安曇野ジャズファンの雑記帳

信州に暮らすジャズファンが、聴いたCDやLPの感想、ジャズ喫茶、登山、旅行などについて綴っています。

ウィーンフィルニューイヤーコンサート2018と加藤雅彦著「ウィンナ・ワルツ」(NHKブックス)

2018-02-02 20:00:23 | 読書

今年(2018年)もウィーン・フィルニューイヤーコンサートをテレビで観ましたが、リッカルド・ムーティーの指揮がかっこよくて素晴らしく、イタリアに因んだ選曲がされるなど、僕は近年でもっとも楽しめました。そこでCDを購入しましたが、この機会にウィンナ・ワルツについて知識を得ようと、加藤雅彦著「ウィンナ・ワルツ」(NHKブックス)という本を読んでみました。

   

著者の加藤さんは、NHKに入局し、ベルリン自由大学留学、NHKベオグラード、ボン支局長、解説員を歴任された方です。日本エッセイストクラブ賞を受賞した「ドナウ紀行ー東欧・中欧の歴史と文化」(岩波書店)などヨーロッパ関係の著作を何作も書いています。

プロローグに、『ハプスブルク帝国は、我々にウィンナ・ワルツという不滅の遺産をのこしてくれたのである。ゲルマン、マジャール、スラヴ、ラテンと多くの周辺民族が、それぞれ個性的な音楽と舞踏をドナウの都にもちこんだ。そこにウィーン独特の音楽的風土が醸成され、その土壌からウィンナ・ワルツが見事に花開いたのである』と記し、ウィンナ・ワルツの歴史を社会情勢とともに辿った本です。

ウィンナ・ワルツの誕生から、鑑賞するための「シンフォニック・ワルツ」、さらには劇場で上演される「オペレッタ」へと進んだ過程を述べるととともに、ヨハン・シュトラウス二世をはじめとする作曲家とその作品について触れています。シュトラウス二世がワルツのタイトルに「自然現象」、「モーター」、「加速度」や「朝刊」とつけていることをまとめて記述してあり、時代に密接だったことがよくわかりました。

   

ヨハン・シュトラウス二世が、オペレッタまでものにし大成したのは、花形歌手であったイェッティ・トレフツとの結婚によるところが大きく、彼女の助言やマネージメントが寄与しているということは、この著書で初めて知りました。

   

『シュトラウスはイタリアに憧れイタリアを愛していた。』と著者は書き、イタリア旅行についても言及しています。その成果が、「ベネツィアの一夜」など一連のオペレッタで、その中から編曲されてワルツ「南国のバラ」などが残されています。2018年のニューイヤーコンサートでは、僕の大好きなこの「南国のバラ」が演奏されたので、ムーティーが指揮でよかったと改めて思いました。

【ニューイヤーコンサート2018 リッカルド・ムーティー指揮 ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団】 

   

2018年は、フィラデルフィア管、ミラノ・スカラ座を経て、2010年以来シカゴ響音楽監督をつとめるリッカルド・ムーティが、1993・1997・2000・2004年に次いで14年ぶり5回目の指揮をとりました。僕は輸入盤のCD2枚組を買いましたが、DVDなど映像の方がムーティーのスマートな指揮ぶりがより楽しめると思います。

 【曲目】

(第一部)
1.喜歌劇「ジプシー男爵」より入場行進曲(ヨハン・シュトラウス2世)
2.ワルツ「ウィーンのフレスコ画」(ヨーゼフ・シュトラウス)
3.ポルカ「嫁さがし」作品417(ヨハン・シュトラウス2世)
4.ポルカ・シュネル「浮気心」作品319(ヨハン・シュトラウス2世)
5.「マリアのワルツ」作品212(ヨハン・シュトラウス1世)
6.「ウィリアム・テル・ギャロップ」作品29b(ヨハン・シュトラウス1世)

(第二部)
7.喜歌劇「ボッカチオ」序曲(フランツ・フォン・スッペ)
8.ワルツ「ミルテの花」作品395(ヨハン・シュトラウス2世)
9.「シュテファニー・ガヴォット」作品312(アルフォンス・ツィブルカ)
10.ポルカ・シュネル「百発百中」作品326(ヨハン・シュトラウス2世)
11.ワルツ「ウィーンの森の物語」作品325(ヨハン・シュトラウス2世)
12.祝典行進曲作品452(ヨハン・シュトラウス2世)
13.ポルカ「都会と田舎」作品322(ヨハン・シュトラウス2世)
14.仮面舞踏会のカドリーユ作品272(ヨハン・シュトラウス2世)
15.ワルツ「南国のバラ」作品388(ヨハン・シュトラウス2世)
16.ポルカ・シュネル「短いことづて」作品240

[アンコール]
ポルカ・シュネル「雷鳴と稲妻」作品324(ヨハン・シュトラウス2世)
新年の挨拶
ワルツ「美しく青きドナウ」作品314(ヨハン・シュトラウス2世)
ラデツキー行進曲作品228(ヨハン・シュトラウス1世)

【録音】
2018年1月1日、ウィーン、ムジークフェラインザールでのライヴ・レコーディング