岩木山を考える会 事務局日誌 

事務局長三浦章男の事務局日誌やイベントの案内、意見・記録の投稿

NHK ・クローズアップ現代「オモダカ」 に思う

2009-09-08 05:05:22 | Weblog
 (今日の写真は、オモダカ科オモダカ属の抽水性の多年草「オモダカ(面高)」だ。
「オモダカ」は別名「ハナグワイ」といい、昔から武家の家紋や武具の飾りの題材として使われていた。私が小さい頃には、田んぼの脇の水路や畦の縁などで簡単に見ることの出来た水草である。ところが、私がよく歩く平川までの農道脇や用水堰などでは殆どお目にかかれないので「不思議だなあ」と思っていたものである。
 だが、僅かに1回だけ、弘前、藤崎間のバイパス脇の「田んぼから離れた」側溝で数株を見ただけであった。
 このように、小中学生時代との、この「激変」に驚きと同時に「寂しさ」を持っていた時に、岩木山の「ミズバショウ沼」で、この仲間である「オモダカ」にそっくりな「アギナシ」に出会ったのである。そっくりだと言っても、それは「花」であって、葉は矢じり形のように先が尖っていない。
 「オモダカ」の成長期間は5~11月だ。塊茎と種子で繁殖する。全国的に分布するが、本来は寒地性で、関東以北の「寒地」に多い。5月中旬から6月上旬にかけて塊茎から発生して、細長い線形の葉を3~4枚出す。6~8葉になるとへら状の葉が出てくる。 成長したもの葉は長い葉柄があり、その先に「矢じり形」で3片からなる大きな葉をつける。
 夏に葉の間から高さ20から80cmの茎を出して、上部の節に3個ずつ、早朝から午前中だけ咲く白い花をつける。
 それがパチンコ玉よりも少し小さいくらいの「球形の果実」になる。秋に地下茎の先に50~150個の塊茎を作るのである。
「オモダカ」と同じ仲間の、「水田」で見られる「草」には「ウリカワ」や「アギナシ」がある。「オモダカ」の変種の「クワイ」は中国原産で料理に使われる栽培植物であり、「オモダカ」には園芸品種として花弁が帯紅色の八重咲きや大輪咲きのものがあるそうだ。また、「水槽の水草」として輸入された「オモダカ」と同属の「ナガバオモダカ」も「人によって野生化」させられて、「帰化植物」化している。

漢字では「面高」と書くが、その「花名の由来」は「葉が人の顔に似ていること」によると言われている。)

             ◇◇ NHK ・クローズアップ現代「オモダカ」に思う◇◇

 昨晩、「NHK ・クローズアップ現代」を見て、私が長年抱いてきた「オモダカ」激減の謎が解けたのである。番組では「オモダカ」のことを「スーパー雑草」として扱っていた。
 私には、はなはだ違和感のある扱い方だと思われたのだ。ここでの、「スーパー」とは「人間、つまり水田農家」にとっては「非常に」とか「極めて」厄介な草という意味である。「蔓延る」と収穫量の4割以上が減るという試算をする学者もいるそうだ。
 「スーパー雑草」として問題視されていることは「激減」したという憂いではなかった。まったくの正反対、「オモダカ」は本来の生息地を越えて、日本全国で「激増」しているのだった。
 昔から「家紋」の図案されたり、夏から秋に白い3枚の花弁を次々に開き群れて咲いている眺めはいいものだが、「オモダカ」は、水稲にとっては「大形の草」になることから「養分の収奪力が大きい」ので極めて強い「害草」であったことは事実のようだ。
 ただし、「寒冷地に生息」する性質から、寒冷な地方や局地的に見ると「冷たい水」が流れ込む「水口」などに生息していて、その数は多くはなかったのだ。
 だから、「数が少ないうち」は余り問題にされなかったのだが、農業の機械化を進めるための区画整理による「単位水田面積の拡大」、それに関わる「水管理の不都合や失敗」などから、「オモダカ」は増えていったのである。そして、水田では「難防除」雑草として防除が問題となってきたのである。
 もちろん、「オモダカ」だけではなく、他の「草」を防除するために、農家は抜き取り作業ではない「除草剤」を多用するようになった。ちょうどその頃から、極端に「オモダカ」は減少して、なかなか見られない「草」になったのである。
 だが、植物は強いものだ。「減反政策」で「オモダカ」は復活し、特に減反をしている休耕田などに生息するようになったのである。
 それだけではなかった。この間に「オモダカ」は「除草剤(SU剤)」の効かない草(SU抵抗性雑草)になっていたのである。
 「オモダカ」は多くの「果実(種子)」と「塊茎(イモ)」を作る。種子から芽を出した「オモダカ」は、除草剤で、これまでは比較的容易に防除出来ていたのである。だが、「オモダカ」は「除草剤抵抗性」草本として「進化」していたのであった。
 しかし、「水稲農家」にとって問題なのは、「除草剤抵抗性」草本となっていたことだけではない。
 つまり、厄介なのは「塊茎」から生育する「オモダカ」だ。塊茎から発生した「オモダカ」は、初め線形の葉を10枚程度出し、次いで葉の先端がヘラのような形の葉を1~2枚出し、その後に、特徴的な矢尻型の葉を出すが、成長は極めて早い。
 「オモダカ」の塊茎は大きさに違いはあるが、大きな塊茎は地中、30cmにも達する。また、秋に作られる「塊茎」は「休眠」状態に入り、芽を出すには「休眠打破」が必要なのだ。「休眠打破」には高温が必要で、遅い個体は夏になって「休眠から覚める」ものもある。このため発生期間は長く、「代掻き」から100日以上経った段階でも発芽しているのである。この傾向は、近年の冷夏とあいまって顕著になっている。
 このようなことが「防除を難しくしている」理由なのである。逆に言うと「オモダカ」が復活して拡大しているということにもなるのだ。
 「オモダカの塊茎」の寿命はほとんどが1年であるそうだ。よって、「物理的、生物的」には、「1年間徹底的に防除をして、新しい塊茎を作らせない」ことが、「翌年のオモダカ」の発生は防げることになる。ただそれが出来るかどうかである。
 
 「SU抵抗性雑草」の見分け方もあるという。「除草剤」を散布したのに、「数種類の雑草が異常なくらいの高い密度で残っている」場合とか「ヒエなど他の雑草は全く残ってない」という場合は、「SU抵抗性雑草」が出現したと考えてもいいのだそうだ。
他にも「長年SU剤に頼った防除してきた」とか「SU剤による防除をしているのに、ここ数年、急激にある種の雑草だけが増えてきた」という場合もあるそうだ。

 「除草剤」を使わずに、草を「進化的な抗体」にさせないためには、昔からの「物理的」な除草に徹することではないのだろうか。これが「生物の多様性」を遵守する中での「農業」ということだろう。自然は「やわ」ではない。人が仕掛けた罠には必ず「しっぺ返し」で抗うものだ。

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