Schreib mal wieder!

自分の感じるままに...それがクレームと言われても

人生の彩り

2006-12-16 23:36:06 | 西荻

迷ったが車にした。18時半過ぎ、辺りはもう暗い。小田和正の自己ベストをかけながら笹目通りを一路南へ。登亭の最後の日。電車では明るすぎる。薄暗い車で正解だった。

花は西荻のあの花屋さんでと思っていたが閉店時間も気になり、電話番号があることを思い出して、ふと電話してみようと思った。昔はよく行った店だが、もう憶えていないだろう...だから電話では難しいかなと思うものの、8時までとのことで名前も訊こうとせずに快く受け付けてくれた。

光が丘が見えてくる。谷原はもうすぐ。ここにはよく原付で通った。池袋線をくぐり杉並区へ。立派なトンネルができてることにはあらためて驚かされる。トンネルを抜けると今川のあたり。この交差点はよくタンデムで横切ったな...。
もうすぐ四面道だというところでちょうど東京ラブストーリーがかかり、なぜか涙をこらえられなかった。後ろで寝入ってしまった子供を気にもせずに大声で歌いながら、青梅街道へハンドルを切った。八丁から左に入って中央線を越えたあたりに自分が3年間過ごした寮がある。敢えて前を通ってみる。変わらない下駄箱、薄暗い階段...その前を自分が運転する車で横切るのはちょっとした感慨があった。西荻で過ごす前の高校の3年間、自分の根っこを見るような気がして...自分は変わってないんだなと感じた。

それから自分がよく歩いた道を通って西荻へ。思いの他早く、7時半前に着いてしまった。狭い駐車場に車を止め、子供を起こして花屋へ顔を出した。やっぱりそうかという顔でご主人が迎えてくれた。8時までに取りに行きますといった僕に「ずいぶん早かったじゃない、まだ作ってないんだよ。時間つぶせる? あなたの子? 歳を感じちゃうね」「声の感じで知ってる人だってわかったんだけど、顔がぜんぜん想像できなかったんだ」と。

どうせ飲み物を買いに行かなければならない。やっぱり家にも持って帰りたいから、ついでにもう一つとお願いして一旦店を出る。酒屋でホッピー55を調達し、少し早いけど登亭に顔を出してみる。すでにコアメンバーがしっぽりと始めていた。もしかしたらこれで終わっちゃうのかなという寂しいでも、そうであってほしいという感じもした。遅い時間にもかかわらず、あいかわらず子供は大歓迎してもらえて嬉しい。

じゃぁちょっとと行って、花を取りに出る。戻るとすばらしい花束を作ってくれていた。あなたが来るんじゃ普通のものは出せないよと。それに子供にはプレゼントまで用意していてくれた。

「僕の持論は『つ』の付くときまでは徹底的に一緒に遊ぶこと。そうすればどんなに怒っても、乱暴しても離れていかないから。やっぱり男親に関心がないと離れていっちゃうよね」「また近くに来たら、花なんか買わなくても寄ってよ。おいしいコーヒー入れるから。奥様にもぜひお会いしたいなぁ」なんて話してくれた。

ただ花愛想なく花を買っていればそれだけ。きっとこんな温かい気持ちにはなれなかっただろう。「この花ってなんていうんですか」「本当にきれいなのを作ってくれますね」「母も喜んでましたよ」...別に高い花をいつも買ってたわけではない。ただこんな感謝の気持ちを伝えることをしてきただけなのに、10年振りに顔を出しても憶えていてくれて温かく迎えてもらえる。人によってはだから何? って思うんだろうけど、これこそは僕にとって人生の彩り、かけがえのない宝物だと思う。

幸いうちのガキはどこへ行ってもにこやかで感じがいい。花屋を後にして、子供にその気持ちを伝え、感謝した。

登亭に戻ってみると、もう大変なことになっていた。道にあふれんばかりの人。その人だかりに向かって親父さんが話しているところだった。昔は怖い親父だったが、今はこの閉店をわかっているのだろうかというくらい、いいおじいさんになってしまい、しんみりした様子もない。なぜか異様な活気に包まれていた。
ファンがみんなで思い出を語り合うというより、お皿やらサンプルなどの争奪じゃんけんなどで盛り上がり、我が家は2票あるなどと言っていたら、ほんとに子供がお皿をゲットしてしまった。

...もともとはmixiで登亭コミュニティーを見つけてそこから全てが再び始まった。「再び行列を」というユーモアたっぷりでいて粋な企画から始まって、今日のお別れ会に至るまで何の見返りもなく仕切ってくれたカメーさんに心から感謝したい。それがもう少し続いてくれれば...そんな気もするけれど、最後の1年ちょっとをまた一緒に、僕にとってのセカンドシーズンを過ごせたことを心から感謝したい。

終わるということは、決して悲しいことではない。それは誰にとってもまた新しいページの始まりだから...

中締めの後も何人かがカウンターを囲んで名残を惜しんだ。それでもどこかで切り上げなければならない。お母さんに最後のお礼を言って、カメーさんとマキさんと西荻駅前で別れた。
登亭の終わりは寂しい。でもまた、ここから新しい関係が始まりそうな気がした。

10時半前に西荻を後にして、11時には家に着いた。途中笹目橋では思い切りアクセルを踏んでみた。やっぱり車で正解だった。