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田舎の倉庫

Plala Broach から移植しました。

感動作~小池真理子著「沈黙のひと」

2013年05月21日 | 読書三昧

正真正銘の「プロ作家」が実父の老後を詳細に綴った感動の物語です。「オール読物」11年4月~12年6月(11年10月を除く)連載、第47回吉川英治文学賞受賞作。



物語~自分と母を放り出して他の女性に走っただけでなく、二人の娘までもうけた父は、リタイヤ後パーキンソン病を発症。言葉も読み書きも失った・・・

こうして、「沈黙のひと」となった父だが、85歳でこの世を去った後、彼の古いワープロに残された文章の数々は、逆境の中にあっても、決して衰えることのなかった短歌創作への意欲と「オス」としての執念を伝えるものであった。

小池氏の実父、小池清泰氏をモデルとした壮絶な「老いとの闘い」は、明日はわが身でもあり、身につまされるものがあった。ご一読をお勧めします。


岸 恵子著「わりなき恋」

2013年05月19日 | 読書三昧

著名な女優作家が書いた老いらくの恋の物語。
作家自身がモデルかと思わせる国際的ドキュメンタリー作家と大企業トップとの間の人生模様。

物語~若くして夫を飛行機事故で失い、今は、孤独と自由に生きる国際的ドキュメンタリー作家の笙子(しょうこ)は、パリ行きのファーストクラスで、隣り合わせた壮年のビジネスマンと「プラハの春」の思い出話を交わすのだが・・・

言わば、著名な女優が、自身をモデルに老いらくの恋を色濃く語ってみせたようなのだが、主人公の立ち位置をファーストクラスや有名レストランやブテイックなどで彩るのはいかにも「素人作家」らしくいただけない。

真に筆力のある作家なら、そんなお膳立てをせずとも登場人物の人となりを表現できるはず。そういう世界もあるにはあるのだということを知るだけの読み物であった。


阿郷舜著「桶狭間天空の砦」

2013年05月16日 | 読書三昧

デビュー2作目という阿郷氏の「桶狭間」を読んだ。



大軍を擁して攻め込んだ今川義元は、なぜ「桶狭間」で破れ落命したのか?

氏独自の解釈による筋立てだが、領民・百姓の加勢と天候の急変が"うつけ"と評判の信長に、奇跡の勝利をもたらしたと言う。

作者は、手持ちの材料を書き過ぎるきらいがあって、読者にはかなり負担だが、終わってみれば、当時の戦争のすさまじさを納得させるに十分な筆力を備えていると思った。今後の活躍に期待したい。


感動ドキュメント~門田隆将著「死の淵を見た男」

2013年05月09日 | 読書三昧

福島第一原発のメルトダウンと闘った男たちの物語。



後に「フクシマの英雄」として、スペイン皇太子賞を授賞した原発作業員、消防士、警察官や自衛隊員など、「自身の生命を危険にさらしながら、被害を最小限に抑えるため献身的に働いた人たち」の感動のドキュメントです。

とりわけ、事故現場で死を覚悟しながら陣頭指揮をとった吉田昌郎所長の人となりは、読者に深い感動を与えずにはおきません。
ご一読をお勧めします。


諸田玲子著「心がわり~狸穴あいあい坂」

2013年05月07日 | 読書三昧

この人の本をはじめて読みました。
小説「すばる」11年9月~12年9月隔月連載の連作短編集。

物語~かっての想い人への恋情を胸に収め、夫・万之助との平穏で暖かな日々を過ごす結寿(ゆず)。そんな折、居候の老女のもとへ親戚を名乗る大男が転がり込んで来て大騒動となる・・・

主人公の結寿は、江戸の御先手組火盗改方与力(刑事警察)の一人娘で(与力の下で犯罪捜査に当たる)町方同心の道三郎とは相思相愛の仲だったのですが、身分の違いで結婚できず、同じ与力の万之助のもとへ嫁ぎました。

作中の人間関係を理解するには、当時の身分制度や与力(警察)についての基礎知識が必要ですが、人物がよく描かれているので、これらを踏まえるととても面白く読むことができます。ご一読をお勧めします。


葉室麟著「おもかげ橋」

2013年05月04日 | 読書三昧

直木賞作家葉室氏の近作。
日刊ゲンダイ12年2月14日~8月31日連載。

物語~剣は一流だが、道場には閑古鳥が鳴く草波弥市。武士の身分を捨て、商家に婿入りした小池喜平治。二人は彼らを裏切り、国許から追放した勘定奉行の娘で初恋の女、萩乃と江戸で再会するのだが・・・

