この12月上旬に北海道へ旅行に行く予定だったのですが、コロナ禍なのでホテルの予約をキャンセルし諦めました。その代わりもあって、北海道が舞台の小説を読みました。
(著者略歴)
1950年札幌生まれ、広告代理店、自動車メーカー勤務を経て79年に「鉄騎兵、跳んだ」でオール読物新人賞、90年「エトロフ発緊急電」で日本推理作家協会賞、山本周五郎賞、2002年「榎本武揚伝」で新田次郎文学賞、10年「廃墟に乞う」で直木賞を受賞。著書多数。
(カバー裏面の本書内容紹介)
13年前に札幌で起きた殺人事件と、同じ手口で風俗嬢が殺害された。道警の敏腕刑事だった仙道が、犯人から連絡を受けて、故郷である旧炭鉱町へ向かう表題作をはじめ北海道の各地を舞台に、任務がもとで心身を耗弱し休職した刑事が新たな光と闇を見出す連作短編警察小説。第142回直木賞受賞作。
連作短編とその舞台は、次のとおり。
オージー好みの村 ・・・・・ ニセコスキーリゾート
廃墟に乞う ・・・・・ 夕張市近郊の炭鉱町
兄の想い ・・・・・ 人口8千人のオホーツク海に面した港町
消えた娘 ・・・・・ 札幌市厚田区
博労沢の殺人 ・・・・・ 日高地方の競走馬生産地
復帰する朝 ・・・・・ 帯広市
(感 想)
主人公の目を通して、北海道各地の街や自然、そこで暮らす人々がよく描けていて、その場所へ行ったような気持ちになりました。道警を休職中の主人公は、私立探偵のような自由な行動を行っていて、物語に幅と奥行きがあります。
ハードボイルドタッチに加え、それぞれ謎も用意されているミステリーの側面も持っていて、短編ではあるものの6作共に重厚感が感じられます。さすがに実績のあるベテランの作品で、文章も無駄のない読み易いものです。
「親子の愛憎」をベースに、過去の事件が現在の事件につながる筋立てが「廃墟に乞う」と「博労沢の殺人」で、中でもこの2作が傑作だと思いました。炭鉱と競走馬生産地という、特色ある土地を舞台にしている点でも際立っています。