圧の差と出力電流の積の分だけ、理想OPアンプ内で損失が発生する。
理想OPアンプ内での損失は発熱に変わる。
理想OPアンプのサイズは無限小だが、発熱は無限小ではない。
そうすると理想OPアンプの温度は無限大に上がる。
楽観的に見積もっても、理想OPアンプを使った瞬間にマイクロブラックホールが発生する。
最悪ケースだと、無限小の空間に無限大の温度が発生するということから裸の特異点が発生する可能性があり、理想OPアンプを使った瞬間に宇宙が破壊される。

したがって理想OPアンプはアンプとして使うことはできない。
しかしプラスかマイナスかどちらかの電源電圧を2択で発生させるコンパレータとしてなら使えるかもしれない。
ところが、理想OPアンプのコンパレータは理想的に急峻なステップ応答を発生させる。
人類はフェムト秒パルスというものは発生させうるが、それよりも遥かに速い理想ステップ応答の電磁パルスが発生した場合、いったいどんな物理現象がおきるのかを理解するほどの科学力を持っていない。
へたしたら宇宙開闢が起きる可能性もある。



理想OPアンプってカンタンに考えているが、実はとてつもなく恐ろしいシロモノだったのだ。