岩木山を考える会 事務局日誌 

事務局長三浦章男の事務局日誌やイベントの案内、意見・記録の投稿

岩木山、春の花は終わり、夏の花の季節になった

2009-06-17 05:15:27 | Weblog
 (今日の写真はアブラナ科ヤマガラシ属の多年草「ミヤマガラシ」だ。これは標高1550m辺りから上部に生えているのだが、山頂部に一番多く、しかも、山頂で一番早く咲き出す花なのである。
 赤倉登山道に限って言えば、赤倉御殿から大鳴沢源頭、そして山頂までの間では、まだ花をつけてはいなかった。
 大鳴沢源頭とその上部にはまだ「幅50m長さ150m」ほどの雪渓があり、表面が硬く、登山靴でのキックステップをしなければ登ることが出来ない。長靴などでは無理である。また初心者も単独では登るべきではない。
 14日に同行したNさんは初心者もいいとこで「岩木山に初めて登る」という人であった。実は昨年の11月に「大鳴沢源頭」の少し上までは登ったのであるが、吹雪と積雪に阻まれて、山頂に行くことを断念していた。14日は「季節」を替えての「リベンジ」登山であり、「ミチノクコザクラ」に会うための登山でもあった。当然「ミチノクコザクラ」も初めて見ることになった。
 そのような訳で、同行案内者としては、「山頂まで行く」ことを既定の条件としていた。だから、この急な「雪渓」を安全に登下行する手立てを「熟慮」し「準備」していた。それは、「カラビナ付き簡易安全ベルト」と「ザイル」、「ピッケル」であり、私とNさんがアンザイレンしながら、登り降りることであった。
 そのような登り方だから、確かに時間はかかった。もちろん降りるのにも時間はかかった。だが、「6月14日」である。間もなく夏至だ。日照時間が1年の内でもっとも長くなる日に近づいている。いくら時間がかかっても「日が暮れて暗くなる」ことはないと判断して行動をしたのである。
  ようやく、雪渓を登り切って「夏道」に入ったが、雪解けが終わったばかりで、花の影は全くない。標高1600m近くになって、やっと、昨日紹介した「コヨウラクツツジ」の森が出てきた。山頂下部にも、この時季だとミチノクコザクラやミヤマキンバイが咲いているのだが今季はまだである。
 それもそのはずである。山頂本体の東面下部にはまだ、長さが15mほどで幅が10mほどの雪渓が残っていたのである。これが解けない限り、ミチノクコザクラも花のつけようがない。
 しかし、その上部ではアイヌタチツボスミレが咲いていたし、山頂では今を盛りと「ミヤマガラシ」が吹き渡る風に茎葉を震わせ、渡る霧に黄花を映して群立していたのだ。今、「群立」という言葉を使ったが、今年の「ミヤマガラシ」にこの言葉は当てはまらない。何故か例年に比べると数が少ない。ある図鑑では「数の上では全国で岩木山が一番多い」と紹介されているほど、山頂に咲くミヤマガラシは多いのである。今年はまさに、ミヤマガラシの疎林と言っていいほど「疎ら」なのであった。

 私たちの前をいくつかのグループが登っていたが、そのいずれも、この雪渓を登らないで、つまり「山頂」に行かないで引き返していた。そのグループの一つは「赤倉講」の信者十人近くであった。彼らは「大鳴沢源頭の雪渓」の手前の「正観音(注)」にお参りをして引き返したし、もう一つのグループは女性を一人交えた4人であった。
 このグループは正観音のところで、昼食をとっていた。山頂に行くのかと訊いたところ「初めての人がいるので山頂には行きません」との答えが返ってきた。
 そうこうしているうちに、その中の一人から「ひょっとして三浦先生ですよね」と声をかけられた。それに応答はしたものの、その人には失礼なことだが、私はその人が誰なのか未だに思い出せないのである。
 その応答を聞いていた、その中の別の男性が「そうするとあの三浦先生ですか。その節は大変失礼なことをしました。あのXです。」というのである。この経緯は、簡単に言うと「2月11日に追子森登山をした時に一緒に行きたい」という意向を持ちながらも同行出来なかったということである。だから、私はこのXさんとは、その日が初対面となった。もちろん、Xさんも同じである。岩木山は「狭い」のである。女性はXさんの奥さんだという。
 私は石仏9番近くで「握りの部分にピンクのラバー」引きされた「軍手」を拾っていた。その「色」から女性用であろうと判断していたので、降りてきた「赤倉講」の信者たちにも、「この軍手忘れませんでしたか」と訊いた。しかし、誰もが、「ノン」であった。私はXさんの奥さんにも訊いた。
 果たして、私の予想は的中した。その「軍手」は奥さんのものだった。よかった。「軍手」は登る時よりも「降りる」時の方が重要なものとなる。これで、降りる時安心して「手がかり」を握りしめることが出来るだろう。
 その時の奥さんとXさんの言ったことに対して「ああ、そうですか。ありがとうございます」と簡単に答えたが、内心「うきうきと地に足がつかないほどに上気した喜び」に浸っていたのである。それは「先生の書かれた本を毎日バイブルのように読んで見ています」という一言だったのだ。書き手にとってこのように言われることが「至福の時とこと」でないはずはないだろう。本当に嬉しい。お会い出来たことも嬉しい。

 その日、赤倉登山道沿いで出会った花を書いておこう。
*鬼の土俵まで:ササバギンラン、チゴユリ、コケイラン、マイヅルソウ、エゾタケシマラン、ヤマツツジ、タムシバ、ムシカリ、ナナカマド、ウラジロヨウラク、カラマツソウ、ミヤマスミレなど
*山頂まで:ベニバナイチゴ、ミヤマカラマツ、ムラサキヤシオツツジ、ゴゼンタチバナ、ツバメオモト、ウコンウツギ、ミヤマキンバイ、ツマトリソウ、ミツバオウレン、ノウゴウイチゴ、ミヤマガラシ、ミチノクコザクラ、ミヤマツボスミレ、アイヌタチツボスミレ、ツリバナなど  

注:しょう‐かんのん(聖観音・正観音):六観音・七観音の一つ。変化(へんげ)観音の基本としての、一面二臂の通形の観音。宝冠中に阿弥陀の化仏をつけ、蓮華を持つ。聖観世音。聖観自在菩薩。→観世音。「広辞苑」

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