9-1と点差が開いているとはいえ、向こう側のブルペンで投げているのが見えるので、もしかしたらと思っていたら、7回裏、場内アナウンスが交代を告げた。
「ピッチャー橋本にかわりまして、小野寺。 ピッチャーは小野寺 背番号29」
3塁側から大歓声が上がった。
ついに来たか...と思うとともに、3球三振とまでいわなくても、これでもかというくらい抑えて西武ドームを後にしてほしいと願った。
耳を澄ますと小野寺の登場曲が...。3塁側はさらに盛り上がる。普段相手チームの交代はLビジョンには映し出されないが、普段の位置と反対側に小野寺、選手が映る位置にヤクルトのロゴと入れ替えて映している。この心憎い演出、3塁側からの声援に涙が出た。だからこそ、小野寺、絶対に抑えてくれ、そう祈った。
7球の練習を終えて、プレーボール。
本人も書いているけど、明らかに力んでいてストライクが入らない。坂田をフォアボールで出すと、続く佐藤にエラーと言ってもいいくらいのライト前ヒットを打たれ、緩慢な送球のうちに1・3塁になってしまった。続く銀二朗は容赦なくセンター前に打ち返してタイムリー。その後は秋山をレフトフライ、片岡をセカンドゴロ、最後は栗山を三振で仕留めてこのイニングを終えた。
間違ってそのまま3塁側に戻ってくればと思ったが、ゆっくりと1塁側のダグアウトに消えていった。その後姿には、悔しさ、寂しさ、そしてこれからの決意とか、いろんなものが入り交じった、そんな思いが感じられるような気がした。
8回は久古がマウンドに上がり、そのまま小野寺が姿を見せることはなかった。
「応援団が『がんばれ、がんばれ、小野寺~!』って1回やってたよ」、と耳ざとく聴いていた子供が帰りに話してくれた。
なんだかすごく胸が熱くなる、素敵な場面の一部になれたことが嬉しかった。
もう一度セ・リーグで活躍してくれたら...セで応援したい選手が一人できた。