売れっ子作家が時間に追われて書き飛ばしたという印象が強い仕上がりになっています。同氏の他の著作に比べ、感動がうすいのもそのせいかも知れません。

いつも受賞作(蜩の記)のような出来を望むのは無理にしても、書いたものは後々残ることを考えれば、受賞作家にふさわしい出来は維持して欲しいと思いました。


山本一力著「ジョン・マン(望郷編)」

2013年05月01日 | 読書三昧

直木賞作家が書き進むジョン・マンこと、「中浜万次郎」の生涯。

鳥島で米国の捕鯨船に救助されハワイに着いた万次郎は、(漁師5人の日本までの)船賃400ドルを稼ぐため、再び捕鯨船に乗り、他の乗組員に可愛がられながら甲板員や見張りとして働きます。

そして、グァムや日本近海及び、南氷洋で漁をしながらニューヨークに近いベドフォード港に帰港します。ホノルルを出てから2年半が経過していました。

万次郎は、船長から船員としての能力を高く評価され、彼の家に引き取られます。そして、学校に通い米国の教育を受けるようになるのですが、今後の展開がますます楽しみです。


武田邦彦著「新聞・テレビは「データ」でウソをつく」

2013年04月29日 | 読書三昧

現中部大学総合工学研究所教授・工学博士のアンチテーゼ集。

●東海地震を想定した地震予知は間違っていた~何故、東日本大震災を予測できなかったのか?

●地球温暖化は北に偏っている。このため、北海道の食料基地としての役割が増大する。また、夏場はあまり上がらず、冬場は暖かくなって好都合。

●90年に交通事故死の基準を「24H以内」と変更して、見かけ上「死者」は減ったが、死傷者全体でみると、現在120万人と過去最悪だ。

●国土面積からして日本は人口過剰だ。従い、少子高齢化結構。これで日本は正常化する。

等々、マスコミで醸成された「常識」を覆す。科学者の書らしく、いずれもデータが提示されていて説得力がある。


朝日新聞特別報道部著「プロメテウスの罠4」

2013年04月25日 | 読書三昧

原発事故という国家的悲劇を忘れてはならない。
同紙連載の原発告発ドキュメント第4巻だが、改めて原発事故の恐ろしさ非情さに気付かされる。



身障者の苦難の逃避行、災害時の個人情報保護の壁、岩手県遠野市の畜産農家を襲った放射能、「忍者」自衛隊の活躍等々、当時のマスコミ報道では知りえなかった原発事故の真相に迫るドキュメントは、原発事故の恐ろしさを再認識させます。ご一読をお勧めします。


力作~山本一力著「五二屋傳蔵」

2013年04月23日 | 読書三昧

人情話を語らせたら此の人の右に出るものは居ないと思う反面、いつも書き飛ばしてばかりいるのが気になっていました。

物語~黒船来航に揺れる江戸の質屋・伊勢屋を訪れるのは、本当に金に困った客だけでなく、盗品を持ち込んだり、襲撃を目論む盗賊だったりするのだが、店主の傳蔵は鋭い洞察力と深い人情でひとつひとつ対処していく・・・

この本は、同氏が本腰を入れて書き上げたようで、直木賞作家にふさわしい物語に仕上がっています。ご一読をお勧めします。


葉室麟著「この君なくば」

2013年04月17日 | 読書三昧

「この君なくば、一日もあらじが口癖でしたから」・・・
此君(しくん)堂の名は、「晋書」王徽之伝にある竹を愛でた言葉の~何ぞ一日も此の君無かるべけんや~からとったもので「此君」とは竹の異称だ、と著者は書名の由来を明かします。

物語~江戸時代末期、勤皇佐幕で揺れる九州・日向の伍代藩。
軽格の家に生まれた主人公「楠瀬譲」は、恩師・檜垣鉄斎の私塾「此君堂」の娘・栞と惹かれあう仲であったが・・・

葉室氏の近作ですが、彼の筆はますます冴えわたり、物語に引き込まれます。ご一読をお勧めします。


感動作~吉田修一著「路(ルウ)」

2013年04月13日 | 読書三昧

芥川賞作家、吉田氏の近作「路」を読みました。
台湾新幹線をめぐる日台の人々のあたたかな交流と絆を描いた感動作です。

物語~1999年、台湾に新幹線が導入されることになり、入社4年目の商社員「春香」は、現地勤務を命ぜられ赴任する。彼女は学生時代、台湾を旅したとき知り合った青年がいたが、連絡先を紛失したためそれ以後、会えずじまいになっていた・・・

