■五角形の教室空間
以前にも出したが、以下の図のように52~54号館の建物は、正方形を4分割して十字型の通路を作り、中央に45°向きが回った階段室が造られていて、教室は正方形のひとつの角をカットしたような五角形になっている。
52号館1F 平面図 (右端は53号館、上はキャンパス中庭)
黒板はその斜辺の部分にあり、当然、座席はその方向を向くので、残りの辺とは座席は斜めの位置関係になる。部屋の形に応じて前列から横並びの座席数が異なるので、両端部の座席は非常に変則的である。52号館のような大きな教室では、両端部の座席では黒板を見るにはかなり斜めに視線を送らねばならない。また、端の方の席は壇上の教師からの死角になりやすかった。
だが、授業を受けていると、建築的には案外、合理的な教室のようにも思われた。
52号館101教室 教室後方から前方(2枚の画像を合成、Click:891*405pixel)
Photo 2001.10.11
52号館101教室 教室前方から後方(2枚の画像を合成、Click:946*405pixel)
Photo 2001.10.11
授業を受ける際は、基本的に窓を背にして後方から光が差し込むので、前方が眩しいことはない。また、学生は窓外があまり見えないので、割合集中できる(ハズ)。一方、先生は窓の方を向いて授業ができるので気持ちがよい。
全教室が角部屋になっているので、二方向に窓が大きく開く。このため風通しは比較的良い。2000年頃まで冷房は無かったが、それほど問題ではなかったような気がする。だいたい真夏は授業がない。ただ、近年の液晶プロジェクターを用いる授業では、部屋を暗くしてカーテンを閉め切ってしまう。すると換気ができなくなり、蒸し暑くなる。それもあってか、最近はエアコンが各部屋に取り付けられている。
古い建物なので、照明は間接光ではなくむき出しの蛍光灯。前方から後方にL字型に配列されているのが印象的。個別の明るさコントロールはできないが、大きな教室ではエリア別にスイッチが別れていて、OHPやプロジェクターの使用や、窓際と黒板付近の照度差の解消などへの配慮が一応されている。
■耐力壁
52号館101教室入口付近
Photo 2001.10.11
教室前方の壁面は分厚い鉄筋コンクリートになっている。とりわけ、そこに穿たれた出入口扉の周囲は盛り上がるように厚くされている。これは扉穴を開けることで、壁の耐力性能が落ちることを避けるために、穴で生じた損失分を補うべく周囲の壁を厚くして強化しているのだそうだ。
52~54号館は、教室前方の4組の壁が中心になって、建物を支えているという。
建物中央付近に十字型に入った壁が芯のような役割を果たし、そこから教室の床が花びらのように広がる構造で造られているため、四隅の柱はどちらかというと補助的な役割となっている。中央部にどっしりした壁と柱があるので、窓際には柱が少なくてもよく、教室後方には角以外に柱がない。教室前方の壁とは対照的に、後方には大きな開口部(窓)が確保されている。
教室の天井の梁を見ても、前方の壁付近では梁背(梁の厚さ・高さ)が高く、離れるにつれて梁背が低くなっている。半ば片持ち梁のようにして、床(天井)の重さを前方の壁に集めるようにしていることがわかる。
53号館 北側ファサード
Photo 2008.3.4
外部から見ても、中央の壁に近い部分の梁は高さ(梁背)が高く太いが、四隅の方では細くなっている。
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