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映画、読書などのメモ

ドラゴン・タトゥーの女(The Girl with the Dragon Tattoo)

2019-01-17 | chinema(欧米系映画)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

原作《ミレニアム》とも、スウエーデン版《ミレニアム》とも違う、明らかに違う。
フィンチャー監督のこの作品は、《ドラゴン・タトゥーの女》であって、タイトルには《ミレニアム》はつかない。
原作の持つ《ミレニアム》の世界はほとんど描かず、ルーニー・マーラの《ドラゴン・タトゥーの女》に関心のほとんどを集中しているようでした。
監督は《犯人探しの装置》を使いながら、ダニエル・クレイグの力を借り、ルーニー・マーラの輝きを少しずつ増すように演出する。
それはそれは練りに練った編集力である。
妥協を許さない表現意欲が美しい映像を生む。

敢えて、もう一度言おう、これは、スティーグ・ラーソンが描いた《ミレニアム》の《ドラゴン・タトゥーの女》ではなく、
《デビッド・フィンチャーの女》である。
それが《可愛い、妙に女の子っぽい》

 

 

原作《ミレニアム》はやたら登場人物が多く、話があちこち飛びまくり、多彩な世界が描かれている。
が、筆者スティーグ・ラーソンの狙いはまっすぐ《女性に対するDVの告発》《非道な闇の力の告発》に向けられていた。
社会派雑誌ミレニアムに働くミカエルとDVの中生き抜いた天才ハッカーであるリスベットの二人の繋がりを軸に物語は展開するが、
フィクションなのかノンなのかよくわからない、
仕事中毒者スティーグ・ラーソンの真摯な手垢がいっぱい詰まり、
非常にリアル感を感じるアナログ世界である。
その世界を見事にビジュアル化したのが、スウェーデン版と言われる三部作の映画。
ノオミ・ラパス演じるリスベットの風貌は衝撃的でした。
そして今回の作品では、今までの物語をそっくり引き継ぎながらも、
原作の持つ《社会派》小説、前作映画の《アナログ的》という映画作りに対抗して、編集に編集を重ねた徹底したそぎ落としの《デジタル化》映像という、
《フィンチャー化》に魅力がある。
フィンチャーという男は、《アナログ的な人間の営み》にはほとんど関心がないような気がする。
必然的に人間の表情は《エイリアン化》する。

面白かった。
かなりの時間を要する映画であるが、まったく気にならなかった。
集中力が途切れない。

★ドラゴン・タトゥーの女
原題:The Girl with the Dragon Tattoo
原作:スティーグ・ラーソン
監督:デビッド・フィンチャー
撮影:ジェフ・クローネンウェス
音楽:トレント・レズナー、アティカス・ロス
キャスト:ダニエル・クレイグ、ルーニー・マーラ、クリストファー・プラマー、他
2011/アメリカ


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