満州国演義第5巻として書き下ろされた850枚(468頁)の大作。
昭和11年の二・二六事件から盧溝橋事件、第二次上海事変を経て、同12年12月の南京陥落までの約2年間、満州、北支及び、上海・南京において発生した武力衝突を縦糸に、敷島四兄弟の生き様を横糸に編まれた日中戦争前期の壮大な物語です。
長男の敷島太郎は、奉天領事館参事官から満州国国務院外交部政務司長へと転出し無為の日を送り、次男の次郎は、特務機関から金で雇われ、抗日分子の掃討を繰り返し、憲兵大尉の(三男)三郎は、満州全土を諜報活動に駆け回ります。天津の漢語新聞の記者となった(四男)四郎は、満州や北支の紛争地で、事実に即した記事を草稿しますが、軍部に不利な記述は、すべて上部によって削除され悩みます。
この間、重大事件が頻発し、その説明に多くを割かざるを得ず、加えて四兄弟の役割が相対的に小さくなった結果、物語それ自体が気薄になり、面白さが半減しています。
ただ、「ゴルゴ13」の作者でもある著者の劇画的描写は、南京大虐殺の取り扱いにおいて威力を発揮し、この歴史的大事件を活写して余りあります。