アレキサンドリアの空は、排気ガスに曇ることなく、どこまでも青い。
その空を突き刺すように、一本だけ立ち続けてきたポンペイの柱。
高さ30m以上を思わせる迫力なのは、高台で周りに何もないからだろうか。
見上げていると、その柱をつたってジャックと豆の木のように、天空の国へ行けるかのようだ。
ローマ皇帝の神殿だった頃は、この円柱が400本も立ち並んでいたという。
その壮麗さは、想像を絶するものだったろう。
一人になった柱の両側で二体のスフィンクスが、慰めるようにポンペイの柱を見守っている。
この光景を見ていたら、有名な句が頭に浮かんだ。
「夏草や つわものどもが 夢のあと」 松尾芭蕉
荒地の高台に残った栄華の残骸を見ると、やはりこの世は無常…
この世のことは、一瞬の夢なのかもしれないと思う。
エジプトの強烈な日差しの中、あまりに光が眩しく、空が青く美しいので、この無常観がよけいに胸に迫ってくる。
もし、いつか人類の最期がおとずれるのなら、こんな静かな光景だけが残るのかもしれない。