娘はお世話になっている知人の友人やご家族のガイド役を、たまに引き受けているが
ガイド料をいただくことは遠慮しているようだ。
「プロのガイドじゃないから未熟だし、私の出来る恩返しのつもりだから。」と言う。
また、お土産を買いたいと言われると、ハン・ハリーリの友人の店へ案内する。
そこでも友人が紹介料を渡そうとしてくれるが、「友だちだからいらない。」と受け取らない。
友情や人情が介入すると、ビジネスライクにお金を受け取れない生粋の日本人なのだ。
だが、例外があった。
ガイドをした方たちがお土産を物色中、暇なので店内を見渡すと
奥でおじいちゃんが居眠り中…。
雑多にあふれる品物の中で、小さなスノーボールを発見!
ガラス状の球体の中に液体とサンタなどが入っていて、振ると中の雪が舞うというあのスノーボールだ。
さすがエジプトなので、サンタの代わりにピラミッドだったり、アヌビス神だったり。
娘の発見したスノーボールは、らくだのピンクのスノーボールだった。
らくだの顔と、スノーボールの色がショッキングピンクで可笑しくて変なので、
すっかり気に入ってしまった娘は笑いながらスノーボールを揺らして遊んでいたようだ。
「欲しいな~。でも趣味悪いみたいで恥ずかしいから、今度他の物を買う時に一緒に買おう。」
と思ったとか。
買い物が済んで紹介料のかわりにと、大きな鏡をあげると言っている友人に
「いらない。」と断っていると、
突然!眠っていたはずのおじいちゃんが、むくりと立ち上がって
「ちがう、ちがう!お嬢ちゃんはそのスノーボールが欲しいんじゃ!」
と言い放った。
おじいちゃんのタイムリーな鶴の一声。ありがたいやら、恥ずかしいやら。
「なんで千明はこんなのが欲しいのー?こんなんでよければ、いくつでも持っていきなよ。」
らくだのピンクのスノーボールだけは本当に欲しくて、とうとう初めて頂いてしまったようだ。
うららかなエジプトでのひとコマ…。
明るい日差しの下、変な顔のらくだにキラキラと光るサハラの砂が舞う。
ピンクのスノーボールを振るたびに、娘はタヌキ寝入りおじいちゃんと、
ちょっぴり恥ずかしかった、でも温かいエジプトのワンシーンを思い出すのだろうか。