徒然なるまままに

展覧会の感想や旅先のことを書いてます。

光悦と樂道入 二つの樂茶碗 ふたりの交友 @樂美術館

2006-10-21 | 陶磁器
光悦と樂道入 二つの樂茶碗 ふたりの交友
2006年9月12日から11月26日
樂美術館

「そうだ。京都へ行こう」とJR東海の口車に乗せられて、いや新幹線に乗って、日帰りで行ってしまいました。夏に樂美術館に寄って(記録はこちら)、この秋は、三井記念美術館と樂美術館の共同企画があると知ったときには、また来たいなぐらいに思っていた。三井記念美術館で(記録はこちら)長次郎の茶碗の侘び錆とノンコウ(道入)の光を楽しむ作風の違いを楽しんだときは、まだ誘惑を抑えていました。しかし、9月27日の日経新聞で編集委員の竹田博志氏が、東西の楽焼の展覧会を「これは一足早い眼の正月の到来だ」「長次郎と光悦という楽茶碗の両雄の至芸を心ゆくまで堪能できるのは誠に痛快なことだ」と記事を読んでしまうと、やはり両展覧会とも拝見したくなるのを抑えきれなくなってきた。
本当ならば、11月にゆっくりと京都を訪れればいいのだが、3日からの連休は宿ももう取れない、23日から飛び石連休は紅葉で京都はごった返しているので、紅葉以外のものを拝見するには落ち着かないということで、時間の取れた、明日は時代祭りという間隙を縫っていってきました。
到着したのは10時過ぎ。まばらな人出でゆっくりと鑑賞できます。

当代が、強く意識する光悦の陶芸に的を絞った企画で長年あたためてきたテーマだという。展示は、光悦と道入(ノンコウ)を混ぜて展示している。図録には展示作品がすべては掲載されていないが、メモを取ってこなかったので、図録に収録されている名品のみを列挙して、少しだけご紹介。大満足でした。

なお図録には、当代樂吉左衛門光悦茶碗の身体性、道入茶碗の視覚性というエッセイが掲載されているが、読み応えがあります。これもお勧め。

本阿弥光悦
  • 黒樂茶碗 雨雲 重要文化財 三井家伝来 三井記念美術館蔵; 口端の切れ味、釉薬を掛け外し妙の面白さは、昨年に三井記念美術館ではピンときていなかったが(記録はこちら)、1年たつと納得。米国の家具は、新品でも虫食い等をつけ古さを誇張するが、そんなことがふと頭をよぎった。
  • 赤樂茶碗 乙御前 江岑書付 益田鈍翁 平瀬家 森川家伝来; 益田鈍翁が外箱に「たまらぬものなり」と書付し嘆賞したとう。その丸みをおびた姿と口部は片方は端反り、片方は内に抱え込むひしゃげている。造形の妙。図録では横からの写真しかなくその様がよくわからないのが残念。
  • 毘沙門堂 山科毘沙門堂 高野是間 鴻池伝来 ;11/8から展示。残念。
  • 飴釉樂茶碗 紙屋 加賀紙屋家 酒屋宗左衛門; 飴釉のべたべたした面白みとともに、造形は、正面から見て右手の腰の部分が丸みをおびているのに、左手はまっすぐに下りている。当代の樂吉左衛門氏が光悦茶碗を仮名文字にあてはめてみたときに、紙屋は「ぬ」に例えているのもさもありなん。
  • 黒樂茶碗 七里 伊勢屋 益田克徳 益田鈍翁 五島家 五島美術館蔵
  • 黒樂茶碗 東 三井次郎左衛門家伝来 北村美術館蔵
  • 黒樂茶碗 村雲 樂美術館蔵; 現在、東京で展示中。
  • 赤楽筒茶碗 弁財天 三谷宗鎮書付 後藤三右衛門
  • 飴釉樂茶碗 園城 松永耳庵旧蔵
  • 赤樂茶碗 大ふく
  • 赤楽筒茶碗
  • 黒樂茶碗 水翁 頴川美術館蔵
  • 黒樂茶碗 朝霧
  • 飴釉樂茶碗 立峯 樂美術館 
  • 飴釉樂茶碗

    樂道入(ノンコウ)
  • 黒樂茶碗 稲妻 ノンコウ七種之内 不審菴伝来蔵 表千家蔵;表千家では家元襲名の際にだけ用いられる特別な茶碗。見込みにひかる赤釉が稲妻として光る。ぞくぞくとした。
  • 黒樂茶碗 青山 加賀七種之内 青山将監 亀山伊右衛門伝来
  • 黒樂茶碗 獅子 ノンコウ七種之内
  • 黒樂茶碗 桔梗 加賀七種之内 木倉家長右衛門 木谷藤右衛門伝来;見込みの景色が六弁の 桔梗の花のようにみえることから名づけられたという。
  • 黒樂茶碗 木下 樂美術館蔵
  • 黒樂茶碗 残雪 了々斎直書 鹿嶋屋広岡家 伝来 樂美術館蔵
  • 黒樂茶碗 寿老人 覚々斎書付 鴻池善衛門 馬越恭平伝来
  • 黒樂茶碗 若緑 啐啄斎書付 鴻池家 戸田露吟伝来
  • 赤樂茶碗 禿 如心斎書付 樂美術館蔵
  • 赤樂筒茶碗 山人 一燈書付 樂家旧蔵 樂美術館蔵
  • 黒樂茶碗 笹の絵 樂美術館蔵
  • 黒樂茶碗 霜夜
  • 黒樂茶碗 羽衣 覚々斎書付 小曽根家旧蔵
  • 黒樂平茶碗 燕児 樂美術館蔵
  • 黒樂茶碗 撫牛 樂美術館蔵

    光悦書状
    光悦が樂家を徳川家に引き合わせたのではと推測している書状。利休なきあと、樂家も大変だったようで。辻惟雄氏の「ギョッとする江戸の絵画」でも、狩野山楽は、豊臣家の遺臣だと幕府に狙われ、松花堂昭乗の徳川氏へのとりなしでようやく許されたが、外様扱いだったという話が書かれていました。
  • 曾我又左衛門宛 「茶碗屋吉左父子~」 樂美術館蔵
  • ちゃわんや吉左宛 「ちやわん四つ分ほど~」 樂美術館蔵
  • ちゃわんや吉左宛 「此ちやわんのくすり~」 樂美術館蔵
  • 前田家家臣某 宛 「小袖拝領の文~」 樂美術館蔵

  • 光悦 蓮下絵百人一首和歌断簡 後鳥羽院
    伸びやかな光悦の書が素晴らしい。元は巻子本。前半25首、後半30首は関東大震災で消失。
    GOOGLEするとMIHOMUSUEMやニューヨーク・バーク・コレクション展や出光美術館で昨年秋に開催された「京の雅び・都のひとびと」でも別の箇所が展示されていたようです。
     
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