有田芳生の『酔醒漫録』

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『米原万里の「愛の法則」』

2007-08-17 10:44:35 | 読書

 8月16日(木)森達也さんから献本された『王様は裸だと言った子供はその後どうなったか』(集英社新書)を寝ころんで読んでいて思い出した。大学生のときに失恋して後輩の下宿で1週間ごろごろしていたことがある。そのときこうした寓話を書いたことがある。森達也恐るべし。なぜかといえば、いまでもこうした内容の創作意欲が衰えていないからだ。冷静に振り返れば、人はいつしか作られてきた既成観念にどんどん囚われていく。そこからいかに自由であることができるのか。「生きる面白さ」は案外そんなところにあるのかもしれない。外出のためマンションの玄関へ。ポストを開けるとまたまた集英社からの郵便物があった。「著者代送」とある。封を切ると『米原万里の「愛の法則」』(集英社新書)だった。「謹呈著者」の短冊が哀しくも愛おしい。昨年5月に亡くなってから、これで5冊目の献本となる。「自由の精神」だった米原さんに聞きたいことがいくつも残ったままだ。

098  渋谷で「レディ・チャタレー」の試写を見る。ロレンスの「チャタレー夫人の恋人」。その映画化だ。ロレンスが3ヴァージョンの「チャタレー夫人の恋人」を書いていたとは知らなかった。わたしたちが「猥褻裁判」で知っている作品は、第3稿なのだという。この映画は第2稿をもとにしている。映像処理のこっけいなボカシには会場から失笑が漏れたが、内容はなかなか考えさせられる。ここでもまた社会規範にがんじがらめにされた人間が、徐々に、そして急速に解放される物語があるからだ。渋谷から池袋へ。炎暑の路上を歩く目的は「昭和」を感じさせるという立ち飲み酒場に行くためだ。ところが店名も住所もはっきり覚えていない。やむなく連夜の「ふくろ」。ホッピー、野菜天麩羅盛り合わせ、ハムカツ。右隣の中年カップルの話が聞こえてきた。「オレ、東京に出てきたのが3月で、もう8月だよ。トーキョーって人格まで変わるよな……」。