ジェレミー・リフキンによるとホモ・サピエンス(ヒト)はTime binding「時間に繋がれた」 唯一の動物らしい。彼は「自分自身と世界に関するわれわれの知覚はすべて、時間を想像し、説明し、利用し満たすという方法で伝達される」と述べている。
空間については言うまでもなく、全ての動物の知覚がそれにbinding(繋が)っているのは明白である。これは、その多様な感覚器の存在によって証明される。意識のないバクテリアさえも、光や化学物質の濃度を読んで適応的な走性行動を示す。
正常な意識の発現には、空間と時間を一体化する脳内での活動枠(アルゴリズム)が必要と思える。空間(物体)の認知は一瞬だけですむが、世界は因果律を持った連続体であるので、すなわち常に変化・変動する実体なので、それをまるごと感知するもとして、人の意識は適応・進化したものである。
そして、大事な事は空間(一瞬)をスムーズに運動させる(即ち時間を付与する)道具として言語(シンボル)が発明されたことだ。こう言ったシンボルを空間や時間毎に出会うたびに作っていると能率が悪いので、これらはmemory(記憶装置)の中に蓄えられている。蓄積は幼児の段階からの学習によってなされる。たとえば「桜」という言葉は3歳の幼児でも知っているが、この言語には「桜が咲く」「桜が散る」「桜を見る」「桜を切る」....などという時間を包摂する別の言語が付随する。それが実際に文法的に付くか付かないによらず、桜という言葉には時間が「付着」して学習されているのである。
メモリーの中には単語に関するものと、エピソードに関するものがある。単語を連結するアルゴリズムとエピソードの光景を連結するアルゴリズムなどの働きで意識が生ずる。それぞれのアルゴリズムの作動にはクロック (clock)が必要である(コンピュターが内蔵するクロックを想起されたい)。
このように考えると意識とは、刺激に応じて脳のメモリーから記憶情報を積極的に取り出し、それらを組み合わせて、対面する世界に意味を持たせようとするシナプス活動といえる。AIの『人工意識』を考える上で参考になる。
時間感覚は意識の流れであるとする。意識は脳内での言語の流れであるとする。チャールズ・ダーウインは『人間の由来』で人間の言語はテナガザルの”歌(ソング)”が進化したものではないかと述べている。人間の意識の基底にはリズム(音楽)があって、それに記号としての言語が乗っかっているのではないか?(正高信男の『ヒトはいかにしてヒトになったか』を参照されたい)。
ロバート・レービィン 『あなたはどれだけ待てますか』 (A geography of time) 忠平美幸訳 草思社 2002
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