台湾流の仕事のやり方に翻弄される商社員、車輛工場の建設をグアバ畑の中から眺めていた台湾人学生、台湾に生まれ育ち終戦時引き上げて来た老人、日本留学後建築士として日本で働く台湾青年等々、それぞれが国境や時間を交錯させつつ絆を紡いで行く様は感動的です。

せっかく芥川賞を受賞しながら、次作に恵まれず忘れ去られていく作家が多い中、吉田氏は、「悪人」の大ヒットをはじめ、読者を引き付けて離さない筆力を磨きつつ、着々と大作家としての地歩を築いているようです。ご一読をお勧めします。


本屋大賞

2013年04月12日 | 読書三昧

今年の本屋大賞が決まりました。
百田尚樹氏の「海賊とよはれた男」が受賞した由。

この本屋大賞は、読者に歓迎される本を世に出そうと、書店に勤務する人たちが投票で候補作を10編選び、その中から決戦投票を経て大賞を決めるという方法で、2004年から行われて来ました。

今回で10回目を迎えたわけですが、この間受賞した作品はいずれも映画やドラマにもなって大ヒットしています。

ちなみに、09年の受賞作、湊かなえ氏の「告白」は324万部を、04年の受賞作、小川洋子氏の「博士の愛した数式」は244万部と、それぞれ大ベストセラーとなっています。

この結果、出版不況に悩む版元各社は、この賞の受賞作を出したいと血眼になり、本が形にならない段階から、ゲラ刷りを関係する書店員に配って意見を聞くなどの取り組みを強めているといいます。中には、書店員を接待するなどしているといいますから驚きです。

いずれにせよ、小生ら読者としては、世相や人間の生き様をリアルに再現した良い本を出して楽しませて欲しいと思っています。上図は、10日の新聞(朝日)記事から借用しました。


山本一力著「ジョン・マン」

2013年04月11日 | 読書三昧

直木賞作家の山本氏が、同郷の先達「中浜万次郎」の奇跡の生涯を描く大河小説の第2巻「太洋編」を読みました。小説現代連載。現在、第3巻「望郷編」まで出ています。

物語~1841年(天保12年)正月、万次郎など5人の漁師は、近海のアジ・サバ漁で嵐にあい7日間漂流した後鳥島に漂着する。そして過酷な5ヶ月近い無人島での生活を経て米国の捕鯨船に救助されるのだが・・・

わずか14歳。寺小屋にも満足に通えなかった貧しい少年が、捕鯨船での過酷な労働に耐えて世界を巡った後、米国で日本人として初めて高等教育を受け帰国。日本の政治・文化の発展に少なからず影響を与えたというのだからその運命の過酷さ、意外さに驚きます。

この太平洋編は、万次郎たちが鳥島で救助され、捕鯨船の操業を手伝いながらハワイに入港するまでのエピソードを綴っています。万次郎は、抜群の視力で鯨を発見するなど、次第に人気者になって行きます。


山本兼一著「まりしてん誾千代姫」

2013年04月07日 | 読書三昧

山本氏の近作(430頁)を読み終え心地よい読後感に浸りました。
戦国時代の筑前(福岡県)立花城にあって、7歳にして城と4万石の領地を相続して城督となった誾(ぎん)千代姫の物語。



物語~城督・誾千代姫(13歳)が婿に迎えたのは、宝満城主・高橋紹運の嫡男・千熊丸。後の立花宗茂である。祝言をあげ落ち着く間もなく、筑前・筑後は戦乱に明け暮れる。城も島津軍に囲まれるが、誾千代姫は鉄砲隊を率いて応戦する・・・

NHKの大河ドラマ「八重の桜」の主人公「八重」の姿が二重写しになるような物語の展開にハラハラドキドキしながら読み進みました。

如何にも(女子は)行きづらい。
そんな戦国の世だからこそ、魔利支天のように、強く美しく生きたいと願った誾千代姫に共感するもの大でした。ご一読をお勧めします。

蛇足~誾千代姫の菩提寺は柳川市の「良清寺」ですが、この寺の住職一族に、タレントの松田聖子(蒲池法子)さんがおられると知り、姫の生まれかわりではないかと思ったりしました。