Nの祝祭日

映画、読書などのメモ

テロリストのパラソル

2017-12-27 | 

本を読んだ。

★テロリストのパラソル
著者:藤原伊織
出版社: 角川書店

発表された当時はかなり気になってはいたが、いつのまにか忘れた。
今回、たまたまいつもの本屋で文庫本を手に取ってしまった。
立ち読みしたあとがきの文章が気に入り即購入。
それなりのハードボイルタッチで、一気読み。

話の筋はある程度知っていたが(何で知ってるんだろうか?自分でも覚えていない)
小説を読むと、《これはいい》と唸りながら。
熱烈なファンがたくさんいるというのも頷ける。
登場人物のキャラが《凛として際立つ》。
となると、読んでいて気持ちがいい。
うじうじしたのが出てこないというか、
犯人のテロリストがどうもすっきりしない男というのがちょっと惜しいくらい。

男《これが宿命なんだよ。これがあの闘争を闘ったぼくらの世代の宿命だったんだ》
に対して、主人公島村は、
《私たちは世代で生きてきたんじゃない。個人で生きてきたんだ》

この物語は、個人で生きてきた男の孤立無縁の戦いを描いた作品である。
ちょっと格好良すぎではないかと思うが、実にすがすがしい気分。


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人生の特等席

2017-12-27 | chinema(欧米系映画)

映画を観た。

★人生の特等席
原題:Trouble with the Curve
監督:ロバート・ローレンツ
キャスト:クリント・イーストウッド、エイミー・アダムス、ジャスティン・ティンバーレイク、ジョン・グッドマン、他
2012/アメリカ

この作品のみどころはとてもシンプル。

1.頑固一徹、クリント・イーストウッドの復活。(現在82歳)
2.フェミニンなエイミー・アダムスの笑顔と豊満な谷間
3.ジャスティン・ティンバーレイクはどんな演技をするの?
4.邦題《人生の特等席》の意味するもの、原題《Trouble with the Curve》の意味するものは?
5.アンチ《マネーボール》への《野球へのラブレター》みたいなノスタルジー。

ということで。

やはり頑固ジジィ役のクリント・イーストウッドがいい、喋らなくても顔アップで映画ができる。表情で演技ができるのはいいなぁといい気分で観ていると、《うん?待てよ、これって、娘役のエイミー・アダムスが輝いてるやンか》《うーん、これはもうエイミー・アダムスのための映画だな》と、途中で気がついた。静かな親父とは対照的に、よく喋るは、はちきれん笑顔を見せるは、視力の弱った親父に代わってスカウトマンとしての凄腕ぶりを発揮するは、そしてさらに、自らキャッチャー、バッターと大活躍。すごいスーパーウーマンである。さらにさらに奥深い谷間をちらちら魅せながら、果てはちょっぴり脱いで池に飛び込むというサービスまで。男ばっかりの映画に一人フェミニンパワーの活力を与え続けたということで、《これは彼女の映画》でした。

さて、次は野球の話。これが愉しく面白い。この作品は、《親子の絆》の物語であると同時に、純に野球を愛し、《野球へのラブレター》みたいな素朴でノスタルジックな物語でもある。

《野球というのは、音を楽しむスポーツである》。心地良い音を聴きながら、選手の攻守走を楽しむ、これが私の最も好きな野球の楽しみ方である。攻の音は、素振り、球を打ち返した時などのバットの音。守の音は、ミットやグラブで球を受けた時の響き。走の音は、スパイクのグランドを駆け抜ける音。これが《野球の原音》であり、草野球や高校野球ではこの音がしっかり心地よく聞こえる。野球の原点を楽しむことができる醍醐味でもある。グラウンドで音を聴きながら、観覧席でうたた寝しながらでも野球をたのしむことができるのある。

当然のことながら、この《野球選手の表現する音》をリズムよく力強くそして大きく心地よく響かせることができる選手が、《潜在能力の高い選手》ということになる。

今は野球に限らずどのスポーツでも《データ至上主義》である。スカウティングにあっても、パソコンにデータを打ち込みながら、選手の資質の将来性を見極める。

しかし、ここに登場するスカウトマンのガス(クリント・イーストウッド)は、パソコンなどのデータ収集機器は使わず、いままで培ってきた自分の眼、自分の耳を頼りに、能力ある有望選手をスカウトしチームに送り込む。しかし悲しいかな年齢とともに頼りの視力は衰え、直感力も衰え、彼のスカウトマンとしての評価は下がる一方。だが幸いな事に聴力は残っていた。目指すお目当ての注目選手は、《ストレイトにはめっぽー強いが、カーブをしっかり捉えることが出来るかどうか》。これを確かめるために、娘の眼力を借り、自分の耳を頼りに、選手のバッティングを分析する。結果ホームランであったが、ガスは何処か鈍い音に気づく。娘の報告では、腰が浮き腕が不安定だった。ガスの下した結論は、《金属バットでは何とか力でフェンスを越すことができるが、木製バットではそうもいかない。鋭いカーブならまず打てないだろう》というもの。さすが。僕も高校野球を観ながら時々そう思う場面がある。

シンプルに野球というスポーツを見つめる。野球の音は響きが心地よいものだ。娘のミッキー(エイミー・アダムス)は、泊まったモーテルの裏庭でたまたまその心地よいミットの音を聞く。回転のいい速球はミットでパンパンと響く。そこからの彼女は凄い。キャッチャーをひきうけ、彼の速球をのキレを確認、そしてカーブのキレ具合を自分の眼で体で確認。このシーンはちょっと緊張場面でしたが、良かったですね。彼女のキャッチングスタイルはきまっていた。彼女は素晴らしい新人を見つけた。

というわけで、ガスの報告を信用せずドラフトで一位指名した選手とミッキーの連れてきたピーナッツボーイ(ピーナッツの売り子)の対決。バッターは速球も打てず、カーブにはきりきり舞い。全く無名の選手が一躍期待の星に。

野球でよくある古典的なお話である。
野球を心から愛する人は、このノスタルジーな物語が好きだ。

ところで、この撮影はアトランタ・ブレーブスのホームグランドで行われとということ。綺麗で開放的な球場でした。開幕前でしたが、撮影にはとても協力的だったとか。アメリカという国は、野球のことになると、とてもフレンドリーになる。


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