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オクタビオ(ガエル・ガルシア・ベルナル)は兄嫁のスサナ(バネッサ・バウチェ)を愛している。スサナに暴力をふるい,幼い息子にも冷たい兄ラミロ(マルコ・べレス)から,二人を奪って逃げるために,闘犬で賞金稼ぎをしている。
トップモデルのバレリア(ゴヤ・トレド)は不倫相手のダニエル(アルバロ・ゲレロ)を妻から奪い,新居でダニエルと愛犬のリッチーと暮らし始める。
そんな幸せの真っ只中,バレリアは交通事故に遭い,ダニエルとの関係も急激に冷めていく。
エル・チーボ(エミリオ・エチュバリア)は世捨て人のようにごみを拾い,たくさんの犬と暮らしている。しかし,現実には殺し屋をしている。
もともとは大学教授で家族を持った平凡な市民だったのだが,反政府組織に入り,
服役した過去を持っている。
自分が捨ててきた娘への愛情が捨てきれず苦悩している。
映画は激しいカーアクションから始まる。
追われる若者の車の後部座席には,瀕死の黒い犬。
いったい何があって,追われているのか。
この犬はいったいどうしたのか。
冒頭から心拍数があがる!
そして車は交差点で激しい事故を起こす。
この事故で,全くシチュエーションの違う3つの物語が交差する。
事故の原因となったオクタビオ,事故に巻き込まれて足を失うバレリア,
事故現場に居合わせ,瀕死の黒い犬を助けるエル・チーボ。
3人に共通してるのは「犬」とエゴイスティックに思えるほどの激しい愛に苦しんでいることと,「父親」だ。
オクタビオは兄嫁を奪い,父親になろうとしている。
バレリアは不倫相手の家庭から父を奪った。
エル・チーボは自分が捨てた娘の父に戻りたいと思っている。
それぞれの愛情があまりにも重く激しいので観てて苦しくなってくるのだが,最後まで観てしまった。
闘犬のシーンや暴力のシーンでは思わず目をそむけてしまうのだが,そんな激しい場面の下にある「なにか」になぜか引きつけられる,そんな映画だった。
アレハンドロ・ゴンザレス・イニャリトゥ監督の作品は,いつも観た後に「哀しさ」が残る。