ビター☆チョコ

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傷だらけの男たち

2007-07-13 | 洋画【か】行

かつて共に犯人を追ったヘイ(トニー・レオン)とポン(金城武)。
しかしポンは恋人が自殺したショックから立ち直れず、刑事を辞め私立探偵になったものの、酒びたりの日々を送っていた。
一方、ヘイは富豪の娘スクツァンと結婚し、幸せな日々を過ごしていた。
そんな時、スクツァンの父が殺されるという事件が起きる。
事件の真相に疑問を抱いたスクツァンは、ポンに捜査を依頼する。

犯人の乗った車が走り出す。
それを尾行する車が、まるで絶妙のパス回しをするように、入れ替わりながら香港の夜の街を走っていく。
華やかなネオンの先にあるのはうらびれたアパート。
冷静に犯人を追い詰めて逮捕したヘイが、犯人の残虐な犯行現場を目撃して、眉ひとつ動かさず、犯人を徹底的に打ちのめす。

物語は
華やかな都会とうらびれたアパート。
冷静な刑事が一瞬のうちに冷酷に変わる様を描き出して始まる。
表の顔と裏の顔。
まるで、今後の展開を暗示するような滑り出しだ。

心に深い傷を負った時
もがきながらも傷を癒そうとする男と
傷口を癒すことなく、そっと包み隠し、復讐のためだけに生きる男がいる。
まるで兄弟のように仲の良いその二人の男が
ひとつの殺人事件を境に、進む道が完全に別れてしまう。
復讐するためだけに生きてきた男は
結局、願いを叶えても幸せにはなれず
せつなさだけを残して、消えてしまうしかないのだ。

ストーリーは、とにかく最初に犯人が明かされてしまうので
なぜ、そういうことになったのか、ということを暴いていくのだけれど、
なんとなく、想像がついてしまう。
それでも最後まで引っ張られるのは、やっぱ、役者さんの力なのかもしれない。
うまく張られた伏線の中に
少しの疑問を感じながら、それでもこの映画の雰囲気はとても好きだ、と思う。

ただ。。欲を言えば
悲しみに歪んだポンの顔が
一転して幸せな笑顔になってしまうラストシーンには、
あふれそうなせつない気持ちが、逸らされてしまったような物足りなさもある。
エンディング曲も。。。しっくりこないような。。。
邦題も、わざわざつけることはなかったんじゃないかと。。。

変に盛り上げようとしなくても
せつなさはせつなさのままで終わらせてもらったほうが
この独特の空気感を抱いたまま帰って来れたのに。
それが、ちょっと残念だった。