エジプトの南端アブシンベルの地へ到着。
強烈な太陽光線が、肌に突き刺さる。
痛い!!
エジプト人ガイドが、キッパリ、サッパリした顔で「ミナサマー!イマノ気温ハ54度デゴザイマス。」と言う。
舌に汗腺のないはずの猫が、舌を出してヨタヨタと歩いていく。
私たちは汗すら出ない。自分の影がいつもより濃いような気がする。
椰子の木だけは、大きく元気に風にそよいで立っている。
この地からもう少しでスーダンだ。この暑さ、当たり前なのか。
そんな過酷で辺ぴな土地に建つホテル、セティ。
レンガの堂々としたゲートをくぐって少し行くと、ナセル湖が見えてくる。
ナセル湖を横にグリーンとブーゲンビリアの咲き乱れる庭を、ボーイさんにコロコロ トランクを転がしてもらいながら行くと、
私たちのコテージに着く。
中に入ってアラビア風のインテリアに、二人でキャーキャー感激する。
コテージの外へ出てみた。宿泊客は多いはずなのに物音一つしない。
どこまでも広がるヘヴンブルーの空に、燦然と輝く太陽ラーと、ナセル湖の深い藍色が
音を吸い込んでしまったかのように静寂が広がっている。
この世が娘と私二人だけのようだ。
エジプトの空と湖の果てしない空間を独占したような、今思い出しても心躍るホテル、セティだった。