Nの祝祭日

映画、読書などのメモ

宮廷画家ゴヤは見た

2018-01-24 | chinema(欧米系映画)

映画を観た。

★宮廷画家ゴヤは見た
監督:ミロス・フォアマン
キャスト:ハビエル・バルデム、ナタリー・ポートマン 、他
2006/スペイン=アメリカ

18世紀スペインの激しく揺れ動いた時代に、ゴヤは生きた。異端審問という徹底した異端排除の論理の中で、ゴヤは辛くも生き抜いた。ボクにはそのこと自体が不思議だった。堀田善衛さんの「ゴヤ」という名著があるが、若い頃、飽きるくらい何度も読み返した。

映画の中で、ゴヤの銅版画を並べて異端審問する場面が描かれているが、適当に流した感じ。ゴヤ自身も、この映画に登場するロレンソ神父のように、権力にすり寄り金の猛者として生き抜いた時代があった。宮廷画家として絶頂期の描く絵は、よく言われるような透徹した画家の眼というよりは、俗っぽいパン絵の大量生産絵画のように感じる。映画では、少し凡庸で心優しい絵師のように描かれているが、ボクにはロレンソとゴヤがダブって見えたくらいである。ひょっとしたら、「宮廷画家ゴヤは見た」の俗っぽい邦題の真の意味はそこにある?

もちろん、ゴヤが「ゴヤ」として今日あるは、ナポレオンのマドリード侵略以後、「戦争の惨禍」晩年の「黒い絵」シリーズがあってのこと。このシリーズがあってこそ、宮廷画家ゴヤの作品が別の意味で生きるのである。

映画はさすがフォアマン監督である。どこか喜劇っぽく見せながら、ゴヤのように風刺を込めたように見せながら、ドスンとした人間ドラマにしている。ハビエル・バルデムのロレンソ神父がねちっこく時代を生き抜く姿を好演。それにも増して、ナタリー・ポットマンの熱演がすごい!牢獄で一糸まとわぬ姿で尋問されている場面は美しさの極地。この人ちょっとこれから見逃せなくなった。

ゴヤの銅版画制作過程が描かれていた。
興味深いシーンだった。
ゴヤの画集を引っ張り出し見てみる。
「犬」が一番感情移入出来る絵であり、哀しくなる。


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