ジャズ批評誌の2017年1月号は、「21世紀の歌姫たち」という特集で、新進気鋭の女性ヴォーカリスト35名が紹介されています。オーソドックスな4ビートで歌う人ばかりでなく、ロックやカントリー系に近い人、所謂シンガー・ソングライターもいて多様です。選択が難しいですが、気になる人は、アルバムを入手するつもりです。35人の中に、キアラ・パンカルディが入っていたので、今夜は彼女の歌を。
CHIARA PANCALDI (キアラ・パンカルディ)
I WALK A LITTLE FASTER (challenge 2013年録音)
キアラ・パンカルディ(vo)のこのアルバムは、ジャズ批評誌のジャズオーディオ・ディスク大賞2015のジャズヴォーカル部門の金賞に選ばれたので、お持ちの方も多いのではないでしょうか。僕も、1曲目を試しに聴いたら声の質が聴きやすかったので購入しましたが、オランダのchallenge records(クラシックのカタログも多いレーベルです。)から発売されていて、ワールドワイドなので驚きました。
パンカルディは、イタリア出身で、シーラ・ジョーダンやミシェル・ヘンドリックス、ロバータ・ガンバリーニなどに教えを受けています。このアルバム制作のきっかけは、2013年1月にリンカーンセンターのディジーズ・クラブでサイラス・チェスナット(p)と共演したところ、録音を一緒にしようと提案されたことからです。したがって、伴奏は、サイラス・チェスナット(p)、ジョン・ウェバー(b)、ジョー・ファンズワース(ds)が受け持っています。
曲目はスタンダードです。「Wouldn't it Be Lovely」、「Show Me」、「Wild is The Wind」、「Crazy He Calls Me」、「I Walk A Little Faster」、「I Cried For You」、「Don't Be On The outside」、「Get Out Of Town」、「A Flower is A Lovesomething」の全9曲。編曲は、「Wild is The Wind」がジェレミー・ペルト、「A Flower is A Lovesomething」がサイラス・チェスナットで、それ以外の7曲はパンカルディ自身が行っています。また、選曲や歌の雰囲気づくりは、特にシャーリー・ホーンの影響を受けたようです。
パンカルディ(vo)は、透明感のある清浄な声質をしていて聴きやすいアルバムです。また、テンポも中庸なものが多く、奇を衒ったフェイクもないので、概ね心地よく聴けます。選曲が魅力的で、大スタンダードばかりでなく、ビリー・ストレイホーンの「A Flower is A Lovesomething」などを取り上げているところもよい点です。そういった特徴がよく出ている「Wouldn't it Be Lovely」や「Crazy He Calls Me」、「I Walk A little Faster」あたりは、思わず一緒にハミングしたくなりました。
【キアラ・パンカルディ紹介ページ】
【「Wouldn't it Be Lovely」を聴き比べてみました】
ジョアンナ・パスカルの「through my eyes」の1曲目が同曲で、パンカルディのものも1曲目で、どちらも最初に収録してあるので、興味がわき、聴き比べをしてみました。パスカルの方は、テンポが遅く、ピアノの伴奏を含め、かなりブルーなムードです。同じ曲なのに、歌手によってかなり変わるので、面白いですね。
【ジャズ批評2017年1月号】