徒然なるまままに

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成熟社会の実相 鷲田清一さんに聞く

2006-11-02 | 美術
成熟社会の実相 鷲田清一さんに聞く

日経新聞2006年11月2日夕刊の紙面から

成熟社会は皮肉にも皆が子供でいられる社会だった
社会が成熟するプロセスは人間が無能力になっていった時代だと思うんです。命の世話(お産、死、食事など)を自分や家族、地域で担ってきた。こうした行為の大半を民間や公共サービスに委託している。豊かで便利で安心できる社会を追求した結果で、これを成熟社会というわけだが、いつの間にか自分たちの命を自ら世話する能力を失った。全てをシステムに任せれば何とかなる。成熟社会は皮肉にも人が成熟しないでも生きていける社会だった。だから会社の社長や政治家など社会的地位の高い人まで学芸会みたいな茶番を演じてしまう。

世の中に答えがひとつしかないことなどめったにない
あるのは3つ。①正解が複数ある。②不確定要素があって答えがすぐにはみえない。③いくらと問うても人間には答えられない。
今の社会はすぐに答えを求める。でも分からないものにはわからないままにきちんと向かい合うことが大切だ。
私たちは自由を自分の思い通りできることと勘違いした。そして、じっくり考え判断する力までなくしてしまった。

待つことが大切。でも本当に待つこととは待つものを放棄すること。



〈鷲田清一〉1949年京都生まれ。京都大学大学院文学研究科博士課程修了。大阪大学理事・副学長。専攻は臨床哲学。「「聴く」ことの力」で桑原武夫学芸賞、「モードの迷宮」でサントリー学芸賞受賞。

「聴く」ことの力―臨床哲学試論

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まなざしの記憶―だれかの傍らで

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大胆な演出と構図、そして独特のシュールな感性で世界のファンを魅了してきた、わが国アート写真界の至宝・植田正治。その膨大な遺作の中から、「やわらかな」哲学エッセイスト・鷲田清一が新たな視点で珠玉の75点を厳選し、「哲学のこころ」を濃やかに投影したモノクロームのオムニバス。



「「聴く」ことの力」の表紙に見え覚えありませんか?植田正治氏の作品ですね。「ルソーの見た夢、ルソーに見る夢」@世田谷美術館(記録はこちら)でみた植田 正治氏について臨床哲学の鷲田清一氏が論じているとは!読まなくては!
コメント (1)
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