あるBOX(改)

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思い出の名勝負「佐藤勝美vs石井幸喜」

2011年01月30日 | ボクシング
東京 後楽園ホール
1982年11月15日
【日本Jフライ級タイトルマッチ】

内野ジムで双子の清美とともにデビューした佐藤。
生まれた時は二人とも未熟児だったとの記述を記憶している・・・。

はっきり言ってパワー、センス、体格に恵まれない中堅選手だった。
しかも、伊波政春や協栄トーレスらに5連敗するなど噛ませの要素も。

だが、誠実そうな表情そのままに努力したのだろう。後天的センスと
言う物の存在を感じさせる、独特のリズムのフットワーカーへと自身を
醸成。トーレス戦のKO負けをはさんで、一度引き分けていた多田浩幸
(協栄)とのJフライ級王座決定戦、ダウンを奪って快勝。

10勝2KO10敗4分けの新王者となった。

不利を伝えられた初防衛、しかし佐藤のアウトボクシングが冴えた。
時に変則的ムーヴを織り交ぜながら、元アマスター石井を翻弄。

Jバンタム級WBC王者金喆鎬への挑戦失敗から、神田吉昭をKOして
再起、ロード満を判定に降してこの試合に挑んだ石井。

ギクシャクと前進する石井の持ち味は、この時すでに「しつこさ」だけと
なっていた。
当ればパワーもお披露目できるだろうが、如何せんクリーンヒットが少ない。
出鼻に佐藤のジャブが気持ちいいように当る。

時折右もヒットし、快調な佐藤。
完全にリズムに乗っている王者。石井はロープに詰めて連打を狙う。しかし、
的確さに欠ける。

試合は佐藤ペースのまま終了ゴング。しかし判定は何とドロー!

佐藤は胸を張ってリング中央に歩み出し、石井に挨拶。
堂々とレフェリーに手を上げてもらった。

またもチャンスを逸し消沈する石井とは対照的だった。勝率5割の佐藤から
すると、世界戦の経験もある石井との分のある引き分けは勝ちに等しく、
内容も最高の出来だったのだろう。

石井はこの後、穂積秀一のF王座に挑みKO負け。
日本王者の玉城和昌、東洋王者の楊弘沫をノンタイトルで破りながら
遂に無冠に終わった。