徒然なるまままに

展覧会の感想や旅先のことを書いてます。

國立故宮博物院

2006-11-22 | 陶磁器
國立故宮博物院 

何年ぶりかに台北にある國立故宮博物院を訪れる機会を得ました。2回目です。

國立故宮博物院は、現在は改装中で半分のスペースしか空いていません。しかし2006年5月18日の東側リニューアルオープンしたため非常に高級ホテルのロビーのように広々として綺麗です。入口には「八千年歴史長河」と垂れ幕がかかっていて、中国三千年ではなく、八千年の歴史です。

今回展示されていたのは、ほぼ常設展のみ。特に明から清時代の陶磁器などの工芸品の傑作が展示がハイライトです。清代の陶磁器は、たまたま静嘉堂文庫美術館でインペリアル・ポースレン・オブ・清朝で少し理解が深まっていたので、世界最高の傑作を見るとその美しさと技巧に感動も新たです。また明代の陶磁器も美しい。また中国漆器も最近興味をもって東京国立博物館で鑑賞していたのですが、木質が違うのでしょうが、レベルの違い、特に清の漆器は精密な細工のされた漆器は、驚くべきものでした。書画は,一室だけ特別展示されていたのですが、時間がなくて鑑賞できず残念。

なお、12・25に全館リニューアルオープンの予定で、記念特別展「大観」(12/25-3/25)も同時に開催される予定。 大観─北宋書画特別展、大観─北宋汝窯特別展(北宋時代の汝窯が宮廷の御用窯だったのは、1186年から1106年の20年間という短い期間で、世界で70点も現存しないという汝窯の作品のうち、故宮に収蔵されている21点全てが展示。イギリスからも3点の汝窯が展示されるそうだ。)がテーマです。

さて、國立故宮博物院のWEB http://www.npm.gov.tw/はすぐれものです。
「現在の展示内容」は、展示のガイドとして。「コレクション」は、個々の作品のガイドとして。
(旅々台北www.tabitabi-taipei.com/youyou/200605/index.html というサイトも日本語公式ガイドとしてある。)

「音声ガイド」150元はお勧め。リストをもらえるのでメモがとれます。夕方15時過ぎに訪れたら、これだけはお勧めだという赤いチェックをしたリストをもらえたので、さらに精選して優品を短い時間の中で鑑賞できました。ただ、「現在の展示内容」、「コレクション」「音声ガイド」は、微妙に内容が異なり、今回、「音声ガイド」の作品を中心に見たのですが、「現在の展示内容」の写真にある作品や、「コレクション」に掲載されている作品を見落としていました。どうしても急いで回ると見落としてが出てきてしまいます。また、写真撮影禁止(6月1日から禁止になったそうだ)なのも、ガイドブックがないだけに不便ですね。

団体旅行やガイドの人に案内してもらうと、それはそれで、最近この作品はオークションでいくらだったというような博物院では表立っていえないような情報が得られるわけですが、やはりじっくり見るには一人で回るしかありません。まあ、日本語の団体向けの説明は、そこらかしこで立ち聞きはできますね。

今回は、時間がなくてタクシーで乗り付けて、タクシーで戻りました。片道250元弱でした。帰りは白タクに色々声をかけられるのですが、まあその手には乗らないほうが無難でしょう。また、ホテルの場所によるのか乗車拒否もされるので、いろいろなタクシーに声をかけるしかありません。




さて、3階は、時間がなくてじっくりは見ていないが、
古典文明-銅器時代 (1600-221B.C.E.) では2点の、文字を刻んだ銅器が特に自慢の品だそうだ。

西周晩期 毛公鼎

銘文は、「周宣王が即位した際、政治を充実させようと思い、おじの毛公を招いて国家内外の大小の政務にあたらせたところ、自らの利益にこだわることなく勤勉に務めたので、その結果として厚く褒賞した。毛公はそれを子々孫々に伝えるためにこの鼎を鋳造した。」とのこと。

春秋中期 子犯和鐘1-12

八点の鐘により構成されている。それぞれに銘が刻されており、合計132文字、晋文公(重耳)が流浪の末、19年後に晋に帰り政権を掌握、晋楚城濮之戦などの重要な史実が記されている。製作者は子犯、即ち晋文公(重耳)のおじの狐偃である。


