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日々の出来事から国際情勢まで一刀両断、鋭く斬っていきます。コメントは承認制です。但し、返事は致しませんのでご了承下さい。

松葉杖物語 子供の逃げ場を奪う親

2005-06-18 09:08:08 | Weblog
 一昨日、松葉杖と別れを告げ、一日中歩き回り、おまけに運動が足らないからと近くの公園で小雨降る中体を動かしたら、ちょいと“はしゃぎすぎ”だったようで、昨日朝は起きると骨折箇所が脹れて痛みがあった。仕方なく昨日一日はまた「松葉杖生活」に元通り。
 てなわけで、仕事場まではギターケースに松葉杖を入れ、自転車で行った。そこからはTBSのある赤坂まで松葉杖でお出掛け。TBSの中をコツコツと歩く姿に、顔見知りから「年も考えずやんちゃしたんじゃないの?」など“心優しい”言葉をかけられる。
 この日は、ワシントン支局から帰任した金平茂紀氏(先日お伝えしたが、昨年、イラクで人質になった高遠さん達の件に関して、パウエル国務長官《当時》から3人の活動を評価する発言を引き出して話題になった)との意見交換に出かけたのだが、思いもかけぬ人事で報道局長になってしまったので忙しかろうと、旧交を温めるのを小一時間に留めた。何せ帰任して1ヶ月だが、毎日会議が4つ5つと、気が休まる暇がないとのこと。
 金平氏には、報道の最高責任者としての立場から「災害時の取材ヘリ」について再考を促した。また、イラク情勢に関しては、金平氏も日本に蔓延する「一部のカゲキな連中が暴れている」というノー天気な見方に、「もう内戦に近いよね」と意見が一致した。日本に帰って来てワシントンで感じるものとの差の大きさに驚いているようであった。
 その後、メディア塾で講師をやってもらっている小嶋修一と話をし、今度は情報番組を総括する友人小池に会いに行く。彼とはレバノンで戦場を共に走り回った仲だ。「『ブロードキャスター』あたりでイラクに派遣しろよ」と冗談ともつかぬ誘いをかけると、「俺にそんな権限ないよ。報道が全部仕切っているしさ」と苦笑いされた。
 久し振りに訪れたTBSだが、何か印象としては、元気がない、覇気に欠けるとの印象は否めなかった。ちなみに、私はこれまで「ニュースキャスターまでもがクールビズ騒ぎに便乗するような形で健康センターで出すアロハシャツを着ている」などと筑紫哲也さんを間接的に批判する指摘をしてきたが、実はあれは沖縄の伝統的な服で以前から夏季には着ていたとのこと。ここに訂正してお詫びいたします。
 帰りの電車では、気持ちよくなり白川夜船。ぎっちらこぎっちらこと船を漕いでいる内に終点まで行ってしまった。折り返して東川口駅で降りると、大きなランドセルを背にした小学生が私の脇をすり抜けるように走っていった。都内の小学校に通う、まだ1年生か2年生の感じの小柄な子だ。大きなランドセルが重そうで痛々しい。痛々しいと言えば、その子の身体の露出しているほぼすべてがアトピーのような症状だ。そう、肌が真っ赤な上にかきむしった痕があちこちにあるのだ。かゆみに耐えかねていたのだろう、迎えに来ていた祖父と見られる初老の男性にかゆみを訴えている。男性はそっとシャツの上から掻いてやった。
 私は余程その男性に、このようないたいけなおさな児を東京の学校に通わせる愚かなことを止めるように説得したかったが、何か言い出す勇気が出てこず、そのまま仕事場に向かった。
 その夜、最近関わっている女子高校生の親に会いに出かけた。その子が最近私のところに顔を見せなくなっているからだ。1週間ぐらい前になるが、ひと晩だけとはいえ家出をしたと聞かされている。その子は昨年不登校になったが、半年位前から学校に行くようになり、改善の兆しが見えたところであった。
 母親に話を聞いて私は愕然とした。私のところに来たがる彼女を、迷惑になるからあまり行くなと言ってしまったというのだ。母親に、それこそ人の話の聞けぬ子供に諭すように、「逃げ場」が子供にとって必要だと説いてきたが、どれだけ理解されたか。彼女の顔を見ていると、不安でならない。
 帰り途は、また松葉杖をギターケースに入れてそぼ降る雨の中、自転車を漕いで家まで来たが、濡れ鼠のようになっていた。