サツマノミダマシ(Neoscona scylloides)とアカクモヒメバチ(Eriostethus rufus)
自宅前の道路沿いにムクゲが生えている。その葉に一匹のサツマノミダマシ(Neoscona scylloides)というクモがついているのを発見する。このクモの名は形がサツマ(ハゼの木)の実に似ていることによるが。ムクゲの実に擬態するつもりであったのかもしれない。これの腹部の上に、一匹のずんぐりしたエイリアンのような寄生虫(イモムシ)が取り付いていた。この寄生虫付きのクモを家に持ち込んで、ガラスシャーレの中でしばらく飼育した。以下はその観察記録 (1999年6月)である。
6月16日 採集。クモは活発に動いており、寄生虫も頭を動かす。
17日 クモは糸を吐いて動かず。寄生虫は深く腹部に喰らいつき、大きくなっ
ていく。数時間でクモはほとんどミイラ状態になる。糸に引っかかり
前蛹状態になっている。
18日 繭状のものを作り蛹になる(内部は見えない)。
19日 糞のようなものを出している。繭が時々振動する。
25日 午前9時30分 羽化してハチがでてくる。触角先端から腹部後端まで
1.4cm、頭部先端から腹部後端まで7mm.全体としてアメ色。足先が黒い。腹部は白黒の斑模
様。前翅の縁に黒の斑点あり。後足2本をときどきすりあわせる。
26日 糞のようなもの7個。
28日 午後6時ごろ痙攣して死亡。
この寄生ハチは同定の結果、アカクモヒメバチ(Eriostethus rufus)のオスであることが判明した。この種は、日本でのみ報告があり、1932年に内田登一さんによって最初に記載されたヒメバチの一種である。宿主は、1942年に岩田久仁雄さんによってオニグモ(Araneus sp.)の一種が報告されている。これは75年ぶりのこの種に関する観察である。京都の市街地でこのような希少なヒメバチが発見されることはめずらしい。18年も前のことではあるが、ここには、まだそれなりに自然の多様性が残されていたようだ。
参考文献
京都大学生態学研究センター, センターニュース (1999) No. 61 p2-3.
M.T., S.I. and K.K. (2002) The first record of parasitism on Neoscona scylloides (Araneae, Araneidae) by Eriostethus rufus (Hymenoptera: Ichneumonidae). Acta Arachnologica 51,5-6.
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