新装飾の時代-明代前期の官営工房 (1350-1521)
まずは、青花がずらっとならびます。「明代における青花磁器の製作は、洪武時期の過渡期を経て、永楽と宣徳の両時期に最盛期を迎えた後、成化に至り細緻化が進み、青花磁器は景徳鎮官窯の中心となった。」とのこと。「明永楽 青花穿蓮龍紋天球瓶」などが中央のガラスケースにいれて特別に展示されています。

今回、すごいとおもったのはこの「顏色釉及釉上彩」のコーナー。「洪武紅釉、永楽甜白、釉裡紅、緑釉、紫釉、黄釉、孔雀緑釉など、各種の色釉は、明代の官窯に新しい風潮を生じさせ、後世の五彩や豆彩誕生の基礎となる。 釉下彩である青花はしだいに釉上単彩、双彩、三彩などと結び付いて多様な展開を見せ、五彩や豆彩など史上例を見ない各種の新しい技法が完成した。」とのこと。

まずは、紅釉の名品。モダンなデザインの磁器で現代の北欧のデザインを見ているようです。
  • 明宣 祭紅霽青刻花蓮瓣滷壺一對

  • 明宣 宝石紅僧帽壺

    そして、豆彩(鬥彩)豆彩とは高温で青花で絵の輪郭をつけて焼いたあとに、低温で絵の内部にカラフルに彩色して焼く技法。釉下の青花と釉上彩の色合いは鮮明な対比をなします。清朝の豆彩は静嘉堂文庫美術館で拝見したが、今回のものは、明成化時代の豆彩。
  • 明成化 鬥彩雞缸杯

  • 明成化 鬥彩葡萄杯
  • 明成化 鬥彩花鳥高足杯 

    官民競技的時代-明晩期(1522-1644)
    世宗嘉靖(1522-1566), 穆宗隆慶(1567-1572),神宗万暦(1572-1620),熹宗天啓(1621-1627)思宗崇禎(1628-1643)年間。色彩美と吉祥紋様の流行, 文人が先導した古典趣味と収蔵の風潮,商業繁栄下の独立工匠と民間窯業のテーマで展示されている。

    吉祥紋様の流行のところには、お馴染みの龍とか鳳凰デザインの陶磁器がならぶ。
  • 明 嘉靖 嬌黄緑彩鳳凰方洗


    盛世の工芸-清代 康熙・雍正・乾隆 (1662-1795)
    そして、康煕(1662-1722),雍正(1723-1735),乾隆(1736-1795)時代の工芸。陶磁器だけでも、唖然とする精緻さ。

    漆器:「乾隆時代の剔紅は、明代の伝統的な技法を継承し、細やかな地紋とすっきり明瞭な主紋、重ねられた漆の層の色彩変化を下地に、主題の図案が強調されています。このような重なる彫刻の層をはっきりとさせた技法はしだいに連続した紋様や立体感の強調、始まりと終わりがぼかされた自然な線などの新しい風格へと変化していきました。」ということ。明代の漆器を東京国立博物館でみていて、故宮博物院の明の漆器は、彫りが深いと思いましたが、さらに、この清の漆器は、さらに精緻を極めています。

    陶磁器として、
  • 清乾隆 粉紅錦地番蓮碗;
    全体に紙の如く薄く、錦のように華やかな紋様、色彩は淡く上品で、線はくっきりと描かれており、乾隆官窯の代表作とのこと。ピンクの底釉が華やか。

  • 清雍正 画琺瑯蟠龍瓶;黄色は皇室を象徴し、牡丹は富貴を表しているのでしょう。

  • 清雍正 琺瑯彩花鳥図碗;有田など比べると琺瑯だけあって精緻な文様です。


  • 清乾隆 黄釉粉彩八卦如意転心套瓶; 何と回転します。


    走向現代-清晩期(1796-1911)
    このコーナーには、前回訪問のときに記憶のある有名な作品「肉形石 」「翠玉白菜」などの玉器や「象牙鏤彫提食盒」などどうやって制作したのといいたくなるような象牙による工芸品が並びます。「光緒 緑地魚龍図花式瓶」「嘉慶 紅釉描金蕃蓮罐」など色彩鮮やかな陶磁器も。

    画像はSRCリンクです。
    (11月7日)
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