Nの祝祭日

映画、読書などのメモ

ヒアアフター

2017-12-17 | chinema(欧米系映画)

映画を観た。

★ヒアアフター
原題:HEREAFTER
監督・製作・音楽:クリント・イーストウッド
製作総指揮:スティーヴン・スピルバーグ
脚本:ピーター・モーガン
撮影:トム・スターン
キャスト:マット・デイモン、セシル・ドゥ・フランス、ブライス・ダラス・ハワード、ジョージ・マクラレン、フランキー・マクラレン、他
2010/アメリカ

まず、
いい映画なんだけど、
タイミング的に不運な作品ではある。

クリント・イーストウッドの人への慈しみ方には、十分に年を重ねた者のあっけらかんとした開放感が溢れている。大きな男の懐の深さを感じさせてくれる。今回の作品も、細々としたものを省いて、「さぁどうぞ」という感じのザックリ感のある暖かく大きな優しさを感じた。
質素だけど、この上ないもてなしのご馳走をいただいたときの幸福感に似ている。映画を見ながら、「妙な力身」がじんわり溶けて、しだいに気持ちが軽くなっていく自分に気づいた。
「ああ、、、またやられた、、、。」とさらに脱力する。アコースティックなエンディング曲が流れた時は、しばらくそのまま眠っていたいような。

感情を抑えたニュートラルな柔らかい色彩を使いながら、光と影を巧みに操り丁寧に感情をあぶり出す。こういうイーストウッドの映像が好きだ。過剰にならず、神秘的にならず、ほんとに自然な手法でリアル感を出しながら、何処か孤愁を感じさせる映像。男の美学である。


さすがにこの津波はショック。


ロンドン、パリ、サンフランシスコと三つの物語が同時進行するので、さて、《何時何処で、どんな形で出会うのか》これが面白いところだが、ロンドンに舞台を移す辺りから、ミステリアスな雰囲気に哀愁めいたものが漂う。何故「ディケンズ」なのかという疑問も湧いたが、イーストウッド監督は詳しい説明はしてくれない。《生きる者たちへ贈り物》を描きたかったのだろうか。

ラスト、霊能者ジョージとマリーとの出会いは突然世界が変わったような奇妙さを感じさせ、この映画を観た後、ずっと気になった。ジョージは近未来の現実世界と繋がることで、孤独から逃れることができた歓喜の瞬間である。もう少し状況の説明があってもいいのでは。
でもやはりイーストウッド監督はさらりと一瞬にして描いた。そして自身作曲のエンドロール。ナルシストのなせるスゴ技である。

カメラの撮り方だろうか、手の大きい人だと思う。
この手でざっくり捕まえられたら、かなわない。
飾りっ気のないスタイルだけど、懐の深さを感じさせる肖像である。


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