jazz and freedom and avenger

勝手気ままな戯事日記 暇つぶしに・・・・

かって風雲児の一人だった ・・・・・DESTINATION OUT / JACKIE McLEAN

2021-08-22 | Aggressive Voyage of Jackie McLean

 

10年ほど前、TSUTAYAの創業者、増田氏がTV番組「カンブリア宮殿」にゲストとして出演され、その時、増田氏はインパクトのあるコメントをさりげなく言われた。

要約すると「一からのオリジナルでなくても、あるものとあるものを組み合わせることによっても、オリジナルと言える価値あるものができる」と。うぅ~ん、さすが、ベンチャー界の「風雲児」と知られる方の一言って、重みというか説得力がありますね。

60年前、マクリーンの‘Aggressive Voyage’は同じように価値ある道のりだった。”ONE STEP BEYONDに次ぐ本作は、bとdsは異なるもののモンカー、ハッチャーソンが入った同じクィンテットでカヴァのマクリーンから想像できるように、ハード・ボイルド度をより深めている。前作同様、片面2曲ずつ、計4曲、マクリーン、モンカー、ハッチャーソンのソロがたっぷり聴ける。

一曲目、モンカーのオリジナル・バラード'Love And Hate’、この一発!で殺られてしまう。バラードと言っても、通常のバラードとは趣を全く異にしている。
朝もやの中、まるで遠くに聴こえる念仏のようなテーマの後、目の前に修験者、マクリ-ンがパッと現れ、深く静かに吹き始める。所々、ラプソディックなフレーズを織り交ぜながら、真正面から迫る腹の据わったソロに心が揺さぶられる。

確かに、マクリーンは変わった。


ある本のなかで、マクリ-ンはかってこう述懐している。

「プレスティッジ時代は、自分なりにありのままを出していたのに、いつも、パーカーと比較され悩んだこともあった。ハード・バップ~モードに至る自然の流れは自分にとってピッタリ合ったものと感じたが、何か欠けていて、パーフェクトではなく、そこにサムシング・エルスを加えなければ自分の音楽は完成しないと思った。BN時代初期の作品に於いても、音楽的不満は解消されず、そんな頃、ファイブ・スポットで聴いたオーネツト・コールマンに体中、電流が流れるようなショックを受け、これこそ、自分が求めていたサムシング・エルスの答になるのではないかと思え、試行錯誤の中で初めて満足の出来る作品が”LET FREEDOM RING”だった。これを更に発展させるには、レギュラーコンボを持ちたいと考えた」と。

そして、63年になってレギュラー・クィンテットを結成、4月30日に吹き込んだのが”ONE STEP BEYOND”。ハード・バップ、モードとフリー・ジャズを融合させた新境地こそ、マクリーンが追い続けたオリジナリティ溢れるジャズだったのだ。
 
祈りとも念仏とも聴こえるこの'Love And Hate’の厳粛さは、アグレッシブ・マクリーンの極みの象徴と言っていいだろう。

3/4拍子から4/4拍子と変化するスリリングな‘ESOTERIC’、爽快なスピード感と火傷しそうな熱いソロが続く‘KAHLIL THE PROPHET、どことなくほんわかムード漂うブルース曲‘RIFF RAFF’、どれをとっても密度の濃い演奏が続く。つまり、モンカー、ハッチャーソンを始め、メンバー全員のベクトルが正に一つ!
本作も前作同様、マクリーン自身がライナー・ノーツを書いており、、こんな一節がある。
‘Everything changes with time, and music is no different. Today the compositions are getting more and more involved with form, rhythm changes and breaks.
更に、
‘Today we live in an age of speed and variety,We live in an age of men seeking to explore worlds beyond.

 

(1963. 9. 20)

60年前、マクリーンは、風雲児の一人だった。ジャズ・マスコミが盛上げ喧伝するハード・バップ・ジャッキーだけがマクリーンではない。

”Bluespirits”(2012.3.2)



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