有田芳生の『酔醒漫録』

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暑い夏日、素晴らしい映画に出会った

2007-08-18 13:36:20 | 映画

 8月17日(金)手帳に記録したメモを数えてみた。今年に入って見た映画は26本。六本木のアスミック・エースで27本目に「この道は母へと続く」の試写を見る。なぜメモを見たかといえば、それぞれの内容を思い出していたからだ。「ひめゆり」のようなすぐれた歴史ドキュメンタリーは別格として、これまでに見た今年の作品のなかで、わたしにとってはベストワンだ。ロシア映画であることもまたうれしい。ドストエフスキーやトルストイの小説に連なる良質な作品でありながら、最後のシーンまで観客を惹きつけてやまない。冗漫なシーンがなく、どこまでも展開する内容は、関心を持続させるのだ。アンドレ・クラフチュークは本作に寄せた文章のなかに、O・ヘンリーのこんな言葉を引用している。

 
すでにある道を進むのではない。自分の心に従うことで道を作るのだ。

099  6歳のワーニャは孤児院で育ち、数か月後にはイタリア人夫婦に引き取られることが決まった。しかし、あるきっかけで本当の母に会いたいと思うようになる。努力して文字を学び、保管された書類に記されたかつての孤児院の住所を知る。そこからの波乱に満ちたひとり旅は、ドルで子供を売る偽善的なマダムたちから逃れる日々でもあった。国家の退廃は人々の行動にも反映する。それでも「良心」を失うことのない者もいれば、ふとしたきっかけでそれを蘇らせる者もいる。キラリと光るいくつかのシーンがまぶしい。最後のシーンの処理の仕方がまたすごい。時間にして1分ぐらいだろうか。文章ではこうした終りかたはできないだろう。この映画は10月27日にBunkamuraル・シネマなどで公開される。